侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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悪役令嬢にはなれないけれど、強かに生きていきます

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「クラウディア殿がリリに……やはり学園は私の目に届かない。危険じゃないかっ!」


 このままでは学園に通えなくなる。フレデリックが怒っている。落ち着かせなくてはいけない。


「思ったよりも、怖くなかったの。それにちょっとスッキリわ。前回の事件を引きずっていて心が弱くなっていたみたいだけど、元王女様と対峙してみたら、意外となんて事なかったのよ」


 これは元王女だからだと思う。もしあの男が私の目の前に来たらと思うとゾッとするし恐ろしくて何も出来なかったと思う。でもアザリア王国へ入る事は出来ないし、私には接触不可。


 もし私の近くに来ることがあってもその場での抜刀が許可されていると聞いた。その時は護衛にお任せしましょう。


 聞くところによるとあの男の今の立場では、爵位を守ることに必死だと思うから全てを捨て、命懸けで私に会いに来る事はないと思う(多分)



「……リリは凛としていて美しかったとマデリーン嬢に聞いた」


 またマデリーンは話を盛って……


「少しやり返したかったの! だってリックを返せとか言うんだもの」


 これも王妃様のおかげだと思う。立場ある者は冷静に。でも言わなくてはいけない事は言う。泣き寝入りをするとそこを突かれてしまう事がある。

 私の見た目はおとなしそうに見えるから、攻撃されやすいのだと王妃様もマデリーンも言った。

 少し反撃するだけでも、私の立場からしたら相手は処罰の対象になるからやり過ぎないように。と言われた。


「……心配だけど、リリの戦い方を見つけたようだね」


「うん。悪役令嬢は無理だから、強かに生きることにしたわ!」


 やっと気づいた……悪役なんて無理だったわ。


「……それは応援するとしよう。母も苦労した分リリにはそうなって欲しくないんだろうね。女性同士でしか分からない部分もあるのだろうから。でも何かあったらすぐに相談してほしい」


 理解してくれて、良かった! 元王女と対峙して少しはトラウマから脱出できたような気がした。

 それといつまでもフレデリックに甘えているわけにはいかない。

 執務も忙しいのに寝る時間を合わせてくれ、無理をさせている。
 

「兄様からあの時の事を聞いたの」


 フレデリックにはなんとなく聞き辛くて事後処理の事を先日兄様に聞いた。


 知らなくてもいい。と言われたけれど気になったし、学園に登校するようになり日常を取り戻し、少し落ち着いてきたところだった。

 それにそろそろ家に戻ろうと思っている。


「……聞いたのか。無理して知る事はないと思っていた」


「それもあったから元王女と話をしようと思ったの」

 知らなかったら、きっと怖くて逃げていた。そして学園で無様な姿を見せていたかもしれない。聞いて良かったのだと思う。


「それでね、そろそろ家に戻ろうと思うの。リックの執務にも影響しているだろうし、結婚式も決まったし家族と過ごしたいと思っているの」


 言い切った後にフレデリックを見ると目を見開き驚いた顔をしていた。


「ダメだよ! リリは私がいないと眠れないじゃないか。寝不足になる! ……まさかシルヴァン殿と……」



 兄様にも迷惑はかけられないわね。でも兄様は家族だから問題無いでしょうに?


「最近うなされなくなったし、お医者様も精神的に落ち着いてきたから、日常を取り戻すためにも家に帰ってもいいと仰ったもの」


「…………」


「それに王妃様にも週3回は王宮に来ると言う事で了承を得ましたよ」


「たった3回……」


「リック? どうしたの」


「やってみるがいい……リリはすぐに私の温もりが忘れられなくて戻ってくることになるから!」





******



 その結果


「ダメだ……眠れない。リリがいないと……きっとリリもそう思っているに違いない」


 翌日寝不足のまま執務にも取り組むフレデリック。ついあくびが漏れる。


「おや? 殿下どうされたのですか?」

 シルヴァンに言われる。会議中あくびをしていたのを見られたらしい。

「少し眠りが浅かっただけです。リリの様子はどうですか?」


 リリは寂しがっていないだろうか。朝起きて私の顔を見てホッとするリリの顔が恋しい。


「よく眠れたようで朝から家族で食事をとり、学園に向かいましたよ。ようやく日常を取り戻せたようです」


 ……リリめ! 薄情な女だ。




 それからしばらくして、リリアンは1人寝で苦労することもなく日常を取り戻した。


「リリーおはよう!」

「マデリーンおはよう!」


「もうすっかり家から通っているのね」


「うん。家に戻ってもリックがいなくて不安になることもあったの。でも乗り越えたわ!」

「体が丈夫なのは知っていたけれど心も丈夫なのね。うーん。図太い? のね!


 マデリーンはコロコロと笑い出した。


「そこしか取り柄がないもの! でもリックは寝てないのかも。眠たくなるまで仕事をして仮眠を取っているみたいなのよ」

 少し申し訳なさそうに眉を下げるリリアン


「リリーの事を抱き枕か何かと思っていたのかしら?」

 抱き枕……枕が変わると寝れないタチなのかもしれないわね。


「あと一年少しの我慢よ。よく考えたらリックと結婚するしか道がなかったと思ったら、ちょっとだけ嫌がらせをしたくなったの」


 フレデリックのことはかけがえのない存在だけど、今しか出来ないもの。

 
「嫌がらせなの? お仕置きじゃないの!」


「私のためでもあるのよ! ずっと一緒にいたら頼りっぱなしになるから、良くないと思って。お互いに今しか自由がないんだし」


 ふふっと2人で笑った。







 その後、リリアンとの結婚式までの間フレデリックの寝不足は続くのであった。


【本編完】


 一旦【本編完】となりますが、フレデリックサイドの話を数話更新します。


 



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