侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

文字の大きさ
43 / 65

光る指輪

しおりを挟む

「何か他に手がかりはないのかっ!」

 貴族街の一店舗でフレデリックが聞くと、捜索隊の1人が走りながら店へと入ってきた。


「貴族街の外れに荷馬車が乗り捨てられていました! 守衛から聞いた馬車の特徴を見る限り、守衛が通したもので間違いないと思います」

 報告をして来た男に注目が集まる。


「乗っていた男2人の行方はどうなっている?」


「それが……川に死体が浮いていると通報があり他の者が調べている途中です」


「偶然とは思えない……リリ無事でいてくれ」

 手がかりがないまま時間ばかりが過ぎていく……

「リリ……」


 リリアンに渡したお揃いの指輪を握りしめると、まるで応えるように指輪が光り出した。


「殿下! 外に不思議な光が!」

 南の方角の屋敷から天に登るような光が! そしてフレデリックの指輪からも同じ光が出て屋敷の方向を指していた!


「シルヴァン殿! リリはあの屋敷にいる! 指輪がリリの場所を示してくれます! 急ぎましょう!」

「殿下、その指輪は……」

「説明は後にしてください!」

 店の前に繋いであった愛馬に乗り走るフレデリック。


「殿下! お待ちください」

 騎士が止めようとしたが耳に入っていないようだった。

「リリ、無事でいてくれよ、すぐいくから!」


 この光が収まるまでに屋敷に行かないと! リリが指輪を嵌めると、この光は消えてしまう!

 追いついた騎士の一人がフレデリックと並行して走っている。

「殿下! この屋敷です」


 この屋敷は、確か……

「行くぞっ!」

 門を開け、屋敷の入り口まで来て扉をノックする。強行突破だ。





「何事ですか! このお屋敷はマテス伯爵家です。急に訪れるなど礼儀がなっていません。礼儀知らずを屋敷に入れるわけには行けません! 今すぐここを立ち去りなさい!」


 老執事と言ったところか? 私はフードを被っていて顔が隠れている。


「この屋敷に客が来ていると思うのだが、ご存知か? 急用だ」


「なんのことでしょうか?」

 ようやく合流したシルヴァンと目を合わせる。


「この屋敷の一室から天に向かって赤く光っている。そして私のこの指輪がさす方向に、私達の探している人がいる。退け!」


 執事はその光が先ほどがから気になっていたが、聞くことはできなかった。その先には……


 フレデリックはフードを取って顔を見せると老執事の動きはピタリと止まった。



「ここは私が……」

 シルヴァンがそう言うと、フレデリックは頷き屋敷内に侵入する。光の射す方へ


「きゃぁ!!」


 屋敷内にいたメイドらしき者が侵入者を見て、悲鳴をあげるが、無視して光の射す扉の前へと着いた。

 ノックするが返事はない。仕方がないとドアノブに手を掛けるが内側から鍵が掛かっているようだ。重厚な扉でびくともしない。


「リリ! いるのか!」


******


 ガチャガチャ……扉を開けようとしている音が聞こえてリリアンはホッとする。

 もしかしてあの指輪が?


『リリいるのか?』


「でん、」

 殿下の声が聞こえて、ほっとして……【殿下】と言葉を返そうとした。


「この指輪か! くそっどんな仕掛けになっているんだ」

 指輪を思いっきり踏みつける男


「やめてください!」


 リリアンは指輪を取り返そうとして指輪の落ちている床に膝をついた。

 すると男は豹変し、リリアンの髪の毛を思いっきり引っ張ったのだ。


「痛、いっ……!」

 痛みに耐えられず涙が出てきた。

「人形が痛がるなんておかしいだろう」

 痛い……痛いよぉ……



 痛みを堪えながら男の顔を見た。楽しそうにこちらを見る顔が狂気に満ちていた。


「痛みを堪える顔も可愛いじゃないか」

 途端に男は掴んでいた髪の毛を離しリリアンは地面に叩きつけられた。


「きゃぁぁっ」

 地面に横たわるリリアンを見て男はニヤリと笑い、あろうことかお腹を踏みつけた。


「ゴホッ、ゴホッ……やめ、」

 苦しくて咳が出るリリアン


「この扉は重厚だから中々開ける事は出来ないだろう。さぁどうしようかな……リリアンの可愛い顔に傷をつけたらどうなるかな……無論私はそんな傷くらいで、リリアンの事を嫌いにはならない」

