さらば俺の愛しき義弟(おとうと)

宮部ネコ

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第三章

31.凍える茄治(1)

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 茄治が来なくなって1週間。家に行くか行かないか。どうしようかずっと迷ってた。
 資格なんてないけど、茄治が心配だった。両親と喧嘩でもしたんじゃないかって。

 その日、家じゃなくて何故か店の前で待ってた。
「茄治?」
「家行ってもいい?」
 そんなこと聞く茄治はおかしい。
「いつから待ってた?」
「1時間くらい?」

 12月に入ってコート一つで待ってたなんて駄目だろ。
 茄治の体を抱きしめると、すごく冷たかった。
「兄さん?」
「風邪引く」

 ここまでされたら、帰れなんて言えない。
「家来いよ」
「帰れって言わないの?」
 俺は黙って家に引っ張ってった。
「風呂わかすから」
「うん」
 なんかちょっと様子が違うから、心配になった。
「何かあった?」
「あいつらお金持ってきた?」
「返したよ」
「それ聞いてうれしかった」
 そう言って茄治はキスをする。唇も冷たかった。

 俺の部屋に戻ったら、茄治が言い出す。
「親と喧嘩した」
「茄治」
「あいつら最低なんだ」
 茄治は苦虫をかみつぶしたような表情をした。
「金もらってたんだよ」
「金?」
 もしかして母さんが言ってた通帳のことかと思ったけど、違った。
「養子取ると手当もらえるんだ。それで兄さんを引き取ったんだ」
「へえ」
 何とも思わなかったけど。
「どうでもよさそう」
「だって、そんなもんだと思ったし」
 それに一番は茄治に会えたから。
「それで喧嘩したの?」
「兄さんに会うなって言われたから」
「俺にも返してって言ってきたけど」
 茄治の母親の泣き顔がちらつく。

「兄さん」
「俺のもんじゃないのに」
「兄さんのものにして欲しい」
「駄目だって」
「ここに住みたい」
 そういうわけにはいかないだろ。そう思うのに、言えない。俺もそうして欲しかったから。
「学校行きたくない」
「茄治」
「高校出たら働こうかな」
 そんなこと安易に決めたら駄目だろ。
「もうちょっと考えろって」
「何でそういうこと言うの?」
「茄治は俺とは違うんだよ」
「違わないよ」
「勉強できるし、スポーツだって」
「この程度いくらでもいるって」
「茄治!」
 そんなことない。

「ここに来るの迷惑?」
「違うって」
 これ以上茄治を振り回したらいけないんだ。
「兄さん」
 どうすればいいのか、ずっと考えてた。
「とにかく風呂入れって」
「うん」
 俺も一緒にって言われたけど、戸惑う。
 茄治を家に帰さなきゃいけない。でも、それで本当にいいのか?
 ここまでして待ってたのに。

「もうちょっとしたら入るから、先入ってて」
 ととりあえず言った。
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