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チェルシー・フルーリーと申します
しおりを挟む私の名前はチェルシー・フルーリーと言います。王立学園に通う十七歳で、フルーリー伯爵家の長女です。
先ほど、婚約者のユリシーズ様との恒例のお茶会でしたわ。
何やら彼には、気になっている令嬢がいるようです。
それは構わないのですが……。お話をしていたら、バカバカしく思いましたわ。
自分勝手と言うのはきっと、彼のことを言うのではないかしら?
はぁ……と一つため息を漏らしてしまいました。
ユリシーズ様のお屋敷から帰る馬車の中です。ため息をついても誰も咎めないでしょう?
「お嬢様、ため息とは珍しいですね、先ほどの……」
侍女が声を掛けてきました。私が小さい頃から一緒にいてくれる仲のいい侍女です。
「あら、そうよね……ニナは聞いていたものね」
婚約者とは言え、未婚の男女が二人っきりと言うわけにはいきませんものね。
******
お互いの事を知っているから愛が芽生えると思うんだ」
「はぁ……」
「私はベッカー子爵家のエイラの事をもっと知りたいと思っている」
******
「旦那様にご相談したらいかがですか?」
ニナが心配してくれているようでした。それもそうですわよね。あんなバカバカしい会話を侍女が聞いて納得するわけもありませんものね。
「そうね、お母様の体調は回復されてきたけれど、お母様に心配をかけたくないものね。お父様に相談してみるわね。ありがとうニナ」
そう言ってはみるものの、ユリシーズ様は格上の侯爵家、こちらから婚約の解消を告げても良いものか……。
そう物思いに耽っていると、伯爵家に到着しました。
馬車を降りようとすると、すっと手を出されてきました。良く見慣れた手です。
「姉様、おかえりなさい。どうでした? お茶会は」
「ただいま、どうしたの? ヒューが出迎えだなんて」
にこりと笑みを浮かべて出迎えてくれたのは一つ下の弟のヒューバードでしたわ。
「僕もさっき帰ってきたところ。母様に花を持って行こうと思っていたんだ。姉様選んでくれない?」
「えぇ、そうね一緒に選びましょう」
お母様は起き上がれるまで元気になられた。お母様が元気がないと屋敷が暗くなるような気がします。
暑気あたりだと言われて、休めば治るとの事でした。今年の夏は異常に暑いですもの。
「ピンクやイエローの元気になりそうなお花にしましょう」
「そうだね、明るい色がいいね」
******
「あら、チェリーにヒュー? 二人揃ってどうしたの?」
お母様のお部屋に行きますと、お母様は起き上がってお茶を飲んでおられました。
「お母様、もう体調はよろしいのですか?」
とても元気そうに見えました。元々お母様は明るい元気な方ですので、暑気あたりで体調を崩されるなんて初めての事でした。
「母様、これお見舞いです。姉様と選んできたんですよ」
ヒューがアレンジメントした花瓶を窓辺に置きました。
「あら、ありがとう。もう食欲も戻ってきたのよ。素敵なアレンジメントね、二人ともありがとう。心配かけてごめんなさいね」
長居するのも病み上がりのお母様に悪いと思い、少しお話をして失礼しました。
「姉様、今日はどうだった?」
そういえばさっきもヒューはお茶会の事を気にしていたわね。顔に出ていたのかしら?
「……そうね、いつもと変わらず、」
「嘘だね! 何か言われたんでしょ?」
鋭いですわね……もしかしてヒューは何かを知っているのではないかしら?
「ヒューこそ何か隠しているんではなくて?」
「……この前の夜会で、ユリシーズ様がベッカー子爵令嬢といるところを見たんだ」
「まぁ……。そうだったのね」
「だから心配で、今日何か言われたんじゃないかって、姉様に言えなくてごめんなさい」
「良いのよ。お父様にご相談をしようと思っていたのだけど、ヒュー話し相手になってくれる?」
「うん、勿論! それで、ユリシーズ様はなんて?」
話が長くなりそうだったので、サロンでお茶をする事にしました。
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