好きな人が窓に張り付いていた。

水無月瑠璃

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二話

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「しかし、話しかける隙すらないわね。パーティー終わるまで待ってみる?」

「難しくない?終わっても付き纏う人は付き纏うわよ。今日で最後なんだから」

「…卒業式の後、少し話したから今話せなくても問題ないよ」

ボソッと強気な発言をするローゼリアに2人は顔を見合わせる。

「…あなたってサラッとマウント取るわよねぇ。無駄に強がるところ好きよ」

「碌に相手にされない有象無象と違って、自分は付き合いが長い、普通に話せる間柄だって言いたいのね。けど面と向かって言えないあたりビビり」

ローゼリアの発言を勝手に曲解して地味に貶す2人を無視して、ローゼリアはせつなげにギルバートを見つめている。さっき話せたと言っても、卒業おめでとうございます、大学に行っても頑張ってください、といった当たり障りのないものだ。ギルバートも大学行っても偶に顔出すから、といった感じのことをローゼリア以外の1年、2年にも話していた。

もうそういった他愛のない会話も出来なくなるのだ。大学に行って忙しくなれば交友関係も広がるし、ローゼリアのことなんて直ぐに記憶の隅に追いやられてしまうだろう。分かっていても、状況を打破する方法は思い付かない。結局、ローゼリアは見ていることしか出来ないのだ、

ローゼリアはスタスタと歩き出すとテーブルの料理をパッ、パッと盛り付けていく。ムシャムシャと令嬢としてはしたないと眉を顰められそうな勢いで、料理を口に運ぶ。美味しい、美味しいのだがあの光景を見ていると極上の料理の美味しさが半減する気がしてくる。

「やけ食い辞めなさいよ、お腹壊すわよ」

「…」

「そんな顔して食べるの料理に失礼よ。味わって食べなさい」

「…味わってる…」

無心で食べるローゼリアを注意するも当のローゼリアは明らかに生返事。こりゃダメだわ、と2人はローゼリアの意識をギルバートから逸らすのを諦めた。しかし、ビビリのくせにしつこい性格のローゼリアのこと。今日このままギルバートと話せないままパーティーが終わればウジウジ引きずるのは目に見えていた。ローゼリア自身も自覚しているので、幼馴染2人も当然予想している。

「…ダメ元で告白した方が良いわよねやっぱり」

「このまま引きずってても良いことないし、ハッキリさせるべきね」

「私もそれ思ってたのよ…直接は無理でも…」

と何やらコソコソ話している2人を一瞥して、ローゼリアの意識は皿に盛られたステーキ…とギルバートに向けられていた。思いを告げる勇気はないのに、令嬢に囲まれてるギルバートを遠くから眺めているだけで胸が締め付けられる。たとえギルバートの顔が完全なる無表情で、寧ろ令嬢達に苛立っているのだとしても。ローゼリアはあそこに飛び込む勇気すらない。意気地無しのローゼリアより邪険にされているのに諦めずにギルバートに話しかけに行く令嬢の方が遥に立派だ。妬む資格すらないのだ。

大学に行ったら恋人は兎も角、婚約者は出来るかもしれない。本人は「兄2人が結婚してるから、俺は親に色々言われなくて気が楽」と溢していたが現状維持のままいる保証はない。どうしても断れない筋から縁談が持ち込まれるかもしれないのだ。例えば自国でなく隣国の王族等。現ヴェルドラク公爵夫人は現国王の妹にあたるので、レオナルドを含めた王子王女とは従兄弟関係になる。かつて近親婚を繰り返した影響で身体が弱く、早くに亡くなってしまう王族、高位貴族が多かったことから血の近い親族同士の結婚は禁止されている。王家に王女は2人いるが、彼女達との縁談が持ち上がる可能性はない。

警戒すべきは他国の王族、国力の差によっては貴族も入る。王立大学は他国からの留学生が多いので、偶々留学していた他国の王女や令嬢にギルバートが見初められる可能性は高い。いや、絶対起こり得るとローゼリアは確信していた。幾らギルバートが拒否しようと、国同士の関係に発展すれば突っぱねることは難しい。その辺りのことはローゼリアの想像に過ぎないが、要するにギルバートがいつまでも自由気ままな身の上でいるわけがないのである。彼の隣には美しく、気品に溢れた女性が立つのだ。

せめて、いつか来るべき日までは片思いする自由は許されるだろうか。と、ステーキを食べながらローゼリアはナメクジもびっくりな程ウジウジと考えていた。恐らくナメクジよりローゼリアの周囲の方がジメジメしており、いずれキノコが生えてきそうだ。

そんなローゼリアにコソコソ話していたルナがぽん、と肩を叩く。振り返ると満面の笑みのルナ。直感した、碌でもないことを言おうとしていると。

「ねぇローゼリア、意気地のないあなたが想いを告げるのにうってつけの方法があるわ」

「…私言うつもりな」

「手紙を書けば良いのよ。面と向かっては無理でも文章でなら思いの丈を込められるでしょ」

ローゼリアの言葉を遮ってルナはこんなことを言い出した。

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