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フレデリック・ル・クレマン
しおりを挟む「初めてお目にかかります。マデリーン・カサールと申します」
淑女の礼をするカサール侯爵令嬢。芯がしっかりしていそうな美しい令嬢だ。
「顔を上げて。今日はわざわざ来てもらって悪かったね」
「いいえ。とんでもございません。殿下とお会い出来るのを楽しみにして参りましたわ」
くすりと笑うカサール侯爵令嬢。
「楽しそうだけど、私はまだ何もしていないよ」
足を組んでメイドが出してくれた茶に口をつけた。
「わたくしサレット侯爵令嬢の親友ですの。それで彼女から殿下のお話を少しお聞きしていたものですから……」
「リリーの親友?! そうなのか! リリーは私のことをなんて言っていた?」
前のめりになってしまった。こほん。と咳払いをし落ち着いた。まずい! 急にリリーの名前が出てきたから焦った。
「リリーは殿下のことを意地悪な人。と言っていましたわ。殿下はリリーに何をされたんですの?」
「……へ? 意地悪?」
「わたくしが思うにまだ幼かった殿下は好きな子に意地悪をしちゃったのではないかと思っていますの。合っていますか?」
「な、なんのことかなぁ……」
やばい! 変な汗が出てきてしまったではないか!
「リリーは殿下との事をいい思い出になっていませんわよ」
「嘘だろう……はぁ。君に嘘をついても仕方がないから正直に言おう。私は昔からリリーが好きなんだ。婚約者にリリーを望んでいる事を両親に伝えたら、まだ早すぎると言われた。家柄的には問題はないし反対されなかったが、お互いの気持ちが大事だと。それに私もまだ子供で世間知らずだったから世の中を見る事も大事だと言われたよ。国のためにも自分のためにも他所を見る事が必要だった。もしかしたらリリーへの気持ちは、一時の物かもしれない。もしそうだったら不幸にしてしまうかもしれない。と考えた。まさか嫌われてはいないよな?」
「どうでしょうか? 何か思い当たることでもおありなんですか?」
「……リリーの泣き顔が好きなんだ」
「泣き顔が……ですか」
「泣きながら私を追ってくるリリーが可愛くて。それに儚げな見た目とはうらはらに健康なところとか」
「結局世の中を見てきた結果リリーが好きだと言う気持ちは変わらなかった。と言うことでよろしいですか?」
呆れられたのか結論を導かれた。さっぱりした性格の令嬢だ。
こう言う子がリリーの友達だと思うと心強くて安心する。
「そうだよ。君は結ばれたい相手がいるのだろう?」
「まぁ! ご存知でしたの?」
「少し問題があって中々婚約が出来ないのだろう? 向こうの国のことには口出し出来ないが、君の婚約に関しては口添えするよ。婚約者候補になったと言うことは自分で言うのもなんだが光栄なことで、次の婚約に有利になるだろう」
「もしかして他の令嬢が選ばれたのって、」
「東のミロー伯爵は最近事業が軌道に乗ってきて、王都周辺の貴族と縁を繋ぎたいと伯爵が言っていた。私の婚約者候補になったら縁を繋ぎたい貴族はいるからね、ミロー伯爵の事業は今後国の為にもなるだろうし、いい話だったんだ。西のジャド伯爵は質実剛健ではあるが財布の紐がきつすぎて、嫁に出すと金がかかると言って伯爵が中々縁談に乗り気でないことから、このままでは妹が売れ残りになる! とジャド伯爵の子息に相談されたんだ。先ほどの話と一緒で私の婚約者候補に選ばれたら良縁に恵まれるだろう」
「当て馬ですのね。わたくし達は」
「すまなかった」
頭を下げて謝罪した。
「まぁ! 頭を上げてください。困りますわ! 話は分かりましたわ。素直に話をしてくださってありがとうございました。お父様も早く言ってくだされば良かったのに!」
「ありがとう。カサール侯爵令嬢は話がわかる人だね」
こんな話を聞かされて怒るかと思いきや、喜ばれてしまった。
「わたくしも聞きたいことがあります。よろしいですか?」
「もちろん。なんでも聞いてくれ!」
「リリーは幼い頃から子息との出会いがないと言っていましたが、殿下! もしかして……」
あっ……! これはサレット公爵家しか知らないんだが。
「そうだよっ! 他の子息に興味が湧かないようにお願いしてあったんだ。こんなことを聞いて引いたかい?」
「そんなにリリーが気になるのならば、まず誤解を解いた方がいいと思いますわ。応援しますよ」
「ありがとう、カサール侯爵令嬢」
次は伯爵家の令嬢達か。カサール侯爵令嬢がリリーの友達で良かった! それにしても誤解とはなんだろうか……
宝物のクワガタをあげた時は泣いて喜んでいたよな?
王都が見渡せる木の上からの風景は私の好きな場所だったし、感動して泣いていたよな?
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