侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

文字の大きさ
42 / 65

パーティー前夜2

しおりを挟む

「フレデリック殿下宜しいでしょうか?」

 来客と雑談をしていたら私の執事が少し髪を乱してそっと耳打ちをしてきた。

 珍しいこともあるもんだ。来客の前では隙を見せないような男なのに。何かあったのか?



「あぁ、もちろん。それではみなさん失礼します。楽しんでくださいね」

 来客に一言声をかけるとグラスを掲げられた。そろそろリリアンを呼びに行こうかと思っていた所だった。



「どうした? 髪の毛を乱して」

 扉を閉めて、執事にそういうと

「お見苦しいところをお見せいたしました。しかしここでは話せません。王妃様がお待ちです」


 これは何かある! 急いで母の部屋へ行く。するとリリアンの兄も呼び出されているようだった。

「お待たせしました。シルヴァン殿も? どうされました?」

 みんな顔色が良くないようだ。


「リリーちゃんが攫われたわ!」


 リリが攫われる? なんの話をしているんだろうか……


「リリはどこですか! 部屋へ行くと言って侍女を伴って……王宮内はたくさんの護衛が配備されているでしょう!」

 焦る気持ちでリリの行動を振り返った。


「妹の侍女マリーは庭で見つかりました。意識がない事から何か薬品を嗅がされたようです。口元からそう言った臭いがしています。そして最低2人の足跡が残っていることから部屋へ行くまでの中庭で攫われたと調査しています。壁にも足跡が残っていて足跡を辿っていくと裏口から出て行った形跡がありました! 守衛に怪しい男達は居なかったと聞きましたが、ワインをくれた太っ腹な男2人がいたと言う事です。その男達は貴族の家に取引に行くと言っていて、今から二時間前の事です。この男達が何かを知っていると踏んでいます」


「それなら! 今すぐ行きましょう!」

 貴族街なら馬を走らせれば直ぐそこだ!


「なりません! なんの手掛かりもないのに闇雲に行ってどうするんですか! 一軒一軒回ってみるつもりですか!」

 母に止められるもの、気持ちは焦る一方だ。


「今、貴族街を中心に守衛から聞いた荷馬車の特徴を元に調べさせています。王宮騎士団を動かし最小限での行動になっております」


「……リリが攫われたと知られたら有る事無い事リリが噂をされてしまう」

 くそっ! と机を叩く。

「取り敢えず貴族街にある我が侯爵家が経営している店があるのでそちらに向かいます。早く妹を救出したいので、近くに居た方が良いと思います」

 シルヴァンも焦っているようだった。

「助かります」



 リリに渡した指輪は私の指輪と対になっている。リリの身に何かあれば指輪は激しく光るように設定されている。

 明日の婚約発表後に伝えるはずであったが、早くに言っておくべきだった。


 何か危険があったら指輪自体に傷をつける事。本人以外が指輪を外しても同様だ。


 動きやすい格好に着替え、秘密の通路から貴族街へ出ることにした。時間が勿体無いのでシルヴァン達は先に行っている。


「リリ! 無事でいてくれよ」


 忘れ物を思い出し執務室へ行った。時間のロスだ……急いで廊下を歩いていると、王女と会った。


「あら? フレデリック様お出かけですか?」

 嫌な笑い方だ。



「えぇ。少し夜風にあたりに行ってきます」


 早く去ってくれ! 時間の無駄だと適当にあしらうつもりだった。


「明日は無事にパーティーが開催されるとよろしいですわねぇ。まだわたくしがパートナーでも間に合いますわよ? それじゃぁまた明日。ごきげんよう」

 オホホホホ……


「……王女を見張れ、何か知っているかもしれん」

「御意」

 執事が別のものに指示を与えた。


「いくぞ」


******



「……ん、んんっ」

 体が重い……それに頭がガンガンする。ここはベッド? 私寝ていたの?


