侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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パーティー前夜

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 今日は王宮でお泊まりだ。晩餐は殿下と取る予定だけど、私は少し時間があいたから用意されている部屋で休もう!

 今日はいつも以上に王宮はバタバタとしていた。明日の準備のためだろう。 


「ここの道突っ切ったら近道になるんだったわよね?」

 侍女のマリーに聞いてみた。マリーは既にこの広い王宮の詳細を把握している! ちょっとした庭になっていて、ショートカットと言った感じ。

 因みに私は方向音痴! 建物の中だと余計に方向感覚が分からなくなる。


「はい。でも今日は道もぬかるんでいますから、オススメしません。建物の中を通って行きましょう。薄暗くなって来ていますし、躓いても困りますよ」

 昨日の雨でぬかるみがある。ここは影になっているから乾かなかったのね。マリーの顔を見ようと思って振り向いた。

「そうね、マリーの言った通りに、あれマリー? どこー?」

 今まで居たのにっ!




「きゃっ」



 あ、あれ? 暗い。

 何か被せられて……何、この匂い


 ……頭が痛くなって来てふわぁって……




******



「おい、早く行くぞ!」

「まて! この女はどうする?」

「使用人か……中々綺麗な顔をしているから売れそうだけど、置いていく! それは契約外だからな。連れて行く事は出来ない。そこの中庭の植木の影にでも隠しておけ」

「了解!」


「さてお姫様ドライブとしましょうか?」


 中庭を抜けると塀がある。男達は、トンッ、トンッ、トンっとリリアンを抱えながらも身軽に塀を乗り越える。王宮出口に待たせてあった荷馬車と合流した。


「ここからが問題だな……他国からの要人が多いから、護衛の数も多いなぁ」

「荷物に紛れるしかないよな。入るより出て行く方がまだ楽だろ?」

「それは荷物がない場合だ」


「行くか!」

 男達は会話をしながらもリリアンを麻袋のような物に入れて、袋の口を閉めた。



 リリアンが入れられた同じ麻袋には偽装のための小麦や豆が入れられている。


「念のために一番奥に置こう」

 男達は御者席に座り馬を引いた。もうすぐで王宮の出口だ。チェックされることになる。

 守衛に荷馬車を止められ、素直に応える。


「こんな時間に出て行くのか? もうすぐ暗くなるぞ」

「へぇ。急ぎで中の荷物を届けなきゃならなくて……お貴族様に急げと言われたらこっちは従うしかねぇんです。今後の取引にも影響しますんでな」

 男は平然とした態度で答えた。

「そうか。馬車の中を確認する。荷物を見せてくれ」

「あぁ、勿論です」

 中を確認する守衛をドキドキしながら見守る。

「ん? あの袋だけやけに丸みを帯びてないか?」

 やばい! と思い守衛から見えないように紐を解くフリをして近くにあったカボチャを出した。


「これですね」

「あぁ、大きなカボチャだな」

 リリアンの頭の大きさほどのカボチャだ。

「このカボチャは味がしないんで、中々取引が難しいんですわ。最終的には家畜の餌にしやす」

「大変だな。商売ってやつは」

 守衛はそう言って荷馬車の幌を下ろした。

「まぁ、それも楽しみってやつです。あっそうだ、ダンナ!」

「なんだ?」

 馬車から離れた守衛に声をかけた。

「この酒どうだい? 第一王子の祝いがあるんだろ? あんたも一杯やんなよ!」


 ワインのボトルを渡す男。

「良いのか!」


「あぁ! 俺たちもこの配達が済んだらこのワインで乾杯する予定だ! めでてぇ事だからな!」

 酒を渡しとけば怪しまれないだろ! 

