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番外編
何なのこの女?
何なのこの女? 私のエヴァンを名前呼びしたわね? 王女でも何でも関係ありませんよ!
「妃殿下、そろそろ……」
侍女やら医師やらがこれはまずいと思ったようだ。
「あら、まだ挨拶しかしておりませんわ。妃殿下は」
「まぁ。妃殿下だなんて、どうぞ気軽にお話しください。わたくしの事は是非アイリスとお呼びくださいませ」
「あら、そう? それならお言葉に甘えてアイリスさん」
さぁーっと青ざめるレイ。
(なんだ、この王女……無礼にも程がある)
「……えぇ、第三王女殿下におかれましては、我が国に滞在中はどうぞ学生生活を楽しんで下さいませね」
アイリスが名前でどうぞ。というと次にサーラも名前で……という場面になるはずなのに、スルーした。これはサーラがアイリスを下に見ているという事になる。
「お気遣いありがとう。アイリスさんも学園に?」
「えぇ。卒業したのは数年前の話ですが懐かしく感じますわ」
「まぁ。お若く見えますのに、懐かしく感じるだなんて! 年寄りのようですわね」
微笑みを貼り付けたままのアイリス。何が楽しいのか笑うサーラ。同じ微笑みでも全く違う。
「エヴァン様も卒業なさっているようですものね。入学までに学園の話を色々と聞かせていただきたいですわ」
きゃっきゃっと微笑むサーラ。
「殿下は学園の理事の一人でもありますので、現在の学園の事も詳しいですからきっと話を聞かせてくださいますわ」
アイリスの笑顔が崩れてくる予感がした。
「エヴァン様はお優しいですものね。先日の新年のパーティーでもダンスをご一緒させていただきましたが、とてもお上手で素晴らしい時を過ごしましたのよ。アイリスさんは欠席されていたのでお会いできませんでしたね?」
「えぇ。体調を考えた上で途中で退席をさせてもらいましたの。第三王女殿下が出席をしていると存じ上げませんで失礼致しましたわ」
「確か……アイリスさんは遥か国境沿いの伯爵家のご出身とか? いえ。メイドから教えて貰ったのですわ」
第三王女殿下は喧嘩を売っているのですね? ニヤニヤしていますわ。この女エヴァンを狙っている? それにしてもこの女若いのに、ケバケバしくて香水の香りも臭いわ。吐きそう。
国境沿いの伯爵家の出身なんて今更そんな事で喧嘩を売られても、ねぇ。もっとないのかしら? 揃いに揃って言うことが同じ。聞き飽きちゃった。
「えぇ」
そろそろかしら……レイを見るとガクッと肩を落とした。
「何をしているんだ!」
来るのが遅いくらいですよね? 報告が遅れたのかしら?
「エヴァン様! 私が気になって案内をしてくださるのですか?」
エヴァンの腕に絡みつくサーラ。それをそっと離してアイリスの元へ。
「アイリス、なぜ、部屋で大人しくしていないんだ? こんなに風が冷たいのに身体を冷やしたらどうするんだ! お前達もなぜアイリスを止めない!」
アイリスは腹がたった。それに気がつきレイがエヴァンに進言しようとする。
「エヴァン、よせ。妊娠は病気ではない、」
「はぁ?」
真顔で答えるエヴァン。
「アイリスの身に何かあったら周りのものが罰を受けると、」
「わかりましたわ。皆さん行きましょう」
ふん。と背中を向け歩き出すアイリス。侍女や、医師達も急いでアイリスを追いかけ、その後にエヴァンもアイリスを追いかけ近寄る。
「アイリス、待て! 話の途中、」
「はぁ? わたくしの身に何かあったら周りに迷惑なので帰りますわ」
ハンカチを出し鼻と口元に押さえつける。
「アイリス、どうかしたか?」
「気分が悪いですわ。そんな香水をつけた体でわたくしに近寄らないでくださいますか?」
う。っと言い眉を顰めるアイリス。アイリスはエヴァンが女の香水の残り香をつけるのを大変嫌う。そして妊娠中の今は特に香りに敏感である。サーラの近くにいると吐き気がする。
エヴァンは、しまった。と思い、アイリスから離れる。サーラの香水はキツイ香りだ。
アイリスがエヴァンを冷たい目で見て
「それでは第三王女殿下、失礼しますわね。さぁ皆さん帰りますよ」
「「「「は、はい」」」」
アイリスが歩き出すと、エヴァンは焦った様子を見せるが、執務が溜まっている。とにかく終わらせてから後で話し合おうと思った。
サリーが何かをエヴァンに言っているが、何も聞こえない。サリーを置いて執務室へと向かった。
******
そして夕方今日のノルマを終わらせ、アイリスの元へ帰ろうとする。
「エヴァン……さっきの態度はないと思う。きちんと話し合った方が良い」
「あぁ。分かっている。私もアイリスの出産に向けて気が立っていた。アイリスには大人しくして欲しくてな……」
「分かっているなら良い。それよりサリー王女殿下の態度も悪い。報告をさせてもらうよ」
「頼んだ。とりあえず今日の分は終わったから確認しておいてくれ」
エヴァンは急いで執務室を出た。するとサリーとバッタリ廊下で会った。
「エヴァン殿下!」
「……王女殿下ですか。どうかされましたか」
こんな偶然はないだろう。
「一緒に晩餐をいかがですか? 美味しいワインをお持ちしますわ」
サリーは腕を伸ばしてきた。
「失礼。未婚の王女がこのように異性に触れるのはどうかと思います。あらぬ誤解を受けてしまうと困るのは王女ですよ」
やんわりと触れるな。と牽制するエヴァン。
「まぁ。王宮内ですもの。誰も見ていませんわ。それに王族同士仲良くする事を咎める者がいますか?」
「私は既婚者ですから、誤解を受けたくないのですよ。申し訳ないが急いでいるので失礼。また今度」
今度が二度と訪れないことを願う! 早くアイリスの元へ行かないと!!
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