ソラマメ

natumame

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空茶屋

ソラマメと拓海

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目が合うと、今度は長く鳴いた。近付いて頭を撫でると、喉を鳴らす音が響く。そして、俺の足元に体を擦り付けてくる。何故か分からないけれど、懐かれてしまった。

「お前は、野良かい?」

短く鳴き、喉を鳴らす。人間の言葉が分かっているのかもしれない。猫は苦手だった。でも、何か不思議な物をその猫から感じた。きっと、それは引き込まれる様な緑の瞳がそう思わせたのかもしれない。

「綺麗な目をしてるね」

それは、空茶屋の裏庭で育てているそら豆に良く似て、突き抜ける様な綺麗な綺麗なグリーンだった。そして、その日からその猫をソラマメと呼び、毎日この時間にやってくるソラマメと過ごすのが何時しか日課になっていた。

俺は、そら豆の花が好きだ。食べるのは勿論だけど、空に向かって伸び伸びと育つそら豆の生き方も大好きだ。小さい頃からよく身近に咲いていたそら豆。だからこそ、ソラマメと出会った時俺はすんなりと受け入れてしまったのかもしれない。それに、あの頃は俺も何かにすがりたいくらい気持ちが不安定だった。

20歳の、夏。俺は恋をしていた。
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