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アパートにはもう何もない、スッカラカンな状態。
うちのアパート、こんなに広かったっけ?って思うくらいだ。
…ここに住んで、5年とちょっとだったな。
「優?」
しんみりしちゃってた私に、勇さんが顔を覗かせた。
「何か…寂しいね。
ここには勇さんとの思い出がいっぱいあるのに、もう行かなきゃならないなんて…」
朝起きたらキスを交わし、家事をして仕事に向かって。
帰ったらまた家事をして寝て、それから勇さんが仕事から帰ってキスを交わす。
休みの日や私と勇さんの時間が合えば、ふたりっきりで甘い甘いひとときも過ごしたよね。
それも、今日でおしまい…
「バカ、何言ってんだ。
今日から、新しい生活が始まるんだろ?
過去を振り返るのもいいけど、前向いて歩かねぇとな」
前向いて、かぁ。
そうだね。
もう妊娠5ヶ月となると、だいぶお腹も膨れてきた。
冬には生まれてくる赤ちゃんの為にも、前向いて新しい人生歩まなきゃ!
勇さんと一緒にね。
アパートを出てドアにカギをかけると、同じアパートに住んでいる管理人さんの所に行ってカギを返した。
これでもうアパートには帰れなくなっちゃった。
「じゃあ優の実家…いや、俺たちの家に帰ろうか」
貴重品なんかをまとめたカバンなどの荷物を勇さんに持ってもらうと、私たちは歩き出した。
「なぁ、籍…いつ入れようか」
「私ならいつでもいいよ。
今すぐでもいいし、落ち着いてからでもいいし」
式を挙げる予定までは考えてないけど、もう実家で一緒に暮らすならいつ入籍したっていいよね。
住所も実家に変えなきゃだから、そのついでに届け出を出せば手間もかからないかも。
「じゃあさ、今月の7日とかどうか?」
「7月7日?
七夕だね」
「あぁ…。
長い一年という月日を経てようやくまた巡り会った2つの星の日だな」
長い月日を経て…かぁ。
ずっと同棲生活をしてて、プロポーズなんてしてくれないかなぁって、ちょっぴりソワソワ待ってたからなぁ。
そういう意味では、似てなくもないもんね。
…て言うか、
「ふっ…ふふっ」
「何がおかしいんだ?」
「だってぇ、勇さんがそんなロマンチックな事言うなんて思わなかったんだもん」
いつもぶっきらぼうな感じなのに、時々そのギャップを見せてくれるのよね。
もちろん、そこが好きなんだけど。
「バカ!お前っ
笑ってんじゃねぇよ」
「あは。
うん、でもいいよ七夕さま。
じゃあその日、楽しみにしてるね」
私は勇さんの手を取ると、ギュッと自分の手と繋いだ。
私たちがホントの夫婦になる日まで、あと少しなんだぁ。
駅に着くと、実家の最寄り駅に向かう電車に乗った。
とりあえず私は仕事を辞めてしまったので、これからしばらくは実家で家事と育児に専念する生活が始まるんだ。
そして私は、勇さんの“女”から“妻”になるの。
ようやく私たち、一緒になるんだね…。
生活スタイルがまた変わるからこれからどんな風になるかはまだわかんないけど。
でもきっと、これまでと変わらず幸せな毎日が送れるよ。
結局こうして勇さんと結ばれるきっかけが出来たのは、お母さんが用意したお見合いのおかげなのかも。
でも初めてお見合いというものをしちゃったのは、今でも勇さんにはナイショ。
まさか年商3億円の優しくて強引な社長さんだなんて思わなかったし、結構キケンなお見合いだったかも?
ガタン ゴトン と、鈍行の電車が心地良いリズムを刻みながら目的地へと進む。
長い時間揺られているけど、もうすぐ着く頃かな。
「なぁ優…?」
「ん?」
隣のシートに座る勇さんが私のお腹に手を乗せた。
「…ありがとな…」
「え?
何が?」
急にありがとうなんて言われても何の事かわかんない。
そう思って聞き返したんだけど、勇さんはそれ以上何も言わなかった。
だけど、もしお礼を言うなら私の方。
私みたいなのに優しくしてくれて、頼もしくて。
こんなにも幸せな気持ちでいっぱいにしてくれる人なんて、他にはいないんだよ。
「私も…ありがと」
「は?」
「…ふふっ」
お互い別々の家で生まれ、元々は全くの他人という関係だった私と勇さん。
それが恋人という関係になって、次は夫婦という関係になるんだね。
しかも、あと半年でパパとママにもなるんだよ。
どんなに厳しいイバラの道になろうとも、勇さんとだったら手を携えて乗り越えて行けるよ。
__『クソっ、お前も来い!』
__『きゃぁ!』
初めて会ったあの時から、私たちの人生の駆け引きは始まってたもんね。
大好き
一生、一生、愛してる。
私の心を奪った、私だけの勇さん…!
『ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!』
オシマイ(*^^*)
*****************
*****************
うちのアパート、こんなに広かったっけ?って思うくらいだ。
…ここに住んで、5年とちょっとだったな。
「優?」
しんみりしちゃってた私に、勇さんが顔を覗かせた。
「何か…寂しいね。
ここには勇さんとの思い出がいっぱいあるのに、もう行かなきゃならないなんて…」
朝起きたらキスを交わし、家事をして仕事に向かって。
帰ったらまた家事をして寝て、それから勇さんが仕事から帰ってキスを交わす。
休みの日や私と勇さんの時間が合えば、ふたりっきりで甘い甘いひとときも過ごしたよね。
それも、今日でおしまい…
「バカ、何言ってんだ。
今日から、新しい生活が始まるんだろ?