「おぅ。悪いな、商売が上手く行くと良いな、暗くなる前に出た方が良い」

 酒を渡され上機嫌の守衛にニヤリと笑みを漏らす。

「ありがとよ、それじゃあな」

 御者席に戻り馬を走らせた。


「焦ったな……まさか頭の丸みに気づくとは……カボチャを用意してあって良かったぜ!」

「無駄口叩く暇があったらいくぞ。とっとと金をもらって乾杯しようぜ」


 ゴトゴトと荷馬車を走らせる2人。そして着いた先は貴族の屋敷が建ち並ぶ一角。


 キョロキョロと辺りを見渡し裏口が開けられた。


「遅かったな、失敗したのかとイライラしていたところだ」

 この屋敷の当主が出てきた。まだ若そうな男だ。

「彼女はどこに?」

「こちらです」

 麻袋を抱えて当主の前に置き、袋の紐を開けた


「雑な扱いはよせ!」


 ぐったりするリリアンを見て当主は男達に怒鳴りつける。


「苦労したんですよ! それはお許しください」


 簡単に連れ出したようだが、警備が厳しく中々近寄れないでいた所、侍女とたまたま2人になったところを攫ってきた。


 リリアンが部屋に戻ってしまったら、この計画は終わる。リリアンの部屋は王妃の住居ゾーンだ。王宮で厳重に警備されている場所だ。

「まぁ連れてきた事は褒めてやろう。ほらこれは褒美だ」

 チャリンと袋に入れられた額を確認する男たち。金貨が思った以上に入っている。

「これは! こんなに良いんですか!」

「口止め量だ。また何かあったら頼むかもしれない」

 当主はそう言って男達を屋敷から出した。






「旦那様、あの男達をどうしますか?」

「貴族街から出たら始末してくれ。それと彼女の身分がメイド達にバレないようにしておけ」

「はい。畏まりました」


「リリアン、部屋に行こう」

 リリアンを抱いて部屋と呼ばれた一角に向かう当主。

 部屋に入り、リリアンをベッドに寝かせた。

「あいつらが雑に扱うからドレスが汚れているじゃないか! まぁこんなドレスより僕が君のために用意したドレスを着せてあげよう」

 すべすべの陶器のような肌。小さなピンク色の唇。閉じられた目をふちどるまつ毛は長くて、寝顔も美しい。


「早く目が覚めて私の名前を呼んでくれリリアン」


 閉じている目元にキスを落とす。

「意識のないリリアンに危害を加えたくないから、目が開くまでは寝顔だけを見ているよ」



 新入生に可愛い子は居るかなと、学友と話をしていた。いつの時代も話題は異性の話で盛り上がる。

 その時に入学式でリリアンを見た。




 学園に入学するまで、リリアンの姿を見た男達がいない。侯爵家の箱入り娘と噂をされていた令嬢がそこにいた。

 高位貴族らしく気品があり美しい姿は男達を魅了して止まなかった。

 皆がお近づきになりたいと願っていたが、彼女に近づく事は出来なかった。周りの目があるから。紹介がないと話しかける事は出来ない。それがルールだ。


 ある日公爵家の嫡男キリアンが親しげにリリアンと話している姿を見た。どこで知り合ったんだ! 嫉妬する心を落ち着かせて、キリアンに朝の挨拶をした。するとリリアンも笑顔で挨拶を返してくれたではないか!

 これは……私の存在を知ってくれていたに違いないと思った。


 それから数回挨拶を交わした。しかしいつも一緒にいるカサール侯爵令嬢が邪魔だった。

 話しかけたくても話しかけられなかった。せっかくリリアンと知り合いになれたのに!


 それにリリアンは第一王子の婚約者候補にされて、挙句の果てに婚約発表? 嘘だろ!

 美しいリリアンと無理やり婚姻を結ぶ気だ。そう思った。しかも公衆の面前でリリアンの唇を奪うような真似までする卑怯な王子の妃なんかにさせてたまるか!

   

 我が国の王女がこの国の第一王子を好んでいると聞いている。王女と王子が結ばれてくれれば国としても祝福されるべきだろう? それならリリアンは私が貰おう。

 王女とは顔見知りだから密かに手紙を忍ばせ王女に届けさせた。

 するといい返事が返ってきた。それならば実行に移るしかない。


 そして手に入ったんだ。





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