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「それは…」
お母さんは私に早く結婚させようと、随分前からこうしてお見合い写真を送り続けている。
私だってとうとう30が見えてきた年になってきた。
娘を早く嫁に出したいって言うお母さんの気持ちはわからなくはないんだけど…。
でも今、私には好きな人がいる。
そしてその人とは同棲をしていて、もうすぐ1年になるの。
お見合い写真を送りつけるお母さんには、良い人がいるよって言ってるんだけど…なかなか理解してもらえない。
……なぜかと言うと、実はお母さんは相当目が高い。
高学歴に高収入は当たり前。
家柄だって事前にチェックを入れるほどの強者なのだ。
だから送りつけてるこのお見合い写真の男性は、きっとそんな感じの人なんだろうとは思うの。
それに対し、同棲している彼はと言うと…
高校は中退。
資格だとか、そんなものもない。
収入や貯金は……
「……勇さん…」
彼の名前は、後藤 勇。
私とおんなじ、ゆうって名前。
年は、私より7つ上の34才。
ぶっきらぼうで口は悪いんだけど、でもとっても私に優しい。
いつも私の事を一番に考えてくれるし、気遣ってくれる。
出会って数年で同棲を始めたんだけど、半年前にプレゼントしてくれた右手薬指に鈍く輝くシルバーリングは、私の一生の宝物!
そんな彼がいるってのにお見合いなんて、絶対有り得ないんだからっ
でも…どうしたらお母さんを説得できるのか、正直わかんないんだよね…。
「あのね、お母さん…。
だから私には、もう心に決めた人がいるんだってば。
だからいくら写真を送ってこられても、お見合いなんかしないよ?」
みだりに捨てる事も出来ず、クローゼットに貯まりっぱなしのお見合い写真がチラッとはみ出ている。
勇さんに見られたら気分を悪くされると思って、なるべく隠してるつもりなんだけど、いい加減かさばって置き場所にも困ってきた。
『まだそんな事言ってるの!
そんな中途半端な男と結婚したって、苦労するのはあんたなのよ!
お母さんはあんたの為を思って言ってるんだからね!』
「お母さん…っ」
本当に私を思って言ってくれてるんなら、私の意志だって尊重してほしいよっ。
『とにかく!
今回送った写真の人は本っ当に良い男性なのよ!
こんな良い男性なんて他にはいないんだから!』
良い良いって連呼するお母さん。
お母さんの良いと私の良いが一致しない以上、多分いくら話し合っても結果は変わらないんだろうな。
「でもね…」
『じゃあこうしましょう。
とにかくこの人とは一度会ってみなさい!
それで駄目だったらお母さんも諦めるから』
「えっえっ!?」
耳を疑いそうになって、思わず二度ビックリした。
諦める?
あのお母さんが、諦める!?
「じゃあ…認めてくれるの?
私たちの事」
『何言ってるの!
とりあえずこの人と会ってからって言ってるでしょ!』
なるほど、つまりはこうよね。
とりあえずお母さんの推すその男性と一度お見合いさえすればいいって事。
その人と結婚するとかじゃない、会えばいいだけなのよ!
「わかった、私お見合いする!」
『まぁ、やっとその気になったわね』
ただ会うだけでいいんだ。
その後は、私には勿体なくて…とか適当な理由でお断りすればいいのよ。
そうすれば、もうお母さんからお見合い写真を送りつけてくる事もないだろうし、勇さんに変な心配をさせずに済む!
『じゃあ先方さんには、そう伝えておくわね。
はぁ~良かった良かった』
急に上機嫌になったお母さん。
私も良かったわ。
これさえクリアすれば、後は勇さんにプロポーズしてもらうのを待つだけだもん!
『詳しい日時が決まったら、また電話するから。
じゃあね、優』
そう言って、お母さんからの電話は切れた。
……んー…これはこれで良かったんだけど…
「お見合いかぁ」
お母さんに諦めてもらう為とは言え、お見合いをする事になってしまった。
こんな事、勇さんにはもちろん言えない。
だって、いくらこんな事情とは言え、やってる事は勇さんを裏切ってる行為だもんね…。
でも大丈夫。
ほんの1日だけ頑張ればいいんだから。
この日さえバレなければ、全てうまくいくんだもんね。
だけど、実際はそんな上手くいくわけがないんだ…
お母さんは私に早く結婚させようと、随分前からこうしてお見合い写真を送り続けている。
私だってとうとう30が見えてきた年になってきた。
娘を早く嫁に出したいって言うお母さんの気持ちはわからなくはないんだけど…。
でも今、私には好きな人がいる。
そしてその人とは同棲をしていて、もうすぐ1年になるの。
お見合い写真を送りつけるお母さんには、良い人がいるよって言ってるんだけど…なかなか理解してもらえない。
……なぜかと言うと、実はお母さんは相当目が高い。
高学歴に高収入は当たり前。
家柄だって事前にチェックを入れるほどの強者なのだ。
だから送りつけてるこのお見合い写真の男性は、きっとそんな感じの人なんだろうとは思うの。
それに対し、同棲している彼はと言うと…
高校は中退。
資格だとか、そんなものもない。
収入や貯金は……
「……勇さん…」
彼の名前は、後藤 勇。
私とおんなじ、ゆうって名前。
年は、私より7つ上の34才。
ぶっきらぼうで口は悪いんだけど、でもとっても私に優しい。
いつも私の事を一番に考えてくれるし、気遣ってくれる。
出会って数年で同棲を始めたんだけど、半年前にプレゼントしてくれた右手薬指に鈍く輝くシルバーリングは、私の一生の宝物!
そんな彼がいるってのにお見合いなんて、絶対有り得ないんだからっ
でも…どうしたらお母さんを説得できるのか、正直わかんないんだよね…。
「あのね、お母さん…。
だから私には、もう心に決めた人がいるんだってば。
だからいくら写真を送ってこられても、お見合いなんかしないよ?」
みだりに捨てる事も出来ず、クローゼットに貯まりっぱなしのお見合い写真がチラッとはみ出ている。
勇さんに見られたら気分を悪くされると思って、なるべく隠してるつもりなんだけど、いい加減かさばって置き場所にも困ってきた。
『まだそんな事言ってるの!
そんな中途半端な男と結婚したって、苦労するのはあんたなのよ!
お母さんはあんたの為を思って言ってるんだからね!』
「お母さん…っ」
本当に私を思って言ってくれてるんなら、私の意志だって尊重してほしいよっ。
『とにかく!
今回送った写真の人は本っ当に良い男性なのよ!
こんな良い男性なんて他にはいないんだから!』
良い良いって連呼するお母さん。
お母さんの良いと私の良いが一致しない以上、多分いくら話し合っても結果は変わらないんだろうな。
「でもね…」
『じゃあこうしましょう。
とにかくこの人とは一度会ってみなさい!
それで駄目だったらお母さんも諦めるから』
「えっえっ!?」
耳を疑いそうになって、思わず二度ビックリした。
諦める?
あのお母さんが、諦める!?
「じゃあ…認めてくれるの?
私たちの事」
『何言ってるの!
とりあえずこの人と会ってからって言ってるでしょ!』
なるほど、つまりはこうよね。
とりあえずお母さんの推すその男性と一度お見合いさえすればいいって事。
その人と結婚するとかじゃない、会えばいいだけなのよ!
「わかった、私お見合いする!」
『まぁ、やっとその気になったわね』
ただ会うだけでいいんだ。
その後は、私には勿体なくて…とか適当な理由でお断りすればいいのよ。
そうすれば、もうお母さんからお見合い写真を送りつけてくる事もないだろうし、勇さんに変な心配をさせずに済む!
『じゃあ先方さんには、そう伝えておくわね。
はぁ~良かった良かった』
急に上機嫌になったお母さん。
私も良かったわ。
これさえクリアすれば、後は勇さんにプロポーズしてもらうのを待つだけだもん!
『詳しい日時が決まったら、また電話するから。
じゃあね、優』
そう言って、お母さんからの電話は切れた。
……んー…これはこれで良かったんだけど…
「お見合いかぁ」
お母さんに諦めてもらう為とは言え、お見合いをする事になってしまった。
こんな事、勇さんにはもちろん言えない。
だって、いくらこんな事情とは言え、やってる事は勇さんを裏切ってる行為だもんね…。
でも大丈夫。
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この日さえバレなければ、全てうまくいくんだもんね。
だけど、実際はそんな上手くいくわけがないんだ…
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