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ウォルター侯爵夫妻
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「単純すぎないか? ユリシーズは煽てると実力を発揮するタイプだったが、まさかこんな結果になるとはな……」
侯爵が夫人に言う
「相手のエイラさんも相当単純ね……。このまま煽てていけば、ユリシーズは子爵家に行っても大丈夫な気がしてきましたわ。どこで間違ったのか、私の教育が悪かったのですわね……」
夫人がなんとも言えない顔をした
「いや。私にも原因がある。それよりもシリルは大丈夫だろうか……ユリシーズのようにはならないよな?」
「あの子は騎士団に入って将来は自分で生計を立て生きていこうと思っていた子ですもの。ユリシーズのように甘えた考えはないでしょう」
「そうだな。シリルには可哀想な事をした。まさかチェルシーをあんなに思っていたとは……」
「初恋の相手と結ばれた事の方が社交界ではより好まれそうな話題ですわね……」
「私達だけは、運命の出会いだとユリシーズとエイラ嬢に言い続けよう。愛のために爵位を弟に譲ったんだ……」
「そうですわね。チェルシーが侯爵家に嫁いでくれるのは嬉しいですし、フルーリー伯爵との約束も守れましたものね」
「チェルシーがシリルと婚約してくれて、安心したよ。シリルも初恋が実って良かった」
ウォルター侯爵夫妻が執事を呼び、支度金の用意を急がせた。
その後ウォルター侯爵家では夫人主催のお茶会が何度も開かれた。
ユリシーズとエイラの真実の愛、そしてお家騒動については愛を貫く形になったと。
エイラへの愛ゆえに弟に爵位を譲り子爵家へ婿に行くことになったのだと。
シリルの初恋が実り侯爵家の後継がシリルになった事を話しすると、ウォルター侯爵家の兄弟の話はあっという間に広がった。
「やぁチェルシー!」
「あら、ユリシーズ様、ご機嫌よう」
どうして侯爵家にいるのかしら? 子爵家へ婿に行ったはずですのに。
「なんだか雰囲気が変わったようだ、明るく見えて別人のようだね」
紫色を着なくなったからですわね。私には似合わない色でしたのね。紫色を着ると私の顔色が悪く見えるのです!
でもね今は違います。好きな色の服を選べますもの。
「今の方が優しい感じがして柔らかくて良いね」
「ありがとう存じますわ」
元婚約者でシリル様のお兄様だとしてもこのまま二人で話すのはあまり褒められた行為ではございませんね。
「ユリシーズ様とエイラ様の運命のお話はとても有名になっていますわね。お子様ももうすぐお生まれですし、待ち遠しい事ですわね。それでは失礼致します」
頭を下げて笑顔でユリシーズ様から離れようとしました。
「運命ではなかったよ。エイラは私の侯爵家と言う地位にしか興味がなかったんだ。渡したプレゼントは売って現金にするし、私のことを理解しようとはしない。こんな事ならチェルシーと婚約関係を、」
「そこまで!」
恐ろしい笑顔をしたシリル様が私の肩を抱きしめました。
「チェリーはこんな戯言を聞く必要がない。耳が腐ってしまうからね。兄上は子が生まれるのに、チェリーにちょっかいをかけるのか?」
逞しいシリル様の腕の中は心地が良いです。この腕の中は私の居場所になりますのね。
「シリル様、」
シリル様を見上げて名前を呼びました。
「なに?」
「好きですよ」
「な、なに? 急にっ!」
顔を赤くしてオロオロする様子は見ていて可愛いらしいです。
「ユリシーズ様の心変わりのお陰で、私にも愛おしい人ができた事をお礼申し上げます」
「チェリー、どうしたの?」
シリル様にパチパチと瞬きをして、合図を送ります。すると分かっていただけた様で、うん。と頷きましたわ。
「だってユリシーズ様のおかけですもの。ユリシーズ様がエイラ様と運命の出会いしなかったら、私がシリル様と婚約することもなかったでしょう? ユリシーズ様とエイラ様の真実の愛があってこそですもの! さすがユリシーズ様だと感謝していますのよ」
「ん? まぁ、そうなるのか……私のおかげ、か?」
「お互いに幸せになりましょうね。ありがとうございますユリシーズ様! 何もかもユリシーズ様のおかげです! さすがユリシーズ様ですわね」
「まぁ、そうだな、そうなるな、うん」
チェルシーとシリルはウィンクをした
