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シリルの反撃
「僕があんたと? 冗談じゃない! あんた趣味じゃないし興味がない。兄上ぼぉっとしてないでさ不快だからこの女連れてってくれない? それに早く家を出る準備もしてください。子供が産まれるんでしたよね」
シリル様の顔は見れませんでしたが、背中からも怒りが感じられるようでした。
「シリル! 誰に向かって言っているんだ! 私は兄だぞ!」
「はぁ…。兄上が残念なおかげで、チェリーと婚約できたのでそこだけは感謝します。兄上は分かっていらっしゃらない……おじいさまに、フルーリー伯爵家との関係を聞いていたでしょうに……」
「……なんの話だ?」
「昔フルーリー伯爵家の領地に雨が降らずに困っていた時に、おじいさまが手を貸し助けたんだ」
「それがどうした? フルーリー伯爵が感謝しているという話だろ?」
「……その後、ウォルター侯爵領が被災にあった時は率先してフルーリー伯爵家が支援をしてくださった」
「お互い様と言うことだな」
「うちの領地で栽培している沢山の果物はその時に伯爵領の人が作物の作り方のレクチャーを村人にしてくださったから。ワインを作る際のノウハウも含めて! 時間はかかったけど、村人に生きる為の糧を授けてくれた。今でもお互いの領地での交流会も含めて親くしているだろ?」
「それが?」
「フルーリー伯爵家は厳しい生活を余儀なくされた村人にただ支援するだけではなく、生きるための知識を与えてくださった。この話を聞いた時に僕は頭が下がる思いをした」
「農民とはそういうものだろ?」
「おじいさまは感銘を受けて、自分の子供の世代では無理だから孫の世代にフルーリー伯爵家に女の子が生まれたら、ウォルター侯爵家を継ぐ男児と婚約をして欲しいと言ったんだ」
「私が家を継ぐからチェルシーと婚約が決まったのか……」
「なんで? 初めて聞く話ではないでしょうに……。だから僕はチェルシーと婚約できなかったのに!」
「そうか……。分かった」
「そういう事、だから、」
「よし! チェルシーは本妻でエイラは愛人! それなら私は侯爵家を継ぐ事が出来るんだな。みんなハッピーになれるではないか?!」
しーーーーーんっ……と静まり返る室内
「ふっざけんなよっっ!!」
前侯爵様の先程の怒声によく似ていました……
まさかシリル様の声とは……
大人しくて優しいシリル様が……
ユリシーズ様の胸ぐらを掴み、それだけで人を殺せそうな殺気を感じましたわ。
騎士団で鍛えられていると言うのは間違いではないようです。
シリル様にこんな殺気を向けられたらやっていない罪も認めそうなくらいの気迫でした。
「良い加減な事を言うなよ? 言っていい事と悪い事がある! いい加減自分たちの置かれた状況を把握するべきだ!
ベッカー子爵令嬢、貴女のことは兄の妻というだけで義姉と呼ぶことはない。
僕やチェリーをこれ以上侮辱するのであれば、侯爵家の名の元に叩き潰すことも可能だ。ふざけた事を抜かすのなら、結婚の支度金もなしだ。今後一切うちからの援助はないと思え! いいな? 兄上! 子爵令嬢?」
「シリル、本気で……」
嘘だろ? と言う顔をするユリシーズ様ににこりと笑みを浮かべ
「僕は冗談は嫌いなんだ」
ユリシーズ様の胸ぐらをどんと押し、ソファの背もたれに押し付けました。そしてユリシーズ様に顔を近づけ耳の近くでボソッと何かを呟きました。
「ひぃっ!」
身を縮めて驚くユリシーズ様
「話はついたようだ。父上、母上、おじいさま、おばあさま、お時間を取らせました」
にこりといつもの優しい笑みを浮かべたまま、シリル様は私の元へとやってきました。
「父上、あとはお願いしますね。僕はこれからチェリーとフルーリー伯爵の元に挨拶に行ってきますね」
「フルーリー伯爵によろしく伝えてくれ」
「はい。失礼します」
何事もなかった様にシリル様はいつもの優しいお顔に戻られました。
二面性があるのかしら? でもいざというときは頼りになりますね。
……素直にかっこいいと思いましたもの。
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