ひな*恋 〜童顔ひな子の年の差恋愛(ノベル版)

むらさ樹

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「盆子原課長、ランチご一緒していいですか?」



同じ部署の5つ下の後輩に呼び止められ、僕はその足を止めた。



「…コンビニに行くだけなんだが、君もそれでいいのかい?」


「えぇ、構いません」



息子と男2人だけで暮らしているだけあって、食事は昼も夜も買う事が多い毎日だ。


そんな僕に、この後輩の彼女はよく付いて来る事が多い。





「朝晩だいぶ涼しくなりましたね。
秋も近いですよ」


「そうだね」



夏が終わり、季節も秋へと変わる頃となった。

この時期がやたら寂しく感じてしまうのは、きっと季節の変わり目だけが原因ではないだろう。



この夏、1人の女性に熱く恋をし、そして散った。


こんなにも人を強く想ったのは、どれほど振りだったろうか…。






「…!」



後輩と並んでコンビニへと向かう足が、再び止まった。


「課長?どうされまし…
あ、あそこにいるのは課長の息子さんじゃありません?」



彼女の言う通り、同じくこちらに向かって歩いて来ている2人の人物に、僕は息をするのも忘れそうなくらい目が釘付けになっていた。



…あぁ、そうか。
そういう事だったのか。




やがて目の前まで来た2人が、僕に気付いて足を止めた。




「あれー?
オヤジこんなとこで何してんの?」


「ん…ちょっとコンビニにな…」



息子の隣に立つ彼女は、僕から視線を逸らすように俯き加減になっている。


まぁ…無理もないか。



「ひなぁ、大丈夫だよ。
ひなはいつでも、俺が守ってあげるからね」

「し、慎吾くん…っ」




「ふふっ、彼女を大切するなんて、頼もしい息子さんですね」


「あ、あぁ…」



この時、何も知らない後輩は当然この場の状況なんてわかる筈もなく、酷な事を平気で口にした。


気不味い空気だけが、辺りを包む。




「じゃあ…な、慎吾」


「んー。
てゆーか、仕事あんまムリすんなよ、オヤジ?」


「…わかってるさ。
行こうか」

「はい、盆子原課長」




あまり長くは耐えられない状況に、僕は半ば強引に足を進め息子たちと別れた。


この場にいる事が酷なのは、みんな知っているから…。



1ヵ月も前の話になるのに、いい加減僕も動揺しすぎかな。




「いい息子さんですね」



息子たちを通り過ぎた後、横に付いて来る後輩が後ろを振り返りながらそんな事を言った。



「でも男2人だけって、家庭も大変でしょ?」


「ん…、まぁね」



だがそれは、息子の協力で成り立っているのは間違いない。

そしていよいよ幸せな家庭が築けると思ったんだが、現実はなかなか残酷というものだった。




「…私で良かったら、母親になってあげるのになぁ」


「はは…」



情けない僕をフォローしてくれてるつもりなのか、冗談を言う後輩に空笑いしか出ない。


だがそんな後輩の言葉が本当は何を意味してるのか、今の僕にはまだ理解する時間が短すぎただけだったんだ─────────…。









*********



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