期間限定の関係のはずでは?〜傷心旅行に来たら美形店長に溺愛されてます〜

水無月瑠璃

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11話

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目を開けた葉月の視界に飛び込んできたのは見慣れない天井、薄暗い部屋。閉め切ったカーテンの向こう側は明るくなっている。

(あれ、朝)

いつの間にか寝てしまっていたのか、と寝返りを打った葉月の目の前にすうすう、と気持ち良さそうに眠っている裸の男…花村がいた。その瞬間ぼんやりとしていた葉月の意識は完全に覚醒した。

(そうだった、店長さんのこと誘ったんだ…!)

昨夜は気が大きくなっていたからどうにかなっていたものの、シラフに戻ってしまうと何て大胆なことをしてしまったのだと頭を抱える。ここで記憶が飛ぶタイプなら困惑するだけで済んだが、葉月は飲んでも記憶が飛ばないタイプだ。なので昨夜下手くそな誘い文句で花村を誘ったこと、生々しい吐息、互いの汗の匂い、熱いキス、別人のような荒々しさで葉月を延々と貪った花村の姿もバッチリ覚えてしまっているので朝から思い出して顔が熱い。それどころか下腹部が疼く。これではとんだ変態だ、と葉月は布団に顔を埋めて悶える。

(店長さん起きたら謝ってお礼を伝えて…今度こそお別れしよう)

花村は不憫な葉月のことを慰めてくれたに過ぎない。彼の優しさにこれ以上縋っては迷惑だ。既に多大な迷惑をかけているのだから、葉月は速やかに彼の目の前から去るべきなのだ。

(一番の思い出になったわ、あいつらが性懲りも無く話しかけてきたら自慢してやろう)

ふふふ、と性格の悪いことを企んでいると隣の花村がモゾモゾと動き、目を薄らと開けた。むくり、と身体を起こした彼は朝が弱いのかぼーっとして辺りを見渡す。そして葉月の存在を確認すると、少しだけ目がシャキッとして「おはようございます…」と挨拶してくれた。寝起きのせいか声が掠れていて色っぽい。もう今の葉月はそんな些細なことにも反応してしまうようだ。朝から妙な気分になっていることを悟られたくない葉月は上擦った声で「お、おはようございます…」と返してしまった。花村はまだ頭が働かないのか、葉月の様子がおかしいことに気づいてない。ふああ、と大きなあくびをすると葉月を見据えた。

「身体大丈夫ですか。すみません、昨夜は年甲斐もなくがっついてしまい」

気遣う言葉をかけてくれ、謝る花村に葉月は顔の前で手を振った。

「大丈夫ですし、謝らないでください…その、とても良かったので」

尻すぼみになりながらも昨夜の感想を恥ずかしさから顔を逸らして告げる葉月。花村は安心したのか表情を綻ばせた。

「それは良かった。嫌なこと、忘れられました?」

昨夜、嫌なことを忘れさせると宣言した時と違い葉月を容易く頷かせるような圧は感じず、あくまで葉月が憂いを解消出来たかを気にしていた。

「はい、おかげさまで…あの、本当にありがとうございました…」

短い間でしたが、お世話になりました。もうお会いすることもないと思いますがお元気で。そう続けなければいけないのに、喉の奥がつっかえて言葉が出ない。だが言わなければいけない。葉月はどうにか言葉を絞り出そうと、深呼吸をした。そして、遂に決心がついた。顔を上げ、無理矢理口角を上げる。最後は笑顔で別れる方が良い。

「短い間で」

「葉月さん、今日の夜予定はありますか」

ほぼ同時で、だが花村の声が葉月の加細い声を上回ったので掻き消されてしまった。葉月は突然の質問に呆気に取られるも、つい「ありませんけど…」と答えてしまう。すると花村は良かった、と穏やかな笑みを向けて来る。

「夕飯一緒にどうですか?店が終わるのが18時で、そこから色々とすることがあるので迎えに来られるのは18時半頃と遅くなってしまいますが…駄目ですか?」

「だ、駄目なんてそんな、是非!」

あれ、と気づいた時には口が勝手に動いていた。今さっきまで別れの言葉を告げるつもりだったはずなのに誘いを承諾している…何が起こったんだ?と首を傾げそうになる。しかし、それよりも葉月は花村の意図が気になって仕方がない。何故一夜の相手を誘うのか?と。

「あの店長さん」

「優吾」

「え」

「店長呼びは他人行儀で寂しいので、是非名前で」

ね?と笑顔なのにそこ知れぬ圧を発する花村に葉月は頷くしかなく「はい…優吾さん」と初めて下の名前で呼んだ。花村は名前を呼ばれ大変満足そうである。葉月は気を取り直して再度疑問を投げかけた。

「それで、何故私を誘ったんですか」

「そんなの、葉月さんともっと話したいからですよ」

「へ?」

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