獅子の最愛〜獣人団長の執着〜

水無月瑠璃

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2話

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ライアンがアストラムに来た時に滞在する邸は公爵家のものとしてはかなり小さい。が、普段管理人夫妻しか居ない上、大きければ大きい程邸の管理も雇う使用人の選抜も大変だ。特にライアンは身の上からして希望者が殺到し、その全員が全員ライアンのことを獲物を狙う肉食獣の目で見ており全身に鳥肌が立った。

だからライアンの周りには元同僚の執事、侍女、シェフしかおらず領地に来る時も全員連れて来ている。邸に入るとすぐさま出てくるのは執事のルイスと侍女のリエラ。それぞれ豹と猫の獣人でライアンと違い人化して過ごしている。2人は出迎えて早々主人が抱えているものを見た瞬間…「ついにやったか」と顔を見合せて言い出した。

「いくら周りの令嬢方が鬱陶しいとはいえ、攫ってきたら駄目ですよ。元の場所に返してきてください」

「そうです、流石に騎士団長が誘拐は洒落になりません。今ならまだ間に合います思い直してください」

「お前ら俺のことなんだと思ってんだ良い加減にしろ」

主人に対して失礼すぎる物言いをする2人を地を這うような低い声で威嚇するとはぁー、と溜息を吐く。この2人は結婚する気はないと公言してるにも関わらず、令嬢からの手紙や釣り書きが後を経たないことにとち狂ったライアンが手頃な女を攫ってきたと思ってるらしい。擁護のしようがなく犯罪だ。ライアンは一応まともな倫理観を持ってると自負してるので、超えてはいけない一線は超えない。

「森で魔物に襲われてるところを助けた。突然気絶して、そのままにしておかないから連れてきた。リエラ、部屋の準備を」

「はい…あら、可愛らしい方ですね。襲われてたって怪我はしてないんですか」

「見た限りではないが、全身調べておいてくれ。一応俺は傷薬をいくつか見繕って渡しておく。ああルイス医者も呼んでおいてくれ」

「かしこまりました」

ライアンは魔術師でもあり薬師でもあるが治癒魔法の類は使えないし、医学的な知識が豊富なわけでもない。女に外傷は見られないが、万が一のことがあるので医者を呼ぶべきだと判断した。女には視線を落とすと、ただでさえ白い肌が真っ青になってる。もしかしたら満足に食事をしてないかもしれない。厨房のシェフに消化に良い食べ物を頼みに行こうと決めた。

リエラが用意した部屋に女を運び、恭しい手つきでベッドに寝かせるとリエラに後を任せて部屋を出る。服を脱がせたり着せたりする時にライアンが居合わせるのは宜しくないからだ。粗雑に見えて気遣える男である。

果たしてあの女は何者なのか。獣人を見たことがないそぶりを見せたことからこの国の人間ではない。他国の、魔術の使えない人間があの森に迷い込んだとしたらなんと運の悪い、と同情した。ライアンが居なければ死体が一体出来上がってただろう。想像してゾッとする。彼女が物言わぬ骸になるなんて想像しただけで…。

(?なんだ今のは…まあ良い。可能性としてはガラルドラの人間か。あそこは王の代替わりでゴタついている。それに付随してトラブルが起き、女が逃げてきても不思議はないな)

隣国は今、王家そしてとある公爵家のスキャンダルの話題で持ち切りだ。国王がオーラン公爵家と長年癒着関係にあり、賄賂をもらう代わりに前公爵、現公爵の重大な罪が公になることがないよう、もみ消していたと言うのだ。しかも告発したのは前公爵夫人、王太子いや現国王も協力していた事実は国民に衝撃を与えた。

前国王は退位のち幽閉。前公爵、現公爵は犯した罪の悪辣さから貴族牢ではなく一般の囚人が収容される牢に入れられ、一生牢獄か国外追放のどちらかが濃厚。ライアンにも情報は入っているが、些細までは覚えていない。とはいえ、眠ってる彼女と関係があるとも思えない。ライアンは頭を切り替え、厨房へと足を進めた。
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