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手紙を書きます!
しおりを挟む婚約者候補になったと言われた次の日目を覚ますと……
シャッとカーテンが開かれ、朝の日差しを浴びる。
「ま、眩しい……」
もうこんなに陽が高いとは……昨日眠る前にフレデリック殿下の事を考えていると寝つきが悪くて……
嫌がっている私によく分からない虫を押し付けてきてニヤリと笑った顔
……無理だわ。
嫌がる私に木登りを強要してニヤリと笑った顔
……鳥肌が立つわ。
木登りの後、怖くて降りられなくてフレデリック殿下の護衛の方に助けてもらったわね。ドレスが枝に引っかかり破れて散々両親に怒られた。
……罰として3日間部屋から出してもらえなかったのよね。
その間お兄様がこっそり会いにきてくれたのだけが救いだったわ……。
「おはようございます。いつもよりもゆっくりとお休みになられたのですね」
体を起こさずにいると侍女のマリーが不審な顔を向けてきた。
「もしかして頭が痛いかもしれないわ」
頭を押さえて言ってみた。
「まぁ! それは大変ですわ。お医者様をお呼びしないとっ!」
大袈裟な事は遠慮したい。そうではないのよマリー!
「いえ。横になっておとなしくしていれば良くなると思うの」
頭を押さえながら、はぁっと一息つく
「お嬢様がおとなしく横にですか! 重症ではありませんか! これはお医者様では治りません! 祈祷師を呼んで、」
とっても大袈裟! やめて!
「だ、だからねそこまでではないの。頭が痛い様な気が……っ起きるわよ!」
視線が痛い……仮病がバレている。何を言っても無駄。とマリーの顔に書いてある様な気もする。
「早く顔を洗ってきてください! ドレス選びをしなくてはなりませんからね。旦那様には引き摺ってでも連れてくる様にと言われておりますから。頭痛がするだなんて嘘をついても無駄ですよ! お嬢様は健康が取り柄なんですから」
そう。私は健康なのだ。
昔フレデリック殿下との池遊びで二人でボートから落ちた時もフレデリック殿下は風邪をひいて高熱を出した様だけれど、私はと言えばピンピンしていた……見た目は儚げなんて言われる事もあるけれど至って健康。両親に感謝ね。
顔を洗うとサッパリしたわ。頭もスッキリしたわ。
「朝ごはんは、」
「もう皆さんお済みですよ! お嬢様は朝食の時間に間に合わなかったという事で、ランチまで我慢してください」
にこりとマリーが笑う。
「えぇ! そんなぁぁ」
「ちなみに本日の朝食はお嬢様の大好きなクロワッサンとフルーツヨーグルトがありました。お嬢様が殿下の婚約者候補に挙がったことで旦那様がシェフに好きなものを用意する様にと指示していました」
クロワッサン……バターたっぷりのシェフの自慢のクロワッサン。食べ過ぎて体重が増加してしまうほどの魅力的なクロワッサンなのに……。がくりと肩を落とす。
「シルヴァン様がランチはナッツクリームのパンケーキを出すようにシェフに指示していましたよ。お優しいですね」
ナッツクリームのパンケーキ! 食べ過ぎてニキビが出てしまった魅惑的なあのパンケーキ!
しばらく禁止になっていたのよね。やっと解禁になったなんて!
「ドレスでもなんでも選ぶわ! そもそも私なんか選ばれないわよ。嫌われているんだから、その場で退場もあり得るわよ!」
そうよ、そうよね! さらに嫌われる様になれば良いんじゃない?!
「マデリーン侯爵令嬢に手紙を書くわ! 出してくれる?」
そう言ってレターセットを取り出した!
【マデリーンへ】
この度は私たちもフレデリック殿下の婚約者候補に名前が挙がったみたいね。お父様に聞きました。
でも生憎様! 私はフレデリック殿下と婚約をしたくないので、マデリーンが殿下と婚約をしたいと言うのなら、全力で応援するわね!
【リリアンより】
これでヨシ! マデリーンは同じ歳なのに大人っぽくて落ち着いていて美人! 言いたい事ははっきりと言うからキツく思われるけれど優しいもの。竹を割ったような性格? 殿下の相手となるとこう言った女性が好かれるわよね!
着替えを手伝ってもらって、ランチを取るために食堂へ向かおうとすると、
「本日はとても心地が良い日差しですので中庭にご用意してあります。シルヴァン様と奥様がお待ちですよ」
「それは早く行かなくちゃ!」
中庭へ行くとお母様とシルヴァン兄様がお茶を飲んでいた。
「お待たせ致しました」
「あら、リリー今日はお寝坊だったのね。珍しいわ」
「まさか調子が悪いとか? はないだろうな」
失礼ね! 兄様は!
「昨日フレデリック殿下の話を聞かされて中々寝付けなかったんです!」
「リリーは殿下と仲が良かったものね」
「え?! お母様ってば何を勘違いしていらっしゃるの? 私が思い出す殿下の顔といえば……」
フレデリック殿下は漆黒で艶やかな黒髪に血の様に赤い瞳を持つ整った顔だち。そして悪戯っ子のようににやっと笑う顔をまた思い出し、悪寒が走った……。
「仲良かったと言うか、いじられていたと言うか……だね」
苦笑いの兄様! いじられていたって聞くと余計に嫌な思い出になったわ!
パンケーキを思う存分堪能してから、ドレス選びだ……
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