6 / 52
第一部 以仁王の挙兵
06 以仁王(もちひとおう)の令旨(りょうじ)
しおりを挟む
「大したことはござんせん、このあっし……新宮十郎こと源行家にも、宮さまのたくらみに、一枚噛ませてもらおうってね」
行家は熊野という独特の世界での権力闘争の間近にいて、その独特の嗅覚を養っていた。
その――争いのにおいを感じるという嗅覚を。
「宮さまは帝になりたい。あっしは源氏を盛り返して、その頭になりたい。お互い、やりたいことが似てますでしょ?」
行家の語りには、惹きつけられるものがあった。
何より、自分のやりたいことをまず一番に当ててくるところが、心憎い。
「よかろう」
以仁王は、寝所に行家を招いた。
行家は音もなく上がって来る。
このあたり、熊野で身につけた、何がしかの隠形の術かもしれない。
「まずは摂津源氏。この棟梁の源三位頼政を説く」
以仁王にはある考えがあった。
摂津に本拠を置く頼政が、なぜ清盛の平氏政権の中、生きながらえているのか。
従三位という、高位に昇らせたのか。
それについて考えがあり、頼政を動かすのは、まさにその考えであると確信があった。
「……そいつぁ、どんな考えで?」
「今はまだ言えぬ」
気づかれたら、それこそ素早く清盛は対策して来る。
今こうして、睦言を交わすように話している行家とのことも、どこぞで禿(清盛の間諜。肩まで切った髪(禿)の少年を用いたことから、こう言われた)が、聞き耳を立てているやもしれぬ。
「……ま、いいでさぁ」
行家にとっては、どちらかといえばあまり縁のない摂津源氏に対して、どうこういう思いはない。
思いは、河内源氏の係累にある。
行家の感じた、以仁王から漂うこのにおいが、河内源氏につながるような気がしてならないのだ。
「時に、行家」
「何でさぁ」
「そなた、本当に――各地の源氏を把握しておるのか」
「言われるまでも、ありやせん」
実は河内源氏だけでなく、甲斐源氏や近江源氏、美濃源氏にまで、行家は触手を伸ばしていた。
要は、摂津源氏のような内裏に出入りする源氏以外は、すべて手をつけていた。
「くすぶっている奴らほど、争いのにおいがする。つまりはそれだけ、暴れてくれますぜ、宮さま」
「そうか」
では使えるのうと以仁王はつぶやき、筆を執った。
「……これより、令旨を出す」
「令旨?」
「そう、令旨だ」
しかし令旨とは皇太子、あるいは親王の出すものである。
まだ王に過ぎない以仁王には、出せないものだ。
その程度の常識は、さすがの行家も持っていた。
「だからじゃ、行家」
以仁王はしたり顔をした。
彼は、令旨の発信者として「最勝親王」と記した。
勝手に、今作った称号の親王である。
「令旨の方が、格好がつく。皇太子の出したものなら――まあこれは親王だが――各地の源氏も、従おうというもの」
「はあ……」
「わからぬか」
以仁王は行家ににじり寄って、その手を握った。
これではまるで、口説かれているようだと行家は思った。
「各地の源氏も、いざという時に親王の出したものだから、と言い訳ができる。仮に平家に追い詰められたりした時に、の」
「あ」
親王という、次期帝位継承者候補者の命令なら、仕方ないだろうと従う口実にできる、と以仁王は言いたいのだ。
各地の源氏は平家に不満を持つ。
だから決起したいところだが、負けたあとが怖い。
そこへ令旨を与えてやれば、「自分は悪くない。親王の命令に従っただけ」と言い訳ができる。
行家は震えた。
この宮さまは、何ということを思いつくのだ。
「乗った。いや、乗らせてください、宮さま」
「やってくれるか」
「へい、持っていきましょう。説きましょう。その令旨の表の意味も……裏の意味も含めて」
源行家。
彼もまた、河内源氏の一族である。
後世から、扇動者としては最高の手腕を持つとされる男。
その男が、英邁なる王の命の下、全国へ令旨をもたらす。
そこから始まる大乱が、やがて時代を――歴史を変えるとは、つゆ知らずに。
*
新宮十郎こと源行家は、意気揚々と伊豆に現れた。
四月二十七日のことである。
行家は、むろん頼朝だけでなく、全国各地の源氏、あるいは反平家勢力の有力豪族などを訪れており──自らが隠れ住んでいたた熊野は真っ先に訪れたが──やはり河内源氏の嫡子である頼朝を押さえたいらしく、四月九日に京を発ったにしては、早い到着であった。
「頼朝どのはおられるか。あっしは……いや、それがしは、源十郎行家である。同じ河内源氏じゃ、頼朝どのの叔父である」
