ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!

むらさ樹

文字の大きさ
1 / 76

お見合いなんてしないんだけど…!①

しおりを挟む
「おはよ、勇さん。
ご飯置いておくね」



月曜日の朝


一通りの家事をこなした後、仕事に行く前にまだベッドで寝てる彼に一声かけた。



「ん…あぁ…
サンキューな…」



夜間のトラック運送をしている彼は、朝はまだまだ真夜中と同じなのだ。


寝ぼけ眼で私に手を振る彼にチュウをすると、私は玄関を出て仕事に向かった。



「うん、行ってきます」



ローファーを弾ませて向かう職場は、アパートからまっすぐの道を10分歩いた先の小さな本屋さん。



決して都会ではないこの町も、越してから最初は不自由したけど住めば都。


銀行もスーパーもコンビニも病院も公園も、それなりにみんなあって、とても住み心地がいい。







職場に着くと、開店の準備を担当している私は店長さんから預かっている鍵を使って裏口を開ける。


スタッフルームのロッカーに荷物を置いてエプロンをかけ、次にお店の照明スイッチをパチンとつけた。



シャッターをあけて店周りの掃除をし、店内の開店準備もする。

よし、OK。



ほら、早くも最初のお客さんがこっちに向かって来てる。


「いらっしゃいませー!
おはようございまーす」



開店時間9時

すぐ隣の大きな銀行と並んでいるこの本屋さん。
ここが私、相川 優あいかわ ゆうの職場なのだ。








それから10時になると、今度はパートの方と店長さんが来る。


「おはようございまーす」


「おはよう、相川さん。
今日も相変わらず元気ね。
若いっていいわぁ」


このパートの方は和泉いずみさんって言って、旦那さんもお子さんもいるバリバリの兼業主婦。

私もいつかこんな風になるんだろうなぁなんて目で見ている。



「そんなに若くもないですよっ
もう27なんですからぁ」


はっきり言って、私はとちらかと言わなくても童顔。
未だ未成年に見られる事もあり、正直コンプレックスなんだよね…。



「やだ、27なら若いわよ。
て言うか、そろそろお嫁に行く頃じゃない?」


「あはは…」


…うん、別に結婚したくないわけじゃない。
結婚したい人はもちろんいる。

なのにまだ結婚しないのには、理由もあるの…。









夕方17時

仕事が終わると、私はスーパーで買い物をして帰る。


「ただいまぁ…」


ローファーを脱いで玄関をあがるけど、私の声に返事はない。


この時間になると、今度は同棲している彼の方が仕事に出ているのだ。



夜間の仕事をしている彼と私は、殆ど毎日をこうやってすれ違って生活している。



リビングには、朝私が用意して出たご飯のお皿だけが残っていた。



「全部キレイに食べてくれた。
良かったぁ」


アパートに帰ると私はまずそのお皿を洗い、それから夕飯の支度を始める。


__こんな感じが、今の私の生活スタイルだ。







そして1人きりの寂しい夕飯を食べて片付けも済ませた、夜の21時。

ボーっとテレビを見ていると、ケータイから着信音が鳴った。


…♪♪♪ ♪♪♪…


テレビの音量を一旦下げると、私は鳴り続けているケータイに出た。



「もしも…」


『優!
あんた一体いつまでお母さんを無視するつもり!?』


相変わらずの大声に耳がしばらくキーンとする。



「……お母さんったら…、そんなに大きい声で喋らなくても聞こえるよぉ…」



『聞こえるじゃないわよ!
あんたがいつまでもわがまま言うからでしょう!
この前送った写真、ちゃんと見たでしょうねぇ』



……お母さんが言う写真というのは、お見合い写真の事だ。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される

アルケミスト
恋愛
崔国の皇太子・龍仁に仕える女官の朱音は、人間と花仙との間に生まれた娘。 花仙が持つ〈伴侶の玉〉を龍仁に奪われたせいで彼の命令に逆らえなくなってしまった。 日々、龍仁のいじわるに耐えていた朱音は、龍仁が皇帝位を継いだ際に、妃候補の情報を探るために後宮に乗り込んだ。 だが、後宮に渦巻く、陰の気を感知した朱音は、龍仁と共に後宮の女性達をめぐる陰謀に巻き込まれて……

処理中です...