 うっすらと目を開けて天井を見ると、知らない天井だった。

「……っどこ?」


「ふふっ。目が覚めたみたいだね?」


「……あなたは……どなた?」


 ブラウンの髪色に同じブラウンの瞳は切長で、知り合いではなさそうだった。


「やだな……リリアン! 寝惚けているの? 私の事が分からないなんて! それともまだ薬が残ってぼんやりしているのかもしれないね!」


「薬?」

 ……そうだ!王宮で……マリーと歩いていてマリーがいなくなって


「ちょっとの間眠って貰ったんだ、暴力など 加えていないよ」

 起きあがろうとして、身体を起こすとふらっとした

「あっ……」

 頭がくらくらする。薬のせいなのかしら……キョロキョロと見渡すけれど、ここがどこだか分からない

「まだ本調子ではないのだから、寝ていた方が良い」

 男はリリアンの身体に触れようとしてきた。


「いやっ!」

 と言って手を叩いた


「どうしたの? 優しい君が暴力を働くなんて、困ったね。まぁいいか……少しずつ私の事を思い出すといい」



「あなた誰よ! あなたなんて知らないわ。マリーはどこにいるのっ!」


 だれ! だれ! 誰よっ! 思い出せない! 私の異性の友達なんてキリアン様しかいないものっ。一緒にいたマリーはどこ?!




「君に似合うドレスを用意してある。私が着せてあげたいが、レディのドレスは複雑だ」


 ドレスに泥が付いていたり所々破れている。繊細な素材だからちょっとのことで破れてしまう。でも着替えたいけれど、なんだかこの人薄気味悪い……

 パンパンと手を叩くとメイド2人がやってきて、男は立ち上がった。

「このドレスを着せてくれ」

 用意されていたのはピンクと白の可愛らしいデザインのドレスだった。


「「はい」」


 そう言って男は出て行った。

「……あのここはどこですか? それにあの方は誰?」

 答えてもらえないだろうけれどメイドらしき人に聞いてみた。国内にいるのよね? 窓を見ると夜である事は確かだった。


「お答えできません」


 やっぱり……目も合わせてくれないし、淡々と用意されたドレスに着せ替えられた。上質な素材、丁寧な縫製……こんなドレスを用意できるのは貴族で間違いはなさそうね。

 部屋の調度品も高級な物ばかり。


「準備ができました」

 1人のメイドが扉の外で待っていた男に声を掛けた。

 かちゃりと扉を開けてこちらに向かってきた。


「思った通りとても似合うよ! まるでビスクドールのようだ!」

 うっとりしながらリリアンの周りを彷徨く男。


 ……異常だ。


 ビスクドールと言うか、幼い頃に着ていたような……フリフリで膝丈。ヘッドドレスも忘れずにって。気持ち悪いぃ


 こ、この人、いい年してお人形さんで遊びたいとか……なんだかもう嫌な予感しかしないから!

 逃げても良いよね? とにかく外に出なきゃ!

 扉に向かって後退りした。


「どこにいくつもり? 逃げられるわけないでしょう? ドールは大人しく愛でられていれば良いんだ」


 腕を掴まれて嫌悪感しか湧かない! なんだか目付きもおかしい!

「何? この指輪」


 フレデリック殿下からデビューの日にプレゼントされた指輪だった。つけてて欲しいと言われて、付けている指輪だった。


 無理やり外され指輪を乱暴になげられた。

 その時だった。



「きゃぁぁっ」




 急に指輪が光り出した! 眩しい!









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?

鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。 楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。  皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!  ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。  聖女はあちらでしてよ!皆様!

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます

れもんぴーる
恋愛
シャリエ子爵家には昔、行方不明になった娘アナベルがいた。十三年ぶりに戻って来たアナベルに、セシルは姉が出来たと喜んだ。だが―――アナベルはセシルを陥れようと画策する。婚約者はアナベルと婚約を結びなおし、両親や兄にも虐げられたセシルだったが、この世界はゲームの世界であることを思い出す。セシルの冤罪は証明され、家を出ようとするが父と兄から必死で引き留められる。それならばと、セシルは家を出て行かない代わりに、「娘」を演じる報酬を要求するのだった。数年後、資金が溜まり家を出て自らの手で幸せを掴もうとしているセシルと新しくできた婚約者マルクの前に再びアナベルは現れる。マルクはアナベルの魔の手から逃れられるのか? セシルはアナベルの悪意から逃げきれ幸せになれるのか?(なります (≧▽≦)) *ゲームを題材にしたの初めてですが、あんまりその要素は強くないかも(;'∀')。あと、少しですが不自然にコメディタッチが出てきます。作者がシリアスだけだと耐えれないので、精神安定の為に放り込む場合がありますm(__)m。 *他サイトにも投稿していく予定です。(カクヨム、なろう)

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...