絶対に近づきません!逃げる令嬢と追う王子

さこの

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胃袋を捕まえられました…

「ルメール領はどうだった?」


 にやにやしながらレイに聞かれた。
 視察ではなくわざわざ会いに行ったのがバレている。


「父上の愚行に反省せざるを得なかった」

 はぁーッとため息を吐くエヴァン


「そんなに壮絶だったのか?」

「いや、隣国の協力を得て復興していて、それは凄かったよ。賑わっていたし領民も明るくて隣国の文化との融合で。うちの国のことなのに金だけ出して終わったんだ……亡くなった人達の石碑も建てられていてさ、知らなかったじゃ済まされないよ」


「ちゃんと視察してきたんだな……アイリス嬢に会いに行っただけじゃないんだ」

「行く限りはちゃんと視察するよ……」


「それはともかく、そこからどう言う経緯でアイリス嬢を連れ帰ってきたんだ?」


「留学の手続きが出された時に、おまえが学園にいてくれて助かった。早馬を出してくれていなかったら間に合わなかった。国境を越える前に馬車を止めて連れ戻した……強引過ぎたかな、とは反省しているよ」


 何度目かのため息を吐くエヴァン


「お前の初恋の相手はアイリス嬢だったのか?」

「あぁ間違いない。アイリスだ……」

「お茶会はどうだった?」


「……アイリスは他の令嬢とは違う、菓子を食べている時は可愛い、茶を飲むときの姿勢も美しい、ウェステリア語も話せるし、素直だし、一緒にいて楽しいと思ったよ」 


「へー。じゃぁ決まりだな?」 

「アイリスが私に少しでも興味を持ってくれなきゃ……意味がない」

「時間がないんじゃないのか?」  



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 新学期が始まった。


 留学は未遂に終わり、また学園に通う事となった。

 三つ編みをして目立たず大人しくをモットーに学園生活を送ろうと思った。

 面倒なのでエヴァンやレイに会わないように朝は早めに邸を出る事に、そしてなるべく教室から出ないように過ごす事にした。


 しばらく会わない日が続き気が抜けたその時だった。

「やぁアイリス久しぶりだね」

 エヴァンに声を掛けられた

「こんにちは」


 一礼をする


「今からランチ? よかったら一緒にどう?」

 にこやかな笑顔で誘われる

「申し訳ございません、お友達と一緒なので……」

 断りをいれる


「お話し中に失礼します、私は良いわよ、あっちにクラスの子がいるから合流するわね!」

「えっ! 私も、」

「そう? 悪いね、ありがとう、アイリスあっちでランチにしようか」


 二階の王族専用のテーブルが用意されている場所を指すエヴァン


「えぇっー! 無理です」

「今日のデザートは桃がたっぷりのタルトだよ? 桃を丸ごと使っているんだ。シェフの自信作なのに……」

「………桃」

「王宮御用達の桃なんだけど?」



「……お菓子をくれる人について行ってはいけないと父に言われていまして」

「ランチだよ?」

「……そうですけど」

「だよね? 行こうか」

 エヴァンの後ろをついて行く事になった

 食堂の二階……初めて立ち入る場所だ



「わぁ! 王宮が見えるんですね。塔が見えますね、綺麗」

 窓に近寄り外の風景を見る


「あとで説明してあげる、まずはランチにしよう」

「はい!」 

 出されたものは一般の食堂のものとは違った。


「す、すごい、王子殿下はいつもこのようなものを召し上がっておいでるのですか?」

 目の前の高級食材に驚きを隠せないアイリス


「いつもは食堂のランチを食べているよ。今日は特別」

「へっ?」

「早く食べなきゃ、デザートにたどり着けないよ?」

「はい」

 大人しくランチを楽しむアイリス



「このお野菜の上にかかっているジュレのようなものがキラキラして……美しいですねぇ」

「アイリスは美味しそうに食べるね」

「美味しいですもの」 

「そう? 気に入ったみたいで良かった」



 多くもなく、少なくもなくちょうど良い量を提供される。


「お待ちかねのデザートだよ」


「きゃぁ!!」


 見た目にインパクトがあるスイーツに思わず歓声をあげてしまった。


「どうぞ召し上がれ」

「はいっ!」

 瑞々しい桃をフォークで切り分ける、中にはカスタードクリーム、下にはタルト生地が重なる



「おいしいぃぃっ」
 

 頬に手を当て悶絶するアイリス

「こんなに美味しいタルトを初めて食べました」

 涙目になるアイリス 


「えっ、泣くほど美味しいの?」

「はいっ!」 

「アイリスを泣かせるなんて困ったタルトだね……」


「感激しました」


「そこまで……」

「はい、もう食べられないと思ったら悲しくて…」


 ぐすんと鼻を啜る


「まだ美味しいスイーツは沢山あるから安心しなさい」

「えっ!」

 目をキラキラさせるアイリス


「次はショコラのケーキを用意しよう、クリームものせて柑橘系の紅茶と相性が良い」

「えっ!」

「ふふ、明日また一緒に食べよう」

「はい」


 まんまと策にはまるアイリス。逃げるようなら捕まえると言われていた。

 まずはアイリスの胃袋から捕まえる作戦のようだ。


 帰りの馬車でジュードに

「王子殿下と一緒にランチをしていたって聞いたんだけど、どう言う事?」

 呆れ顔のジュード

「お友達といたんですけど声を掛けられて……ランチを取る事になって……」

「何に釣られた?」

「えっ?」

「食べ物か?」

「桃のケーキに……」

「お菓子をくれる人に、ついて行くなと父上に言われたろ?」

「はい、そうでした……」

 はぁーッとため息を吐くジュード

 
「すみませんでした……」

「ついて行ってはダメ」

「その、明日また一緒にランチを取る事になっていて」

「……何に釣られた?」

「ショコラのケーキにクリームが……」


「なんでそんなに食い意地が……次の約束はしないように」



「はい」


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