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後からここに同席してくるらしい慎吾くん。
私と盆子原さんが一緒のテーブルに着いてる所を見て、どんな顔をするだろうか。
それとも、ここにいるのが私だってもうお父さんの口から聞いたのかな。
…怖い。
いつやって来るのかわからない分、ソワソワしちゃってメニュー表よりも窓の外ばかり見てしまう。
来ないでほしい。
…じゃないんだけど。
あぁ…もう、どうなったらいいのか。
それすらもわからないよぉ…っ。
「…どう、されましたか?
さっきからずっと、不安そうな顔をしている」
「えっ、あ…っ」
顔に出さないように気を付けなきゃって思ってたのに、盆子原さんに心配されてしまった。
「お腹、まだ空きませんよね。
緊張もしなくていいですよ。先にコーヒーだけ注文して、話でもしましょうか」
「あ、はい…っ」
…よかった。変な風に疑われないで済んだみたい。
だけど、それも時間の問題だよね。
どの道、慎吾くんがここに来たら状況は変わる。
黙って受け入れてくれる?
それともこの場で、お父さんである盆子原さんに本当の事を話しちゃう?
でも、そんな事しちゃったら…
「慎吾…」
「ぇっ」
「…って言うんですよ。
息子の名前です」
「あぁ…」
…なんだぁ。
いきなり慎吾くんの名前が出てきたから、ビックリしちゃった。
そうだよね。
盆子原さんからすれば、私と慎吾くんは今日が初対面だと思ってるもんね。
私もそのつもりで、話を合わせなきゃ。
盆子原さんの注文してくれたアイスコーヒーがテーブルに届き、私は「いただきます」を言ってストローを口に付けた。
「慎吾は高校2年生で、つい先月の末に17になったばかりなんですよ」
「わ…そうなんですか」
そう相づちを打ちながら、わざと盆子原さんと視線を合わせないように、カラカラと氷の入ったグラスをストローで混ぜてみた。
慎吾くんが17歳になった事なんて、もちろん知ってる。
1日遅れになったけど、一緒にケーキも食べたんだもんね…。
「誕生日だってのに、父親の僕は何もしてあげられなくて。
それでようやく取れた休みに、慣れない手料理を振る舞ってやったんですよ」
「あぁ。
きっと、慎…吾さんも喜ばれたでしょうね」
「あははっ
笑いながらハッキリ、下手くそって言われちゃいました。
でも、全部食べてくれましたよ」
「…あはっ」
盆子原さんの話を聞いて、その時の慎吾くんの顔が目に浮かんだ。
家庭に時間が割けない代わりにお金を多めに渡してるって言ってたけど、慎吾くんはお父さんの事をちゃんと想ってるいい子なんだよ。
「…ステキな息子さんなんですね」
「はい。何だかチャラチャラ頼りない風貌かもしれませんが、忙しい僕も助けられてます。
本物に良い、自慢の息子なんです」
「……」
嬉しそうに語る盆子原さんの顔を見て、だんだんと罪悪感に押しつぶされそうになった。
私はこのステキな家族に、亀裂を入れる存在になるのかもしれないのだから…。
「……しかし、遅いな」
「……………」
コーヒーが届いて、もう30分が経過した。
どうせだから3人揃ってからランチの注文を取ろうかと、慎吾くんが来るまで盆子原さんとずっと話をしていたんだけど…。
「約束の時間を、間違えちゃってるんでしょうか」
「いえ。
僕が先に家を出る前に、11時にって慎吾も言ってたわけですから、そんな筈は…」
お昼が近くなってきたので、だんだんとお客さんの入りが増えてきた軽食屋さん。
誰かが店のドアを開ける度にビクッとなっては注目してしまったけど、でも慎吾くんの姿は全く現れないのだ。
「…何かあったんだろうか。
ちょっと、電話をかけてきますね」
「あ、はい…っ」
そう言って席を立った盆子原さんは、ケータイを取り出して店の奥へと消えて行った。
そうしてテーブルに1人残された私は盆子原さんの背中が見えなくなったのを確認すると、「はぁー…」と肩の力を抜きながら息をついた。
「……………」
約束時間を知ってて来ないって事は、きっと私の事に気付いたんだ。
だから認めたくなくて、それで……っ
私と盆子原さんが一緒のテーブルに着いてる所を見て、どんな顔をするだろうか。
それとも、ここにいるのが私だってもうお父さんの口から聞いたのかな。
…怖い。
いつやって来るのかわからない分、ソワソワしちゃってメニュー表よりも窓の外ばかり見てしまう。
来ないでほしい。
…じゃないんだけど。
あぁ…もう、どうなったらいいのか。
それすらもわからないよぉ…っ。
「…どう、されましたか?
