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リアンの思い
しおりを挟む「侯爵殿、話があるのだが……」
今日ロマーニ侯爵は王宮で執務をしていると聞いた。
「何かありました? 邸では話ができない事ですかね? まぁどうぞお座りください」
「すまない。執務中に時間をとらせてしまった……」
ソファに座り頭を下げるリアン。
「構いませんよ。そろそろ休憩しようと思っていたところですから」
休憩は本当のようですぐに茶を出された。
「会談後は王妃殿下の茶会に行っていたんですよね?」
会談の際にはロマーニ侯爵もいた。同郷である王妃に茶に誘われたことはそこに居たものなら皆が知っている。
「えぇ。そこでマリアの話を聞きました。申し訳ない。マリアを四年間保護していたのは私だと説明しても良いでしょうか?」
当人が説明したほうが良いだろうし、この国からしたら隣国の大公家の嫡男に保護されていた。と言ったほうが世間的にはいいだろう。俺が国から逃げていたことも今更だが公表しても構わないのだから。
「あぁ……聞いたんですねぇ。ですがそれは全く杞憂ですよ。お気になさらずに」
なんでもないような顔をしている侯爵。娘の将来がかかっているのに!
「何故です? マリアくらいの身分なら王子の婚約者としても名前が挙がるでしょう! それにデビュタントを迎えたんだから求婚の話もあるでしょう。変なレッテルを貼られたままでは可哀想ではありませんか?」
陰でコソコソとあらぬことを噂をされる……貴族の嫌なところであり、作戦というか……王子の婚約者の座を狙っている家は沢山居るだろう。
それに傷物だけど結婚してやった。と言って恩に着せる家もあるかもしれない。
「正直言いますと縁談の話は今まで沢山あります。もちろん王家からの話もありました。しかし私どもは誘拐された云々なんて関係ありません。娘の過去を色眼鏡で見るような男はこっちからごめんですよ。娘の中身……人柄を見て娘が良いという男や、噂に流されずに娘と共に笑っていてくれような男……それくらいの器がなければ嫁には出せません」
……確かに、そうだな。ジェラール殿下はきっとマリアの事を悪く思っていないのだろう。だが貴族院が反対するからダメだと思っているような感じだ。どうしてもマリアと婚約したいのならそれくらい黙らせろよ! と言いたいレベルだ。優しいというか優柔不断な性格なんだろうか。事なかれ主義な感じはした。俺が何もいえずにいると侯爵は言った。
「しかし、女性の嫉妬というのはいつの世も聞いていて気分のいいものではありません」
……それはそうだな。引っ張り合いをしている。表では持て囃し裏では悪口を息を吸うように吐く。
「娘は親の私がいうのもアレですが……可愛いじゃないですか?!」
「え、えぇ、はい。そうですね」
娘自慢か? 親バカだとは思っていたが娘が可愛いと声を大にして言える親の鏡じゃないかとさえ思う。
「私も若い頃は令嬢に言い寄られて忙しさにかまけて、夜会は断っていました」
……今でも十分モテるだろう。男の俺から見ても整った顔つきだ。しかも侯爵と言う高い身分で両親が事故で亡くなっている。こんな言い方は良くないが嫁姑問題はいつの世もある。
「はぁ……」
「妻も美しくて社交界の華なんて呼ばれていましてね……」
……まぁ、そうだろうな。美しい人だ。
「はぁ……」
「モテるというのは……大変なんですよ。本人の意思など関係なくどこに行っても注目を浴びてしまう。待ち伏せされたり、勝手に手紙を送られてきたり返事を書かないと傲慢だとか言われ……好きでもない令嬢のダンスの相手をしたり、突撃訪問、プレゼント攻撃……心の休まる時間もありませんでしたよ」
……モテるという事を自慢する奴はマメじゃないといけないんだろうな。勉強になった。
「妻と出会った時はその頃なんですよ。たまたま行った夜会で男に言い寄られていました。公爵家の令嬢という身分があっても男の強引さや力には敵いませんから……彼女も疲れていたのだと思います。私はその姿惚れてしまいまして今に至ります」
「似たもの同志だったのでしょうね。美男美女で高位貴族であるが故に分かり合える部分があったのでしょう」
大変だったんだろうな……心の拠り所がお互いにあってよかった。そう思った。
「娘にはそういう経験をしてほしくない。そう思います。好きな人が出来たと言うなら悔しいが応援してやりたい……娘が幸せになれる相手なら反対はしませんよ。あ、息子は男なんで勝手に乗り越えてもらうつもりです。嫡男ですから、婚約者も自分で探してこいと言ってあります」
……ヴェルナー殿も大変だ。
「話は戻りますが、もし……卿が言いたいと言う場面があればうちとしては構いません。そこは卿を信用しています」
ここで話は終わった。俺はこの事で後に後悔することになる。
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