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22話
しおりを挟む(想像以上に重い事情を抱えてた…それなのに私のこと真剣に励ましてくれたんだ…)
ああ、好き、と葉月の中の花村への気持ちがまた強まった。そして、全ての話を聞き終えた葉月はどうしても言いたい事があった。神妙な面持ちでこう切り出した。
「…優吾さん…お祓い行った方が良いですよ」
葉月は至極真剣だった。花村の周りに問題のある人間が多すぎて、悪いものを引き寄せているのでは?と本気で心配になってくる。さっさと厄祓いをしないと、もっと面倒なことに巻き込まれるのでは?と危惧していた。
「…もう行った。東京でもこっち戻ってからも。2回行ったから効果も2倍のはず」
対する花村は自信満々にドヤ顔で答えた。抜かりはなかったようで葉月が心配するまでもなかった。花村はボディバッグの中をゴソゴソと探り、何かを出してきた。それは厄除のお守りだった。
「一応、気休めに買ってみたんだ」
「身につけていた方が良いです。例の同期の人が怨念とか飛ばして来そうですし」
「…絶妙にあり得そうなこと言わないでくれ。本気でゾッとした」
俺ホラー得意じゃないんだよ、とぼやきながら顔が引き攣る。件の同期は花村に並々ならぬ感情を抱いている。本気になればすぐにバレる嘘で花村を陥れようとした。結果バレて、全てを失うことになったのに後悔していないと言い切ったという男。物理的に花村と距離が出来たとはいえ、安心して良いものか。
「性懲りも無く、優吾さんの前に顔を出したりしないですかね」
「大丈夫だと思う、そんな真似したら今度こそ訴えるって話になってるから。流石に人生棒に振るほど馬鹿じゃない…と信じたい」
花村の答えは歯切れが悪かった。その同期のことを信じられないのだろう、当たり前である。
「あいつらには散々な目に遭わされたから、もう2度と会いたくない。でも…ほんの1ミリだけ感謝してることがある」
「感謝?」
そんな要素、話を聞いた葉月の立場からして皆無だったが。首を傾げる葉月に花村はこともなげに言い放つ。
「こっちに戻るきっかけを作ったこと。あれがなかったらお盆に戻らなかったし、葉月とも会えなかった。こうして付き合えている奇跡をくれた。だから、その点だけは感謝してる」
勢いよく葉月の心臓の辺りに何かが刺さった。呻き声をあげ心臓を抑え、俯いた葉月に花村が焦りを見せる。
「え、何だ具合悪い!?」
「違います…ストレートに言われるとこう、ダメージが」
要領を得ない葉月の説明で大体のことを察したのだろう。顔を上げた葉月が見たのは口角を上げ、意地悪そうに微笑む花村だった。瞬時に何を企んでいるか悟った。
「何でそんな悪そうな顔するんですが!辞めてくださいね、心臓がもたない!」
完全に好きな子をいじめる小学生男子の顔をする花村に念入りに釘を刺したのだった。すると冗談だったらしく、悪い笑みを消してくれた。
「まあ1ミリだけで、絶対許さんていう気持ちの方が圧倒的に強いけどな」
「そりゃそうですよ。女性不信、人間不信になります」
葉月なら有給全部使って引き篭もり、後に転職する。実家に戻って親の店を手伝おうというバイタイリティはない。
「正直、多少はそういうところあったんだけどバーのオーナーや学生時代の友人に会って、話すうちに段々マシになっていった。女性不信はどうしようもないな、と思ってたんだが…葉月に出会って過ごすうちに全部拭き飛んだ。アイツらは特殊ケースだって割り切れるようになった、ありがとう」
「何もしてないのに、お礼を言われるの解せないですね…」
「そういうもの?今になって思うと、美味そうに食う葉月の笑顔に惚れたんだろうな…本当に可愛か…おいどうした、顔真っ赤だぞ?」
「だから、慣れてないんですよ!ストレートに言われるの」
「…てことは、例の元彼は気持ちを言葉で伝えることを怠ってたんだな」
キラーン、と花村の目が光る。
「まあ、そうですね。付き合いが長いですし、幼馴染の延長線上みたいなところはありました。好きとはそういうの言われたの、最後はいつだったかな…」
と呟くと、花村の中に元彼かつ幼馴染の奴に対する対抗心が芽生えたらしい。
「ふーん…よし、俺はちゃんと態度だけで無く言葉でも伝えていく。元々言葉足らずなせいで不安にさせて、ややこしくなったんだからな。うんそれが良い」
決意を新たにした花村はキリッとした表情で宣言する。彼なりに言葉足らずな自分を悔いているのが伝わって来た。だからこそ、葉月を不安にさせないためだということは理解出来る。出来るのだが葉月はこの顔面偏差値が高すぎる花村にストレートな言葉をぶつけられて、自分の心臓持つんだろうか…とほんの少しだけ不安に駆られた。しかし、同時に幸せな気持ちで満たされていた。
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