流人として生活している頼朝だが、当然ひとりで住んでいるわけではなく、身の回りを世話する者もいる。
その中で、安達盛長がまず行家の来意を受けた。
「茅屋でござるゆえ、失礼を承知で、外でお待ちいただけますか」
のちに鎌倉幕府の十三人の合議制の一員となるだけあって、盛長は勘が利いた。
「この方を、すぐに頼朝どのに会わせるのはまずい」
平治の乱により、河内源氏は滅んだと言っていい。さなくば、頼朝のように世の片隅に流人、罪人として生きる身だ。
そんな頼朝に、敢えて「河内源氏」だの「叔父」だの言って、会わせろと言う。
「これは何かある。絶対に何かある」
怪しい、とまでは言わなかったが、盛長は娘の亀を呼んで、自分は行家の相手をしているから、その間に頼朝に会って、行家にどう対応するか判断を仰げと言った。
亀は、その切れ長の目で山伏姿の行家をちらりと見た。
「……どうせなら、父上。そこのおっさんの持ち物を改めた方が、良くはないですか? とりあえず預かるとか言って」
「おい、お前」
盛長は娘の口を押さえた。
娘はその大きな手をはがして、さらに言いつのる。
「だって、頼朝さまの判断を仰ぎたいんでしょう? だったら、何を言いに来たか、あるいは持って来たか、確かめる方が良くないですか?」
「わかった、わかった」
盛長は動揺しながらも、娘の言うことに一理あると認めた。
ついこの間も、頼朝の父・義朝の髑髏を持参したという怪僧が現れたことだし、用心に如くはなし。
「じゃ、ちょっと待ってろ」
亀が十数える頃には、盛長は行家の行李を手に入れていた。
行家は、せっかくの伊豆で、まず湯を浴びて欲しいと言われると、一もにもなく同意を示し、盛長の指差す方へと向かっていった。
「……何ぞ、歓待でもあるのかと誤解しているようではあるが」
「勝手に誤解させておけばいいでしょう。やっぱり京畿の人間は軽薄ですね」
亀は遠慮なく行李の中身を地面にぶちまけた。
雑多な中でもひと目でわかる令旨の巻物を手にし、一気に広げる。
「こ、れは……」
「覚えました。頼朝どののところへ行ってきます」
おそらく頼朝は、また政子と会うために、伊豆山権現。
亀は、本当に京畿の人間は軽薄と毒づきながら、伊豆山へ向かった。
行家は熊野という独特の世界での権力闘争の間近にいて、その独特の嗅覚を養っていた。
その――争いのにおいを感じるという嗅覚を。
「宮さまは帝になりたい。あっしは源氏を盛り返して、その頭になりたい。お互い、やりたいことが似てますでしょ?」
行家の語りには、惹きつけられるものがあった。
何より、自分のやりたいことをまず一番に当ててくるところが、心憎い。
「よかろう」
以仁王は、寝所に行家を招いた。
行家は音もなく上がって来る。
このあたり、熊野で身につけた、何がしかの隠形の術かもしれない。
「まずは摂津源氏。この棟梁の源三位頼政を説く」
以仁王にはある考えがあった。
摂津に本拠を置く頼政が、なぜ清盛の平氏政権の中、生きながらえているのか。
従三位という、高位に昇らせたのか。
それについて考えがあり、頼政を動かすのは、まさにその考えであると確信があった。
「……そいつぁ、どんな考えで?」
「今はまだ言えぬ」
気づかれたら、それこそ素早く清盛は対策して来る。
今こうして、睦言を交わすように話している行家とのことも、どこぞで禿(清盛の間諜。肩まで切った髪(禿)の少年を用いたことから、こう言われた)が、聞き耳を立てているやもしれぬ。
「……ま、いいでさぁ」
行家にとっては、どちらかといえばあまり縁のない摂津源氏に対して、どうこういう思いはない。
思いは、河内源氏の係累にある。
行家の感じた、以仁王から漂うこのにおいが、河内源氏につながるような気がしてならないのだ。
「時に、行家」
「何でさぁ」
「そなた、本当に――各地の源氏を把握しておるのか」
「言われるまでも、ありやせん」
実は河内源氏だけでなく、甲斐源氏や近江源氏、美濃源氏にまで、行家は触手を伸ばしていた。
要は、摂津源氏のような内裏に出入りする源氏以外は、すべて手をつけていた。
「くすぶっている奴らほど、争いのにおいがする。つまりはそれだけ、暴れてくれますぜ、宮さま」
「そうか」
では使えるのうと以仁王はつぶやき、筆を執った。
「……これより、令旨を出す」
「令旨?」
「そう、令旨だ」
しかし令旨とは皇太子、あるいは親王の出すものである。
まだ王に過ぎない以仁王には、出せないものだ。
その程度の常識は、さすがの行家も持っていた。
