ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!

むらさ樹

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私たち、家族になるんだよ!①

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土曜日

どんよりどよどよの空模様。


「なんか…今にも大雨が降りそうですね」


暗い天気に、職場である店内の照明はやけに眩しく感じる。


「天気予報じゃ、明日の方が大雨だそうよ」


和泉さんと一緒になってお店の出入り口から空の方をのぞき込んでいた。

土曜日だってのに、天気が悪いだけでお客さんも少ないお昼時。
こんな日は、時間が経つのが遅く感じちゃうんだよね…。


ううん、むしろ早いかな。
だって明日はいよいよ実家に帰る日。

早くお母さんに勇さんを紹介したいのもあるけど、どうせヒドい言葉が返ってくるのがわかってるから、できれば2人の顔を合わせたくないような気も…。


それにやっぱり、緊張だって否めない。
せめて少しでも穏便に、事が運びますように…っ


「へぇ。
いよいよ両親に紹介するんだ」


お客さんが来なくて暇なのもあり、私はレジの所でまた和泉さんとしゃべっていた。


「うん。
しかも妊娠の事もね…」

「あぁ。
そりゃ大変だ」

「やっぱり、大変…?」


和泉さんだって、その当時はご両親に妊娠の事を報告して揉めたんだ。

その和泉さんが大変って言うぐらいなんだから、きっとそれは修羅場なんだろうな…。


「後から思い返すと、何て事はなかったんだけどね。
でもま、いきなり和解なんてまず期待しない方がいいかも?」


「うぁぁ。
そんな風に言われたら、明日行くのがイヤになっちゃうよぉ」


「明日?
相川さん、明日も仕事じゃなかったっけ?」


「はい。
だから、仕事終わってから夜に行くんです」


日曜日ならお父さんだって休みだもん。

こんな大事な話、やっぱりお母さんだけじゃない、お父さんもいる時じゃないとね。


「だったら相川さん、明日休み取ったら?」


「え?ま、まさかぁ。
日曜日なんだから休めないですよっ」


そんなに大きくもない本屋さんだけど、この辺りには本屋さん自体もないので土日は平日に比べてドッとお客さんの入りが多いのだ。

そんな日曜日に休みを取るだなんて、さすがにそんな事はできないよっ



「大丈夫よ。
常盤さんもレジ出来るようになったし、明日も天気悪いからきっとお店もそんなに忙しくないよ」


「でも…」


「相川さんの人生に関わる大事なご挨拶なんでしょっ」


私の人生…かぁ。
両親に認められた結婚が出来ればいいな。

仕事終わって急いで実家に行くのを考えると…確かにちょっとバタバタしそう…。


「いい…んですか?」


「もちろんよ。
頑張ってね!」


明日は私と勇さんの運命を決める大切な大切な日。


和泉さんも言ってくれてるし、後で店長さんにお願いしてお休みをいただこう。

夜の天気予報で見た通り、日曜日は朝から黒い雲が空を覆っており、まるで定規で線を引いたような雨がザーザーと降っていた。

まだ春だってのに、まるで梅雨の真っ最中みたいだぁ…。








昨夜は緊張してか、あんまり深く眠れていない。

と言っても、毎日の習慣からか雨の音のせいか、7時には目が覚めちゃったよ。


私はベッドの中でウンと背伸びすると、ゴロンと寝返りを打った。

すると、勇さんと向き合うような姿勢になり、まだ夢の中にいるんだろうスヤスヤと気持ちよさそうな寝顔が見える。



「…ふふっ」


もういい年になってる勇さん。
口は悪いのに、寝顔はとっても優しいんだよね。
…なんて言ったら、怒られちゃうから言えないけど。


「…おはよ」


眠ってる勇さんに近付くと、そっと唇を重ねた。


何の反応もなーい。
深く眠ってて、私のキスには全然気付いてないんだ。

そういえば私、昨夜は勇さんが帰ってきたのに気付かないままだった。

だから勇さんもせっかく私にキスをしてくれたのに、私は眠ったままだったんだろうなぁ。



「さ…てと…」


今日は無理言ってお休みにしてもらった日。

お母さんには何時に行くって言ってないから、後で電話入れなくちゃ。

勇さんもまだ起きないだろうし、行くのはお昼過ぎくらいがいいかなぁ。


まずは洗濯から始めなきゃ。
雨だから部屋干しだもんね。
大変だぞっ


私は勇さんが起きないようにゆっくりとベッドから出ると、朝の支度を始めた。
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