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息抜きに街へ行きます

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「……と言う事なの」

 先ほどあったユリシーズ様との話をヒューに聞かせました。


「ユリシーズ様ってバカなの!? 招待状もみていないとか! 開いてないなんて……」


 呆れるような、驚いたような怒りが感じられました。


「本当よねぇ……お話をしていたらバカバカしくなってきちゃって。誕生日にはユリシーズ様からは何もなかったけれど、弟のシリル様からはカードをもらったわよ」


 シリル様は、ヒューと同級生で友人でもあります。いつも私のことを気にかけてくれて誕生日には、毎年カードを送ってくださいます。

「姉様の誕生日にはユリシーズ様じゃなくて代わりにシリルを呼べばよかった……」

「ヒューったら何を言っているの。家族だけのささやかな誕生日だったでしょう? シリル様に無理を言ってはいけませんよ?」


 ふふっ。と笑いヒューの頭を撫でた。私の代わりに怒ってくれてありがとうと言う気持ちを込めて……。

「姉様はいつまで僕を子供扱いするつもりですか?」


 恨めしそうにこちらをみるヒューの顔はそんな顔をしながらも嫌そうではないのよね


「そうねぇ。ヒューが結婚するまでかしら」


 にこりと笑い、手を止めた。するとヒューは閃いたように


「まだお昼を過ぎだばかりです。街へ出掛けましょうか? 新種の苗が販売されている店へ行ってみたいと言っていましたよね?」


「あら、良いの? 疲れているのではなくて?」

 今日は剣術のお師匠様の元へ行っていたと聞いたのだけれど。


「今日師匠の元へ行ったのは、師匠のお孫さんが生まれたから、シリルと祝いの言葉をかけに行っていたのです、ですから疲れてはいません」


「そう? それなら遠慮なく、出かけましょうか」

「はい」


 我が家の王都の屋敷から街までは馬車で二十分ほど。

 道は整備されているので、あまり揺れる事なく街へと着きました。


 これが凸凹道だとしたら、お尻が痛くて苦痛になるのです。

 石が車輪にぶつかったら、馬車が横転なんて事故もそこそこあるのです。

 雨が降った後のぬかるみに車輪がはまろうものなら、最悪ですもの……。

 馬に刺激を与えてはなりません。ほどほどに走りほどほどに休憩を取らせるのは大事なことです。


 馬車一つとっても単なる移動手段ではなく、心地の良い空間にしたいとクッションカバーを交換してくれたり、ポプリなどを置いて癒しの空間を作ってくれるのです。



 私は恵まれていますわね。





 婚約者以外の人間には。





「姉様、はいお手をどうぞ」


「あら、ありがとう。ヒューも立派なジェントルになったのね」


 そう言ってヒューの手を取りました


「ありがとうございます、それではレディ行きましょう」

 
 ヒューの腕を軽く組み歩き出し、少し遠回りして散歩をしながら街を散策しました。




 犬を散歩させているマダム、最近流行の自転車に乗る人達。街は賑やかで、でも穏やかな空気が流れています。


「良い天気ねぇ」


 日傘を差しながらヒューを見ます。姉の私から見ても、中々美男子イケメンだと思う。
 私と同じ透き通るようなグレーアッシュの髪色に藍色の瞳を持ち、真っ直ぐに伸びた鼻筋は美男の証と言った感じですわね。



「あそこね?」



 この街で一番大きな大きなフラワーショップです。花の苗は勿論、切り花も観葉植物も園芸用品に至るまで種類が豊富なお店に胸が高まりました。


 ワクワクとしながら、苗を見てまわります。ガーデニングが趣味と言っても、広いお庭を維持しているのは庭師です。
 庭にスペースを設けてもらって、庭師に相談しながら、ちまちまと植物を育てているのです。



「姉様このハサミはどう? 特殊加工が施されていて軽い力でも簡単に使うことが出来るそうだよ。ストッパーも付いているし、ケガの心配も少ないんだって」


 ヒューがそう言って持ってきてくれたハサミはハサミ自体が軽くて確かに使いやすそうでした。重いものより軽いものが良いですものね。 


「本当ね。頂こうかしら、いつも付き合ってくれるニナ侍女の分と二つね。色違いにしましょう」


 それからは観葉植物を見て周り、お目当ての花の苗を手に入れて、併設のカフェに入る事になりました。


 このカフェは様々なグリーンに囲まれて、お茶が飲める癒しの空間です。


 さっきまであんなことがあったのに、自然に笑みが漏れてくるから不思議です。

 ヒューとお話をしながらお茶をしていたら声をかけられました。



「ヒュー、チェリー」


 振り返るとそこには



「「シリル」様」


 ユリシーズ様の弟でした
 














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