「だからじゃ、行家」
以仁王はしたり顔をした。
彼は、令旨の発信者として「最勝親王」と記した。
勝手に、今作った称号の親王である。
「令旨の方が、格好がつく。皇太子の出したものなら――まあこれは親王だが――各地の源氏も、従おうというもの」
「はあ……」
「わからぬか」
以仁王は行家ににじり寄って、その手を握った。
これではまるで、口説かれているようだと行家は思った。
「各地の源氏も、いざという時に親王の出したものだから、と言い訳ができる。仮に平家に追い詰められたりした時に、の」
「あ」
親王という、次期帝位継承者候補者の命令なら、仕方ないだろうと従う口実にできる、と以仁王は言いたいのだ。
各地の源氏は平家に不満を持つ。
だから決起したいところだが、負けたあとが怖い。
そこへ令旨を与えてやれば、「自分は悪くない。親王の命令に従っただけ」と言い訳ができる。
行家は震えた。
この宮さまは、何ということを思いつくのだ。
「乗った。いや、乗らせてください、宮さま」
「やってくれるか」
「へい、持っていきましょう。説きましょう。その令旨の表の意味も……裏の意味も含めて」
源行家。
彼もまた、河内源氏の一族である。
後世から、扇動者としては最高の手腕を持つとされる男。
その男が、英邁なる王の命の下、全国へ令旨をもたらす。
そこから始まる大乱が、やがて時代を――歴史を変えるとは、つゆ知らずに。
*
新宮十郎こと源行家は、意気揚々と伊豆に現れた。
四月二十七日のことである。
行家は、むろん頼朝だけでなく、全国各地の源氏、あるいは反平家勢力の有力豪族などを訪れており──自らが隠れ住んでいたた熊野は真っ先に訪れたが──やはり河内源氏の嫡子である頼朝を押さえたいらしく、四月九日に京を発ったにしては、早い到着であった。
「頼朝どのはおられるか。あっしは……いや、それがしは、源十郎行家である。同じ河内源氏じゃ、頼朝どのの叔父である」
流人として生活している頼朝だが、当然ひとりで住んでいるわけではなく、身の回りを世話する者もいる。
その中で、安達盛長がまず行家の来意を受けた。
「茅屋でござるゆえ、失礼を承知で、外でお待ちいただけますか」
のちに鎌倉幕府の十三人の合議制の一員となるだけあって、盛長は勘が利いた。
「この方を、すぐに頼朝どのに会わせるのはまずい」
平治の乱により、河内源氏は滅んだと言っていい。さなくば、頼朝のように世の片隅に流人、罪人として生きる身だ。
そんな頼朝に、敢えて「河内源氏」だの「叔父」だの言って、会わせろと言う。
「これは何かある。絶対に何かある」
怪しい、とまでは言わなかったが、盛長は娘の亀を呼んで、自分は行家の相手をしているから、その間に頼朝に会って、行家にどう対応するか判断を仰げと言った。
亀は、その切れ長の目で山伏姿の行家をちらりと見た。
「……どうせなら、父上。そこのおっさんの持ち物を改めた方が、良くはないですか? とりあえず預かるとか言って」
「おい、お前」
盛長は娘の口を押さえた。
娘はその大きな手をはがして、さらに言いつのる。
「だって、頼朝さまの判断を仰ぎたいんでしょう? だったら、何を言いに来たか、あるいは持って来たか、確かめる方が良くないですか?」
「わかった、わかった」
盛長は動揺しながらも、娘の言うことに一理あると認めた。
ついこの間も、頼朝の父・義朝の髑髏を持参したという怪僧が現れたことだし、用心に如くはなし。
「じゃ、ちょっと待ってろ」
亀が十数える頃には、盛長は行家の行李を手に入れていた。
行家は、せっかくの伊豆で、まず湯を浴びて欲しいと言われると、一もにもなく同意を示し、盛長の指差す方へと向かっていった。
「……何ぞ、歓待でもあるのかと誤解しているようではあるが」
「勝手に誤解させておけばいいでしょう。やっぱり京畿の人間は軽薄ですね」
亀は遠慮なく行李の中身を地面にぶちまけた。
雑多な中でもひと目でわかる令旨の巻物を手にし、一気に広げる。
「こ、れは……」
「覚えました。頼朝どののところへ行ってきます」
おそらく頼朝は、また政子と会うために、伊豆山権現。
亀は、本当に京畿の人間は軽薄と毒づきながら、伊豆山へ向かった。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】『江戸めぐり ご馳走道中 ~お香と文吉の東海道味巡り~』
月影 朔
歴史・時代
読めばお腹が減る!食と人情の東海道味巡り、開幕!