 懐からナイフを取り出してきて、ピタピタと頬に当てる。

 ナイフの冷たさが妙に生々しくて、緊張が走る。


「助けて……やだぁ」

 ポロポロと涙がとめどなく溢れてきた。

 ドンドンと扉に体当たりするような音はいつの間にか止んでいた。


「痛い……止めて」

 ゴホッ、ゴホッ……お腹の痛みも限界


「泣き顔も可愛いね、リリアン。でも私は君の美しく微笑む顔が一番好きなんだ。ずっと私に微笑みかけていてほしい」


「た、すけ、て、リック……」

 痛みと恐ろしさに耐えられずボォーっとしてきた。


 ……また意識が

 ……力が、出ない

 ……たすけて

 ……いたい

 





「ーーリリ! 窓際にいるならすぐに離れろ! 怪我するぞ!」


 拡張機のような物で叫ぶ声が聞こえた。

 まどぎわ……?


「リッ、ク……」

「な! 何をする気、」

 男の声はかき消され




 ガチャーーーーン!! っと音を立てて、フレデリックが窓を勢いよく蹴り破り部屋に入ってきた。フレデリックの執事も後についてきた。



「リリ!!!!」



 男が怯んでフレデリックを見た。



「ーー殿下! 鍵!」

 聞き慣れた声

 ……兄様だ。

 助かったわ……


 フレデリックの執事が内鍵をガチャリと開けた。

 フレデリックはリリアンから男を引き離した。

「リリ! 大丈夫か」


「おなか、いたい、髪の毛も引っ張られて」

 床を見るとリリアンの長い髪の毛がたくさん抜け落ちていた。

 ひっくひっく、ぐすん。


 リリアンはフレデリックに抱きついた

「……怖かった」


 フレデリックは優しくリリアンを抱きしめ返す。

「遅くなって悪かった。怖い思いをさせてしまったね。もう大丈夫だよ」

 優しく返事を返すが、ぐずぐずと泣くリリアンを見て怒りが止まらない。


 リリアンに暴行を加えた男はフレデリックの執事とシルヴァンに取り押さえられている。無様な姿だった。


「リリー! 大丈夫か!」

「にいざまっ……」


 シルヴァンはリリアンの無事を確認し、ほっとして、男を抑える手に更に力が入った!



「リリ。とりあえず安全な場所に移ろうか」

 フレデリックがリリアンから離れようとすると


「やだ、行かないで……リック」

 泣きながら、昔の愛称で呼ばれフレデリックは時が止まったような感じがした。


「私はどこにも行かないよ」


 よしよしと頭を撫でて、上着を脱ぎリリアンの肩に掛けた。

「立てる?」

 ううん。と首を振るリリアン。腰が抜けて力が出ないようで起き上がる事ができない。


「私がリリを運ぶよ。ちゃんと首に手を回して、落ちないようにしてくれる?」


 うん。と頷くリリアン

 フレデリックがリリアンを抱いて歩き出した時に男がリリアンを見て言った。


「くそ! もう少しだったのに……リリアンは俺の物だぁっ!」


 リリアンは男の言葉が気持ち悪くて、怖くてフレデリックの首に顔を埋めた。

 フレデリックは男を睨みつけ

「この件についてはタダでは済ませない。お前を唆したについても不問にはしないからな。覚悟しておけ」


 リリアンが震えているのでそれくらいにしておこう。とすぐさま現場を立ち去った。


















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

婚約破棄された幼い公爵令嬢、目覚めたら絶世の美女でした

鍛高譚
恋愛
『幼すぎる』と婚約破棄された公爵令嬢ですが、意識不明から目覚めたら絶世の美女になっていました 幼すぎる、頼りない――そんな理由で婚約者に見限られた公爵令嬢シルフィーネ。 心ない言葉に傷ついた彼女は、事故に遭い意識不明となってしまう。 しかし一年後、彼女は奇跡的に目を覚ます。 そして目覚めた彼女は――かつての面影を残しつつも、見る者すべてを惹きつける絶世の美女へと変貌を遂げていた! 周囲の反応は一変。婚約破棄を後悔する元婚約者、熱視線を送る他家の令息たち、さらには王太子からの突然の縁談まで舞い込み――? 「もう、誰にも傷つけられたくない。私は私の幸せを手に入れるの」 これは、冷たく突き放された少女が美しく咲き誇り、誇りと自由を手に入れる、ざまぁ&逆転恋愛劇。

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~

夏笆(なつは)
恋愛
 ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。  ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。 『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』  可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。  更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。 『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』 『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』  夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。  それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。  そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。  期間は一年。  厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。  つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。  この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。  あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。    小説家になろうでも、掲載しています。 Hotランキング1位、ありがとうございます。

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

処理中です...