過去を振り返るのもいいけど、前向いて歩かねぇとな」
前向いて、かぁ。
そうだね。
もう妊娠5ヶ月となると、だいぶお腹も膨れてきた。
冬には生まれてくる赤ちゃんの為にも、前向いて新しい人生歩まなきゃ!
勇さんと一緒にね。
アパートを出てドアにカギをかけると、同じアパートに住んでいる管理人さんの所に行ってカギを返した。
これでもうアパートには帰れなくなっちゃった。
「じゃあ優の実家…いや、俺たちの家に帰ろうか」
貴重品なんかをまとめたカバンなどの荷物を勇さんに持ってもらうと、私たちは歩き出した。
「なぁ、籍…いつ入れようか」
「私ならいつでもいいよ。
今すぐでもいいし、落ち着いてからでもいいし」
式を挙げる予定までは考えてないけど、もう実家で一緒に暮らすならいつ入籍したっていいよね。
住所も実家に変えなきゃだから、そのついでに届け出を出せば手間もかからないかも。
「じゃあさ、今月の7日とかどうか?」
「7月7日?
七夕だね」
「あぁ…。
長い一年という月日を経てようやくまた巡り会った2つの星の日だな」
長い月日を経て…かぁ。
ずっと同棲生活をしてて、プロポーズなんてしてくれないかなぁって、ちょっぴりソワソワ待ってたからなぁ。
そういう意味では、似てなくもないもんね。
…て言うか、
「ふっ…ふふっ」
「何がおかしいんだ?」
「だってぇ、勇さんがそんなロマンチックな事言うなんて思わなかったんだもん」
いつもぶっきらぼうな感じなのに、時々そのギャップを見せてくれるのよね。
もちろん、そこが好きなんだけど。
「バカ!お前っ
笑ってんじゃねぇよ」
「あは。
うん、でもいいよ七夕さま。
じゃあその日、楽しみにしてるね」
私は勇さんの手を取ると、ギュッと自分の手と繋いだ。
私たちがホントの夫婦になる日まで、あと少しなんだぁ。
駅に着くと、実家の最寄り駅に向かう電車に乗った。
とりあえず私は仕事を辞めてしまったので、これからしばらくは実家で家事と育児に専念する生活が始まるんだ。
そして私は、勇さんの“女”から“妻”になるの。
ようやく私たち、一緒になるんだね…。
生活スタイルがまた変わるからこれからどんな風になるかはまだわかんないけど。
でもきっと、これまでと変わらず幸せな毎日が送れるよ。
結局こうして勇さんと結ばれるきっかけが出来たのは、お母さんが用意したお見合いのおかげなのかも。
でも初めてお見合いというものをしちゃったのは、今でも勇さんにはナイショ。
まさか年商3億円の優しくて強引な社長さんだなんて思わなかったし、結構キケンなお見合いだったかも?
ガタン ゴトン と、鈍行の電車が心地良いリズムを刻みながら目的地へと進む。
長い時間揺られているけど、もうすぐ着く頃かな。
「なぁ優…?」
「ん?」
隣のシートに座る勇さんが私のお腹に手を乗せた。
「…ありがとな…」
「え?
何が?」
急にありがとうなんて言われても何の事かわかんない。
そう思って聞き返したんだけど、勇さんはそれ以上何も言わなかった。
だけど、もしお礼を言うなら私の方。
私みたいなのに優しくしてくれて、頼もしくて。
こんなにも幸せな気持ちでいっぱいにしてくれる人なんて、他にはいないんだよ。
「私も…ありがと」
「は?」
「…ふふっ」
お互い別々の家で生まれ、元々は全くの他人という関係だった私と勇さん。
それが恋人という関係になって、次は夫婦という関係になるんだね。
しかも、あと半年でパパとママにもなるんだよ。
どんなに厳しいイバラの道になろうとも、勇さんとだったら手を携えて乗り越えて行けるよ。
__『クソっ、お前も来い!』
__『きゃぁ!』
初めて会ったあの時から、私たちの人生の駆け引きは始まってたもんね。
大好き
一生、一生、愛してる。
私の心を奪った、私だけの勇さん…!
『ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!』
オシマイ(*^^*)
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完結、お疲れ様でした!
やっと邪魔者がいなくなりましたが、また何か2人に試練が与えられるのかと勝手に想像しておりましたが(笑)、幸せな結末を迎えることができてよかったです!
ハラハラドキドキばかりでは心臓に悪いので(笑)
確かに優ママは本当に手強いですよね…でも負けずに立ち向ってほしいです。
アフターストーリーも楽しみです!
早速読ませていただきます。
ひとまず、素敵なお話ありがとうございました!!
こんな長い話を、(前作からも続いて)最後までお付き合いありがとうございました💦お疲れさまでした💦
そして、↓ではしっかり誤字ってしまいました(T_T)ハズカシスギル
だけれども、おかげさまで楽しくアップできました!宮里さんには感謝しています!
本当に、ありがとうございましたー(*^^*)
いよいよ実家に出陣、どんな修羅場になるかとハラハラしましたが、意外(?)な展開になりましたね。でも、もう一波乱二波乱ありそうな気が…。
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