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婚約パーティー前夜です2
しおりを挟む「そちらの方がフレデリック様の婚約者ですか?」
チラリと一瞥する王女。
「えぇ。私の婚約者でリリアン嬢ですよ」
殿下が私を見て微笑んだので、挨拶をする。
「王女殿下にはじめてお目にかかります。サレット侯爵が娘リリアンと申します」
妖艶美女に微笑みかけながら挨拶をする。出会った時は最初の5秒で印象が決まるとか聞くものね!
「へーー。あなたがフレデリック様の、」
『お子様じゃない』
むかっ! お子様でわるうございました! お子様のところだけボソッて言った。でも笑顔のままよ! ここで相手になってはいけないわね。なんせ王女様だもの。
「リリはまだ16歳だからこれからですよ。飲み込みも早いし、伸び代がある。それに可愛くて私にはもったいない伴侶となるでしょう」
「あら? わたくしが年増だと仰りたいの?」
「はははっ。まさか! クラウディア王女は17歳ではないですか」
え! 17歳?! 大人っぽすぎる! 私と1つしか変わらない。あと1年で色気とか備わる気が全くしないんだけど……
「まだ遅くはなくてよ。わたくしを選んでもよろしいのよ?」
しなっとフレデリックに寄りかかる王女に笑顔のままそっと離れたフレデリック。
「またまた、クラウディア王女は冗談が過ぎますよ。リリが本気にしたらどうするんですか? 私は彼女を失いたくありませんからね。冗談はほどほどにしてください。まだ挨拶がありますから失礼します。それではまた」
「殿下、あの方が噂の……」
「あぁ……そうだよ。まさか彼女が来るとは思わなかった」
「すごく美しい方でしたね。気品もあって! 妖艶で」
「うーーん。外見で言うならリリの方が好みだよ。それに王女といても肩が凝る。リリといた方が癒されるし、リリが楽しそうだと私も自然と嬉しくなる。王女のことは正直言って苦手なんだ。リリはこの気持ち分からない?」
殿下の事、苦手だったから? 意地悪でもされたのかしら?
「何かされたんですか?」
こてんと首を傾げた。
「寝所に入られた……襲われそうになったんだ」
へーー。寝所に……
「離れてください! 不潔です」
王女とそんな関係に! やだ。聞きたくなかった
「まだ、間に合います。明日の婚約相手は王女様に変更、」
「待って! そうじゃない。襲われそうになった事なきを得たよ……相手が相手だから、武力で抵抗できないし話をして分かってもらえたんだ! 私にはリリと言う想い人がいるのにそんなことしないよ……」
疑惑の目を向けると
「信じられない?」
捨て犬のような目で見てきた。可哀想になった。
「そう言うわけではないですよ」
「リリには変に誤解されたくないから言ったんだ。ぐいぐいこられても困る……ってごめん。人の事言えなかったね」
理解してもらえたみたい。うんうんと頷く
「そうか……王家と言う権力を使いセクハラとなってしまっているのか……反省しなきゃいけない。エスコートする際にリリに触れることは許してほしい」
「えぇ。許します」
「ありがとう。まだ挨拶をしなくてはいけないから行こうか?」
と言われて腕を出されたので腕を組んだ。腰を抱かれたり肩を抱かれるよりはこれくらいの距離感がちょうど良い。
それから他国の招待客の人達に挨拶をした。殿下は仕事の時の顔というものがあるみたい。とても礼儀正しくて、挨拶する人皆んなが殿下に対して好意的だ。
招待客の名前だとか役職だとかは事前に覚えるようにいわれていたけれど、王女様のお名前はなかったのに……
休憩しようとお茶を飲みに行く時に疑問点を聞いた。
「ねぇねぇ、殿下」
腕を揺すってみた。
「なに?」
「招待客のリストに王女殿下のお名前はありませんでしたよね?」
「なかったね……思うに無理やりついて来たんだと思う。王女が来たのに帰れとは言えないよね……」
なるほど! 王女は殿下の婚約者になった私を見に来たかったと言うわけね。
それにしても殿下ってあんな美しい王女様からのお誘いを断るなんて、目が悪いとか? 私は決して醜いわけではないけれど、色気もないし普通の貴族の令嬢なのに。
一応侯爵家の娘だけれど、王女と言う身分には敵わないのに。殿下はお父様が言うように変わった趣味をお持ちなのかもしれない。
……審美眼が狂っているのね。
「……殿下、可哀想に……少しばかり目がおかしいのでしょうか? もっとまわりを見れば美しい人はたくさんおられますのに……」
「……なんの話?」
「私は単なる普通の令嬢ですよ。王女様はあんなに美しい方なのに、もっと見る目を養って、」
「おかしいのはリリの方だよ? 私はリリがいいと言っているのに……リリは可愛い上にフッとした瞬間に美しい淑女になるんだ。たまにおかしな事をし出す時もあるけれど、それも魅力的だよ。ずっと一緒にいたいと思うのはリリだけ」
「やはり殿下は変ですね」
「……リリがそう思うのならそれでも良いよ」
苦笑するフレデリックと真顔のリリアンは側から見ると仲睦まじそうで、微笑ましく思われているようだった。
ただ一部を除いて。
******
「ムカつくわね、あのお子様。わたくしのフレデリック様といちゃいちゃして!」
ごくごくとワインを飲み干す王女
「あのお子様が一人になった時に、攫って連れてって良いわよ」
「よろしいのですか?!」
「まさか貴方があのお子様を気に入っているとは思わなかったわ」
「リリアン嬢が入学した時に一目惚れしました。話しかけたくても話しかけられなくて……でも、ある日笑顔で挨拶をしてくれたんですよ。目があった時に時が止まったような感覚に襲われました……」
「あら、そう。貴方みたいな人もあのお子様が好みなの? まぁ可愛らしい顔立ちだけど、普通じゃない?」
「いえ! リリアン嬢は美しく咲く一輪のバラのような令嬢です。私がリリアン嬢を匿って大事に大事に折れないように愛でていきたいと思います……」
「へぇ……良いんじゃない? 屋敷の部屋の一角に匿って二度と出られないようにしといてくれたら助かるわね」
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