さっきからずっと、不安そうな顔をしている」
「えっ、あ…っ」
顔に出さないように気を付けなきゃって思ってたのに、盆子原さんに心配されてしまった。
「お腹、まだ空きませんよね。
緊張もしなくていいですよ。先にコーヒーだけ注文して、話でもしましょうか」
「あ、はい…っ」
…よかった。変な風に疑われないで済んだみたい。
だけど、それも時間の問題だよね。
どの道、慎吾くんがここに来たら状況は変わる。
黙って受け入れてくれる?
それともこの場で、お父さんである盆子原さんに本当の事を話しちゃう?
でも、そんな事しちゃったら…
「慎吾…」
「ぇっ」
「…って言うんですよ。
息子の名前です」
「あぁ…」
…なんだぁ。
いきなり慎吾くんの名前が出てきたから、ビックリしちゃった。
そうだよね。
盆子原さんからすれば、私と慎吾くんは今日が初対面だと思ってるもんね。
私もそのつもりで、話を合わせなきゃ。
盆子原さんの注文してくれたアイスコーヒーがテーブルに届き、私は「いただきます」を言ってストローを口に付けた。
「慎吾は高校2年生で、つい先月の末に17になったばかりなんですよ」
「わ…そうなんですか」
そう相づちを打ちながら、わざと盆子原さんと視線を合わせないように、カラカラと氷の入ったグラスをストローで混ぜてみた。
慎吾くんが17歳になった事なんて、もちろん知ってる。
1日遅れになったけど、一緒にケーキも食べたんだもんね…。
「誕生日だってのに、父親の僕は何もしてあげられなくて。
それでようやく取れた休みに、慣れない手料理を振る舞ってやったんですよ」
「あぁ。
きっと、慎…吾さんも喜ばれたでしょうね」
「あははっ
笑いながらハッキリ、下手くそって言われちゃいました。
でも、全部食べてくれましたよ」
「…あはっ」
盆子原さんの話を聞いて、その時の慎吾くんの顔が目に浮かんだ。
家庭に時間が割けない代わりにお金を多めに渡してるって言ってたけど、慎吾くんはお父さんの事をちゃんと想ってるいい子なんだよ。
「…ステキな息子さんなんですね」
「はい。何だかチャラチャラ頼りない風貌かもしれませんが、忙しい僕も助けられてます。
本物に良い、自慢の息子なんです」
「……」
嬉しそうに語る盆子原さんの顔を見て、だんだんと罪悪感に押しつぶされそうになった。
私はこのステキな家族に、亀裂を入れる存在になるのかもしれないのだから…。
「……しかし、遅いな」
「……………」
コーヒーが届いて、もう30分が経過した。
どうせだから3人揃ってからランチの注文を取ろうかと、慎吾くんが来るまで盆子原さんとずっと話をしていたんだけど…。
「約束の時間を、間違えちゃってるんでしょうか」
「いえ。
僕が先に家を出る前に、11時にって慎吾も言ってたわけですから、そんな筈は…」
お昼が近くなってきたので、だんだんとお客さんの入りが増えてきた軽食屋さん。
誰かが店のドアを開ける度にビクッとなっては注目してしまったけど、でも慎吾くんの姿は全く現れないのだ。
「…何かあったんだろうか。
ちょっと、電話をかけてきますね」
「あ、はい…っ」
そう言って席を立った盆子原さんは、ケータイを取り出して店の奥へと消えて行った。
そうしてテーブルに1人残された私は盆子原さんの背中が見えなくなったのを確認すると、「はぁー…」と肩の力を抜きながら息をついた。
「……………」
約束時間を知ってて来ないって事は、きっと私の事に気付いたんだ。
だから認めたくなくて、それで……っ
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