侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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牢の中の男

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「やぁ、トビアス・マテス伯爵こんなところで会うとは思わなかったぞ」

 王宮の地下牢にトビアスと呼ばれた男は鎖に繋がれていた。

「……キリアン殿か、この裏切り者め! 何のようだ! ここから出せっ」

 キリアンを睨みつけるマテス伯爵

「裏切り者とはどう言う事だ? 裏切るほど良好な関係では無かったような気がするのだけれど、私の思い違いだろうか?」


「学園内で! リリアンに勝手に近づく事は出来なかったはずだ! お前がそれを破った! しかしそれにより私がリリアンと出会えたのだから礼を言う」

 ふふっと鼻で笑うトビアス
 

「リリアン嬢とは友達だ。お前は友達でも何でもないだろう。出会った? なんの話だ?」

 友達と自分で言って胸が痛むが、いつかはきっとこの気持ちも思い出になるだろう。


「リリアンはいつも笑顔で私に挨拶をしてくれた。リリアンは微笑んでいる顔が一番美しい。だからっ、私の元でリリアンを着飾ってそばに置いておかなきゃならないんだっ、」


 鉄柵をガンガンっと揺らすクラスメイト、目が血走る様子を見て正気でない事がよく分かった。


「側に置く? 何を言っているんだ! お前の自己満足じゃないか! 暴力を振るって側に置いておきたいなんて……紳士の風上にもおけん! お前と話すだけ無駄だという事は分かった! 頭を冷やすんだな!」

「リリアンが怯えた顔、泣き顔、表情が変わるんだ。 人形なんだから微笑んでいれば良いんだよっ!」

 はっはっは……とトビアスは気味悪く笑い出した。


 その様子を見て、踵を返しカツカツと石畳を早足で歩きながらシルヴァンの元へ合流することにした。


******


「キリアン殿、こんな時間に……もしかして妹のことをお聞きになって?」

 シルヴァン殿は見るからに疲れた顔をしていた。


 数人の男達が集まって会議をしていた。

「フレデリック殿下の執事から話を聞いて、地下牢へ行ってきました」


「そうですか。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」


 立ち上がり頭を下げるシルヴァン。


「いや。私も加わっても良いでしょうか? 奴は私のクラスメイトでもありますし」

 シルヴァンは周りを見渡し数人の男達に意見を求めると、皆が頷いた。


「この件は内密に進めていますので、信頼出来る人が増えるのは頼もしい限りです。よろしくお願いいたします」


 椅子が用意され、円卓会議に加わることになった。机の上には手紙が置いてある。

 手紙に目をやると、シルヴァンが簡潔に説明をしてくれた。

 

 トビアス・マテスはリリアンの事を好きで学園で挨拶をされたことから自分に気があると思い、側に置いておきたかった。と言う。

 優しいリリアンだからフレデリックとの婚約は断れなかったのだろう。と今回の事件に繋がった。


 フレデリックが留学中に留学先の王女に気に入られ求婚されたが断っていた。その事を知っていたトビアスは王女と組んで、フレデリックとリリアンの婚約を阻止しようとしていた。


 トビアスの部屋を家宅捜査して証拠の手紙も見つかったので、言い逃れはできないだろう。

「王女の方はどうなっているのですか?」

 あれだけフレデリックに執着しているのだから素直に認めるとは思わないのだが……


「否認しているようです。しかし王女の蝋印が使われていることから、それもいつまで……もつかな?」

 ニヤリと笑うシルヴァン。寝不足なのか目の下に青いものが出来ている。この男も忙しいだろうにリリアンの事となるとそうも言っていられないのだろう。


******


「王女様! マテス伯爵が捕われて地下牢に入れられました。王女様はなぜマテス伯爵が捕われたか理由はご存知ですね?」

 国の代表としてフレデリックの祝いに駆けつけた大臣が王女に問いかけた。

「まぁ! マテス伯爵が捕われたの? 何をしたのよ。国の恥じゃない」

 王女はしらばっくれる気満々だ。

「ご存じないと?」


「えぇ。マテス伯爵はこの国に留学しているのでしょう? わたくしとは何の関係もないわ」

 爪の手入れをしながら関係ないと大臣に言うと

「この件はお互いの国にとって公にはならないけれど、王女様にも責任がある。我が国としてアザリア王国に対して謝罪をしなくてはいけません! 早馬で陛下に手紙を届けました。貴女の処分は国同士の話し合いとなるでしょうね。さぁ今すぐ国に帰る準備を!」


「ちょっと大臣! 妄想で話をするのはやめてちょうだい。一体何のことよ!」

 まだしらばっくれる気か! こっちはこれから大変なんだ。と大臣は気が気ではない様子だ。

「あなたとマテス伯爵が手を組んで、リリアン・サレット令嬢を攫ったと言う事は既に裏が取れています」


「え! リリアン様といえばフレデリック様の? 攫われたの! 大変じゃないのー! 傷物にでもされたら明日のパーティーには出られないわね」

「あぁ、その件でしたらもう既に解決しておりますからあなたが気にしなくても良いのです」

「え? なによ、それ!」

 ガタンと椅子を立ち大臣に詰め寄る。

「あなたはバカなんですね! あなたの蝋印が押されている手紙がマテス伯爵の家から見つかったそうです! しかも何通も。目を通しましたがあなたの蝋印! あなたの筆跡でした! あなたのことを知っている者なら誰一人疑わないほどの悪筆ですからね! すぐにわかりました」

 バンと1通の手紙を机に置く。


「えー知らなーい! 何ー、これ!」

「マテス伯爵へ宛てた手紙です。今日もあなたはマテス伯爵と密会していた。と護衛から聞いた!」

「マテスではなくて違う人だったんじゃないの?」


「王女! 大概にしてください! これだけ証拠が揃っていて、とぼけるつもりですか! 国へ帰る馬車の中で反省してください! ったく勝手に国を出て問題を起こして! 後始末が大変じゃないですか!」


「あなた! 私に向かって何よその口の聞き方は!! あなたなんて国へ帰ったらお父様に言いつけて大臣の座を剥奪してやるんだから!」

 ビシッと大臣に指差しポーズを決める王女。


「あぁ、そうですか。その方が私も気が楽になりますので是非お願いしますよ」




 もう引退してゆっくり過ごしたい。バカの相手は疲れた。他国に来てまで問題を起こすとは……










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