記憶を持ったままどこかの国の令嬢になった

さこの

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記憶は維持

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「ここは……どこ?」

 目が覚めると見たことのない部屋に寝具。周りを見渡しても広い部屋には誰もいない。とにかく起きあがろうとして身体を起こすとふらっとした。

「いたっ」

 頭がガンガンする。二日酔い? そんなにお酒を飲んだ記憶もないんだけど……。借りたマンガを読んでいる途中で寝落ちしたまでは覚えている。頭が痛いけれどこう胸の奥からもわっとする気持ち悪さではなくて、なんだろう。鈍器で殴られたような痛さ? 実際は殴られたことなんてないのだけれど。

「クラクラしてきた」

 もう一度横になろうと枕に頭を沈めたそのとき。

「いったぁぁぁい」

 涙目なりながら出てきた言葉。すごく痛い! 頭を触ってみると大きなたんこぶが出来ていた。何これ! ボコってなって、痛すぎて口から何かが出てきそう。まくらにたんこぶがあたった痛み。

「お嬢様! 何やら悲鳴が聞こえてきましたがどうしたんですか!」

 メイド服を着た若い女の子が私の悲鳴を聞き駆けつけてくれた。

「頭が痛くて。大きな声を出してしまったわ」

「そりゃそうですよ。これだけ大きなたんこぶができるほどの衝撃だったんですから、大人しくしていてください」

「ご、ごめんなさい。そうする……」

 など返答したら、さらに頭が痛くなってきた。さっきとは違う頭の痛み。

「お嬢様、お嬢さまっ! どうしたのですか」

 ふと意識が遠のいていく感じがしたけれど、その瞬間にわぁっ。と色んな記憶が走馬灯のようによみがえってきた。

 私の名前はエマ・モンフォール。伯爵家の長女に生まれ、両親とお兄様がいる4人家族で育ってきた。家族仲は良い。人の良い両親は親族が困っていたら家財を売ってでも現金に換えて助けてしまうような人達。お兄様も両親に似ている。私も子供の頃から自分が出来る範囲で助けてあげなさい。と言われている。先日庭を散策中に木の上から鳴き声がした。木の上には子ネコが震えていた。

「あら、ネコちゃんどうしたの? 下に降りれなくなっちゃったのね。可哀想に、待ってて、今助けてあげるからね」

 確か、あそこの小屋に庭師が使っている脚立があったはず。小屋に入り脚立を持つ。

「重い……」

 思ったよりも脚立は重くてなんとか引き摺り出して、ネコちゃんの、ところ、まで、あと少し……、のところで足を滑らせて転んだ拍子に脚立が頭にガン! と命中してそれから記憶がない。

 え……、でもそうなったらマンガを読んで寝落ちしてその後の記憶とごっちゃになって……。マンガを読んでいたのは絵麻で、たんこぶ娘もエマ? ダブルの記憶がある! 私は絵麻でそしてエマでもある。記憶が蘇って混ざり合った。


「お嬢様!」

「ごめんなさい。大きな声は頭に響くみたい。横になりたいのだけど頭が痛くて」

「冷やしタオルを当ててみましょうか?」
「お願い」

 冷やしタオルを当ててくれると痛みが引いてきた。

「このまま少し眠るわ」
「そばに控えていますので、何かあったら声を掛けてください」

 そのまま少し眠った。頭の中がぐちゃぐちゃになっている。

 私マンガを見た後の記憶がないからそのまま死んじゃったとか……? 確か胸くそ悪い子息が出てきて腹がたって、残っていたボトルワインを一気飲みしたんだった。お酒が強くないのにワインを貰ったからって無理して飲まなきゃ良かったわ。





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