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指輪の真実
しおりを挟む「さぁ着いたよ」
王宮の隠し扉の前に馬を止めた。馬車で帰ることも考えたが、目立ってしまう。
馬を預けて、リリアンを抱いたまま王宮の隠し通路からフレデリックの私室へ連れて帰る。それが一番人に見られない最短ルートだ。違う通路もあるが、それは両陛下の部屋へと繋がるり
リリアンの家には報告が行く事になっているが、恐らくあの男はシルヴァンによって……まぁ殺しはしないから大丈夫だろう。
フレデリックの私室に着くと、メイドがリリアンの服を持って来た。
「リリ、こんな服を着ているのは嫌だろう? 疲れているのは分かるけれど着替えようか?」
「……うん」
フレデリックの私室と言っても部屋は広くドレスルームへ行って着替えるようだ。近くにいてね。とリリアンに言われて部屋から出る事は出来ない。よほど怖い目にあったのだろうと思うと、腹が立って仕方がない。あの男を八つ裂きにして国に返してやろうか。とぶつぶつ独りごちる
「……殿下、よろしいでしょうか?」
メイド長が礼儀正しく頭を下げる。これは何かあったな……と思った。
「リリに何かあった?」
「それが……お腹に殴られたような……いえ恐らく踏みつけられたような跡があります。たまに咳をされていますし、暴力を振るわれたのではないかと思われます」
「……この事は他言無用で頼む。それと母上にリリは私の部屋にいると伝えて欲しい」
「はい、畏まりました。殿下も怪我をされているようです。主治医をお呼びします」
「頼むよ」
リリを助けに行った際に、窓ガラスを割った時に出来た傷だろう。これは大したことない。
はぁっ。呼吸してリリを待っているとワンピースに着替えたようだ。
「リリ、少し話を聞かせてほしい」
そういうと、私の隣に座ってきた。よほど怖かったのだろうと思う。
「手を繋いでもいい?」
リリアンは頷くと自らそっと手を繋いできた。不謹慎ではあるけれど正直言って嬉しい。
「マリーは、私の侍女は無事ですか?」
まずは侍女の心配をするのか。辛い目にあっただろうに。
「あぁ。無事だよ。薬で眠らされていたようで、目を覚ましてからリリのことを心配していたよ。まだ体調は万全ではないようだけど、リリに会いたがっていたから、もうすぐ来るだろう」
「……マリー……良かった」
リリアンがほっとした顔を見せた瞬間に、バンっと! 扉が開いて母が部屋に入って来た。
リリアンはきゃぁっと小さく悲鳴を上げてフレデリックに抱きついた。
「静かにしてください! リリがびっくりするでしょうに!」
「リリーちゃん。良かった!」
母は来るなりギュッと後ろからリリアンを抱きしめた。するとリリアンはフレデリックから離れて
「王妃様、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした」
か細い声で謝罪の言葉を述べた。
「良いのよリリーちゃんが帰って来てくれて、顔を見られて安心したわ。とても心配したのよぉ……何かあったら遠慮しないでフレデリックになんでも言って良いのよ!」
「ご配慮いただきありがとうございます」
「リリーちゃんの無事を確認できて良かったわ。わたくしが長居をすると色んなところに迷惑がかかるから行きますね。フレデリック後は頼んだわよ」
「はい。お任せください」
王妃はホッとしたように部屋へと戻っていった。普段息子の私室へなんて来ないのに、こんな時間に急に現れて長居をすると何かあったのか。と勘繰られてしまう可能性がある。
その後リリアンの侍女マリーが来て二人で抱きしめ無事を確認した。
「マリー、疲れているでしょう? お部屋に戻って良いのよ」
「いえ! お嬢様と一緒に!」
「お願いマリー、休んでちょうだい。明日からも忙しいでしょう? あなたを頼りにしているの」
「……分かりました」
渋々部屋を後にするマリーだった。
「リリも疲れている? 部屋に戻る?」
ううんと首を振るリリアン
「……一人になるのが怖いもの。あの男の人もう来ない?」
こんなに弱っているリリアンを見るのは初めてで胸が痛む。どんな手を使ってもあの男に罰を受けさせようと決めた。
「リリは二度と顔を合わせる事はないよ!」
「あの人気持ち悪かった……私の事お人形さんだって言うの。ドレスに着替えさせられたの。前にマデリーンに学園で愛想よく挨拶していると変な男の人が勘違いする。って言われたの」
「同じ学園なのか?」
「でもお話はしたことがないの。学園でお話しする異性はキリアン様くらいだもの」
「……そうか」
「キリアン様の事を知っているって言ってた」
執事に目配せすると、すっと頭を下げ部屋から出て行った。執事はフレデリックが何を言いたいか分かったようで、キリアンに伝達へ行った。もしかしたらまだ王宮に残っているかも知れない。
******
「はぁっ。疲れた。親父は明日の準備で忙しいから仕方がないか……」
「仮眠をとられますか?」
侍従に声をかけられた。いつも遅くまで付き合ってくれるので今日も最後まで居てくれた。
「そうだな。今帰っても明日の朝帰っても一緒か……」
明日はフレデリックとリリアンの婚約発表とフレデリックが王太子に任命される日だ。仕事をしていた方が余計な事を考えなくて済む。
うーーん。と伸びていたら、ノックされて返事をするとフレデリックの執事だった。こんな時間になんだろうか?
「何か急用でも?」
「はい、実は内密のご相談がございます」
内密か……王家に関わることだろう。と思い侍従を見ると、仮眠室の準備をして参ります。と頭を下げ部屋を出た。空気の読める侍従だ。給料を上げなくてはいけないな。と心で思った。
「リリアン様が攫われました」
……リリアン様が攫われました?!!!
思わずガタンと席を立つ
「はぁっ?! ーーーーーーそれでリリアン嬢はどうなっている! フレデリックは何をしている? シルヴァン殿は、」
一気に目が覚めた! リリアンは無事なのか!
「はい。先ほどフレデリック殿下とシルヴァン様、騎士たちが居場所を見つけリリアン様を救助いたしました」
腰が抜けたように椅子へと座り直す
「それを早く言ってくれよ……なんでまた攫われたりしたんだよ。王宮は安全だろうに……無事なんだな?」
「私が突入した時は男に腹を踏まれて頬にナイフを突きつけられていましたが、」
「はぁっ?? なんだ! それ! 犯人は一体どこのどいつなんだよ!」
「はい。それでキリアン様のところへ参りました」
「はぁっ? なんで俺のところへ? 意味がわからん」
「犯人はキリアン様もご存じでご学友のようです」
「はぁっ? 誰だよっ!」
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