自由を求め家を飛び出した、食い道楽で腕っぷし自慢の元武家娘・お香。
料理の知識は確かだが、とある事件で自信を失った気弱な元料理人・文吉。
正反対の二人が偶然出会い、共に旅を始めたのは、天下の街道・東海道!
行く先々の宿場町で二人が出会うのは、その土地ならではの絶品ご当地料理や豊かな食材、そして様々な悩みを抱えた人々。
料理を巡る親子喧嘩、失われた秘伝の味、食材に隠された秘密、旅人たちの些細な揉め事まで――
お香の持ち前の豪快な行動力と、文吉の豊富な食の知識、そして二人の「料理」の力が、人々の閉ざされた心を開き、事件を解決へと導いていきます。時にはお香の隠された剣の腕が炸裂することも…!?
読めば目の前に湯気立つ料理が見えるよう!
香りまで伝わるような鮮やかな料理描写、笑いと涙あふれる人情ドラマ、そして個性豊かなお香と文吉のやり取りに、ページをめくる手が止まらない!
旅の目的は美味しいものを食べること? それとも過去を乗り越えること?
二人の絆はどのように深まっていくのか。そして、それぞれが抱える過去の謎も、旅と共に少しずつ明らかになっていきます。
笑って泣けて、お腹が空く――新たな食時代劇ロードムービー、ここに開幕!
さあ、お香と文吉と一緒に、舌と腹で東海道五十三次を旅しましょう!
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
神典日月神示 真実の物語
蔵屋
歴史・時代
私は二人の方々の神憑りについて、今から25年前にその真実を知りました。
この方たちのお名前は
大本開祖•出口なお(でぐちなお)、
神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)です。
この日月神示(ひつきしんじ)または日尽神示(ひつくしんじ)は、神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)に「国常立尊(国之常立神)という高級神霊からの神示を自動書記によって記述したとされる書物のことです。
昭和19年から27年(昭和23・26年も無し)に一連の神示が降り、6年後の昭和33、34年に補巻とする1巻、さらに2年後に8巻の神示が降りたとされています。
その神示を纏めた書類です。
私はこの日月神示(ひつきしんじ)に出会い、研究し始めてもう25年になります。
日月神示が降ろされた場所は麻賀多神社(まかたじんじゃ)です。日月神示の最初の第一帖と第二帖は第二次世界大戦中の昭和19年6月10日に、この神社の社務所で岡本天明が神憑りに合い自動書記さされたのです。
殆どが漢数字、独特の記号、若干のかな文字が混じった文体で構成され、抽象的な絵のみで書記されている「巻」もあります。
本巻38巻と補巻1巻の計39巻が既に発表されているが、他にも、神霊より発表を禁じられている「巻」が13巻あり、天明はこの未発表のものについて昭和36年に「或る時期が来れば発表を許されるものか、許されないのか、現在の所では不明であります」と語っています。
日月神示は、その難解さから、書記した天明自身も当初は、ほとんど読むことが出来なかったが、仲間の神典研究家や霊能者達の協力などで少しずつ解読が進み、天明亡き後も妻である岡本三典(1917年〈大正6年〉11月9日 ~2009年〈平成21年〉6月23日)の努力により、現在では一部を除きかなりの部分が解読されたと言われているます。しかし、一方では神示の中に「この筆示は8通りに読めるのであるぞ」と書かれていることもあり、解読法の一つに成功したという認識が関係者の間では一般的です。
そのために、仮訳という副題を添えての発表もありました。
なお、原文を解読して漢字仮名交じり文に書き直されたものは、特に「ひふみ神示」または「一二三神示」と呼ばれています。
縄文人の祝詞に「ひふみ祝詞(のりと)」という祝詞の歌があります。
日月神示はその登場以来、関係者や一部専門家を除きほとんど知られていなかったが、1990年代の初め頃より神典研究家で翻訳家の中矢伸一の著作などにより広く一般にも知られるようになってきたと言われています。
この小説は真実の物語です。
「神典日月神示(しんてんひつきしんじ)真実の物語」
どうぞ、お楽しみ下さい。
『神知りて 人の幸せ 願うのみ
神のつたへし 愛善の道』
歌人 蔵屋日唱
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる