ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!

むらさ樹

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そんなわけで、あっという間に迎えた金曜日。

日中は家で寝ている勇さんがいるから、ノコノコお見合いに行くってわけにはいかない。

だから勇さんには、今日は人手が足りなくて急遽休日出勤する事になったって話にしている。


もちろん勇さんが職場に来る可能性もあれから、そこは和泉さんに上手くごまかしてもらえるよう手配はした。


…こんなにも手の込んだウソをついてのお見合い。
勇さんが知ったらどう思うかな…。

きっと、いや絶対イヤな気持ちになるよね。


だけど、これはいずれ2人の為なんだから…!


絶対バレないようにするから、ほんの1日だけ許してね。





いつもと変わらない朝。
いつもと変わらない時間。

私は勇さんのご飯をテーブルに用意すると、仕事に行くときと同じような支度をした。


運良く?勇さんはベッドでよく眠っている。


そんな彼のもとまで近寄ると、そっとその寝顔にキスをした。



愛してる。

私は勇さんを裏切ったりしないから。
だから絶対、信じててね。


いつもより長いキスから唇を離すと、私は玄関でローファーを履いてアパートを出た。







お見合いは11時から。

まずはすぐに電車で実家に帰り、身支度を整える。

それから今度は、お母さんと一緒に用意された現地まで行くのだ。


場所は、普段は行かないようなちょっと敷居の高いお料理処。


昔からの古めかしいお見合いとかじゃなく、簡単な会食形式みたい。

ま、その方が、断りを入れても重くならないよね。





電車に2時間近く揺られ実家の最寄りの駅に着く。

それから実家まで10分くらい歩いて、ようやくたどり着いた。



肩にかけたショルダーバッグからケータイを取り出して見ると、既に10時をまわっている。


「ただいまぁ!」


アパートのカギと一緒にしている実家のカギで玄関戸を開けると、久しぶりに見るお母さんが出迎えてくれた。

既に着物なんかをしっかり着込んでいる。



「優!
何のんびりしてんのよ!
しかもまだそんな普段着だってのに!」


「だってぇ」


のんびりだなんて。
これでも精一杯急いで来たんだからぁ!

服だって仕事に行くって出たわけだから、いきなりおしゃれ着とか勇さんに見られたら怪しまれちゃうもん。



「私のカジュアルスーツ、1着ぐらい置いてあるでしょ!
早くそれ出してよぉ」


「カジュアルスーツだなんて!」


「いいの!
もうそのつもりだったんだから!」


実家についた途端、私はバタバタしながら支度を整えた。


以前私が使っていた部屋は既に物置みたいになっていて、置きっぱなしにしていた私物はとりあえず捨てられずにあったものの、目的の物を取り出すのも一苦労だった。


大学卒業の時に着た薄ピンク色のカジュアルスーツを着た私は、鏡の前で簡単に髪の毛を手櫛で整えた。



「優!早く!
もう出発しないと、遅れたら先方さんに失礼でしょ!」


「わかってるってばぁ!」


たった1度きりのお芝居のお見合いだもの。
メイクだって仕事の時と同じくらいの薄化粧。

簡単で十分だよね。


それで失礼なんて思われても、どうせ今後付き合っていくわけでもないし。



「あ、パンプスとかないや…」


ま、いいか。
いつものローファーを履くと、私は半ばお母さんに引っ張られるように目的地へと向かった。

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