侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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フレデリック

リリアンとの出会い

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 フレデリックが7歳の時、王妃主催のお茶会が庭園で開かれた。同世代の男女問わず招待されたようだ。

「つまらない」

 ポツリと呟く。正装をして大人しくするようにと言われて令嬢たちと交流を持つのだが、同じような笑顔、同じような会話でつまらないのだ!

 こんなことなら令息達と遊んでいた方が楽しいし剣術の時間の方が有意義だと思う。


 年相応でいいのに、無理して紅を引いたり髪を巻いてご苦労なことである。と少し引いた視線で見てしまう。



「殿下ぁ~」



 うん。少し逃げよう!

 あともう少し我慢すればこの茶会は終わる。

 この茶会は私だけではなく、貴族の家同士の見合いでもあるのだから、他の参加者同士が仲良くすれば問題はないのだ!


 隠れる先は少し離れた木陰。私がいなくなったことによりサレット侯爵令息、それに従兄弟のキリアンに人気が集中したようだ!


 コソコソと、フレデリックは庭園を後にする。

 護衛も撒いてきた。

 ここから少し歩いた先にフレデリックのお気に入りの大きな木がある。そこに登るのが好きだがこの衣装では無理だ。

 庭園の外れにある四阿で身を隠そうと思い四阿に着いたらふわふわとした紫色のものが目についた。

「なんだあれ?」


 よく見ると紫色のふわふわした物はドレスだとわかった。何かを取ろうと四阿の机によじ登っているようだ。なんだろう動きが芋虫みたいだ……


「何をしているの?」

 急に声をかけられてビクッとする女の子。机から落ちそうになり


「きゃぁぁっーー」


 と声を上げたので、走ってキャッチした。

「すまない、急に声をかけたから。怪我はない?」


 女の子の顔を見ると金糸の糸のように美しい髪に溢れそうな大きな青い瞳が印象的な女の子だった。

 いくつくらいだろう? 僕よりは下であることは間違いなさそうだ。そして茶会には参加していなかった……よな?


「お兄ちゃん、ありがとう」


 よく見ると涙目になっていた。その顔を見た瞬間に背中がゾクッとして時が止まったようだった。


「どうしたの? どこか痛いのかな?」

「足をぶつけちゃったみたい」

 目を瞑ってポロリと大きな涙を落とした。


 膝丈のスカートでタイツが破れて血が滲んでいた。ポケットからハンカチを取り出してバイ菌が入らないようにと足に巻き付けた。

「これでよし。ところでどうして机に登ろうとしていたの?」


 女の子が1人で、中庭の四阿にいるのも不思議だった。どこの子だろう?


「あのね、リボンが風に飛ばされたの」

 四阿の屋根まで飛んでいき、絡まったようだ。それを見てなんとかリボンを回収した。

「はい。取れたよ。でもなんでリボンが取れちゃったの?」

 リボンなんてそうそう取れる物ではないだろうに。風で靡いて取れた? あり得ない。


「ネコちゃんと遊んでいたら、ネコちゃんが走っていって追いかけたら迷子になって、ひっく、ひっく、」

 追い詰めてしまったのだろうか。迷子になったことを思い出して泣き出したのか……分からない。


「あぁ、泣かなくていいよ。誰と来たの?」

 ハンカチは足に巻いてしまったから胸元のチーフを渡して頭を撫でた。


「ママとね、にーさまを迎えにきたの」


「今日のお茶会の参加者かな? お兄さんの名前はなんて言うの?」


 迎えにきたと言うし、この子の兄なら僕くらいの歳でもおかしくないよな。


「シルヴァン、にーざま。ひっく」

 泣くのにも力がいるんだろう。肩が揺れていた。


「あぁ、なるほど。サレット侯爵家の令嬢だね」

 シルヴァン殿に妹がいると聞いている。侯爵が可愛くて目に入れても痛くないなどと父に言っていた。


「うん。知ってる、の?」


「知っているよ。夫人はどちらにいるのかな?」

「ママ? ひっく。分かんない。でもネコちゃんを追いかけてきたのはあっち」

 指を差す方向はバラ園のある場所だ。


「行ってみようか。歩ける?」

「うん」

 ひょこっと足を引き摺るように歩き出したので思わず手を繋いだ。

「ありがとう」

 にこっと笑う顔は屈託のない笑顔で、思わず顔を背けてしまった。


 ……可愛い!





「リリアン! どこに行ってたの! 探していたのよ。良かった」

 リリアンと言うのか。名前を聞くのを忘れていた。夫人は安堵の表情を見せていた。この子を探していたのだろうが、この場所からまさかあんなところにいるとは思わないだろう。


「だってネコちゃんが」

「殿下、娘を連れてきてくださりありがとうございます。落ち着きのないそそっかしい子でお恥ずかしい限りです」

 リリアンの母親が頭を下げてきた。

「怒らないであげてください。えっと、リリアン嬢も心細い思いをしていたでしょう」

「まぁ! お優しい事を……リリーお礼はどうしたの?」


「お兄ちゃん、ママの所まで連れてきてくれてありがとう」


 夫人の顔を見て安心したのか、夫人のドレスにピタッと抱きついていた。


 そんな姿も可愛らしい。異性に対して初めて思った感情だった。


「あら、リリー怪我をしたの?」

「お兄ちゃんにハンカチを借りた。これも」


「まぁ! 何から何まで申し訳ございませんでした。リリー! 後でお話を聞かせてもらいますからね!」

「あぁ、気になさらないでください、」


「殿下! こんな所にいたんですね! 王妃様が探しておられます。戻りますよ」

 撒いたはずの護衛にみつかり会場に連れ戻される。茶会はお開きになったようで各家の親も迎えにきているそうだ。


「リリー、シルヴァンを迎えにいきましょうか」

「うんっ」

 さっきまでの涙はなんだったのだろうか。満面の笑顔で夫人に抱かれていた。

 会場に戻ると母におこられた。リリアンが気になってその姿を横目で見ると


「にーさまぁー」

 シルヴァンにジャンプして抱きついていた。


「リリーどうした? 怪我をしている」

 よしよしと頭を撫でるシルヴァンに幸せそうな顔で答えるリリアン。


 もっとこの子を知りたいと思った。













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