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プロローグ

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「お互いの事を知りたいと思う所から愛が芽生えると思うんだ」

「はぁ……」


「私はベッカー子爵のエイラ嬢の事をもっと知りたいと思っている」


「……左様でございますか」


「チェルシーとは婚約者として一緒に過ごしてきたが、少しでも私のことを知ろうと思ってくれたことがあるか? エイラは私のことを知ろうと努力をしてくれるんだ」

「そうですか、それは、それは……」


「チェルシーは私の事をどれだけ知っている? 興味がないのではないか?」

「ユリシーズ様が思っているほど知らないわけではないと思いますよ?」


「では、私の誕生日は?」

「十一月七日でございましょう? 毎年パーティーをしていますわよね?」


「そうか……正解。それでは私の趣味は?」

「乗馬……遠乗りがお好きではないですか?」


「そ、そうか、正解。っそれでは私の好きな色は?」



「紫色ですよね……ご自身の瞳の色ではないですか?」

「そうか……それではだな、」





「ユリシーズ様仰いましたね、私が貴女を知ろうとした事があるかと……」

「あぁ……それが何か?」




「それでは質問ですよろしいですか?」




「あぁ、いいよ」

「質問その一、私の誕生日は?」

「……夏だったよな、確か……」

「えぇ」

「いつだった……?」

「七月四日ですわ」

「……終わっているじゃないか!」


「そうですわね」

「なぜ言わない?」

「なぜ? 逆にどうして覚えていないんでしょうか?」

「……あれだ! 誕生日パーティーをしていないじゃないか? 毎年していた! そうだろ!」

「今年はお母様が体調を崩していますので、盛大なパーティーは開きませんでしたが、屋敷でささやかなパーティーをいたしました」

「私は誘われていないということか?」


「そこの机の上に私の家からの招待状が置いたままですわね」



「……これか」

「質問その二」

「悪かった」

「それでは私の趣味は?」

「あれだ! おまえはよく美味そうに菓子を頬張っているから、食べることだろう?」

「……もしそうであっても、女性にそう言ったことを言うのはおやめになったほうがよろしいかと……。デリカシーが問われますわね」

「……すまん。趣味はなんだ?」



「ガーデニングですわ」

「……そう言われてみれば、花が好きだったか……。女というものは花が好きなものだな」

「女というものはという決めつけるような言い方は貴方の人格が疑われますわよ」

「そういうものなのか……気をつけることにしよう」

「あら? そこは素直ですのね」

「反省すべき点だな」



「質問その三」

「…………あぁ」

「私の好きな色は?」

「紫色!」

「なぜそう思われるのですか?」

「なぜって私の瞳の色だから」

「なぜ、私が貴方の瞳の色を……」

「よく紫色のドレスを着ていただろうが!」

「貴方が贈ってくるからでしょうに……」




「……何色が好きなんだ?」

「グリーンですわよ。癒されますもの」

「……そういうことは早く言ってくれよ」

「と、言うことを踏まえて申し上げますけれど、お互いのことを知りませんので愛が芽生えるわけもございませんわね」


「尤もな意見だ」

「ユリシーズ様はエイラ様のことをどれだけご存知なのでしょうか?」









 ……。



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