「僕は兄上の子供が生まれるのを実は楽しみにしているんです。尊敬する兄上の子供ですから、きっと子爵家の優秀な跡取りになる事だと思います。その前に兄上が、子爵家を今よりもっと繁栄出来ると信じています。兄上は僕なんかより優秀ですから」
「あぁ、そうだな! 見ておくがいい、私は元侯爵家嫡男、ユリシーズ・ウォルターだ。はっはっはっ!!」
本当はユリシーズ・ベッカーだけど、この際細かいことは気にしないでおきましょう。
ユリシーズ様がここまで単純な方だったとは思いませんでした。結婚をする前で本当によかったと心から思いました。
この方法は侯爵様から習ったもの。もしユリシーズ様とエイラ様に絡まれる事があったら、褒めて褒めて調子に乗らせるという作戦です。
シリル様と結婚して後継が生まれるまでは、褒めて褒めて調子に乗らせる作戦で行きたいと思います。
侯爵家の後継が生まれたら、侯爵様は夫人と領地でのんびり暮らすとの事でしたので、当主がシリル様になるまでの間の作戦ですわね。
当主がシリル様になったらきっと、自由にこの屋敷に出入りすることは不可能になりますものね。
してやったり顔で、シリル様と微笑み合いました。
******
次回【最終】となります。
侯爵が夫人に言う
「相手のエイラさんも相当単純ね……。このまま煽てていけば、ユリシーズは子爵家に行っても大丈夫な気がしてきましたわ。どこで間違ったのか、私の教育が悪かったのですわね……」
夫人がなんとも言えない顔をした
「いや。私にも原因がある。それよりもシリルは大丈夫だろうか……ユリシーズのようにはならないよな?」
「あの子は騎士団に入って将来は自分で生計を立て生きていこうと思っていた子ですもの。ユリシーズのように甘えた考えはないでしょう」
「そうだな。シリルには可哀想な事をした。まさかチェルシーをあんなに思っていたとは……」
「初恋の相手と結ばれた事の方が社交界ではより好まれそうな話題ですわね……」
「私達だけは、運命の出会いだとユリシーズとエイラ嬢に言い続けよう。愛のために爵位を弟に譲ったんだ……」
「そうですわね。チェルシーが侯爵家に嫁いでくれるのは嬉しいですし、フルーリー伯爵との約束も守れましたものね」
「チェルシーがシリルと婚約してくれて、安心したよ。シリルも初恋が実って良かった」
ウォルター侯爵夫妻が執事を呼び、支度金の用意を急がせた。
その後ウォルター侯爵家では夫人主催のお茶会が何度も開かれた。
ユリシーズとエイラの真実の愛、そしてお家騒動については愛を貫く形になったと。
エイラへの愛ゆえに弟に爵位を譲り子爵家へ婿に行くことになったのだと。
シリルの初恋が実り侯爵家の後継がシリルになった事を話しすると、ウォルター侯爵家の兄弟の話はあっという間に広がった。
「やぁチェルシー!」
「あら、ユリシーズ様、ご機嫌よう」
どうして侯爵家にいるのかしら? 子爵家へ婿に行ったはずですのに。
「なんだか雰囲気が変わったようだ、明るく見えて別人のようだね」
紫色を着なくなったからですわね。私には似合わない色でしたのね。紫色を着ると私の顔色が悪く見えるのです!
でもね今は違います。好きな色の服を選べますもの。
「今の方が優しい感じがして柔らかくて良いね」
「ありがとう存じますわ」
元婚約者でシリル様のお兄様だとしてもこのまま二人で話すのはあまり褒められた行為ではございませんね。
「ユリシーズ様とエイラ様の運命のお話はとても有名になっていますわね。お子様ももうすぐお生まれですし、待ち遠しい事ですわね。それでは失礼致します」
頭を下げて笑顔でユリシーズ様から離れようとしました。
「運命ではなかったよ。エイラは私の侯爵家と言う地位にしか興味がなかったんだ。渡したプレゼントは売って現金にするし、私のことを理解しようとはしない。こんな事ならチェルシーと婚約関係を、」
「そこまで!」
恐ろしい笑顔をしたシリル様が私の肩を抱きしめました。
「チェリーはこんな戯言を聞く必要がない。耳が腐ってしまうからね。兄上は子が生まれるのに、チェリーにちょっかいをかけるのか?」
逞しいシリル様の腕の中は心地が良いです。この腕の中は私の居場所になりますのね。
「シリル様、」
シリル様を見上げて名前を呼びました。
「なに?」
「好きですよ」
「な、なに? 急にっ!」
顔を赤くしてオロオロする様子は見ていて可愛いらしいです。
「ユリシーズ様の心変わりのお陰で、私にも愛おしい人ができた事をお礼申し上げます」
「チェリー、どうしたの?」
シリル様にパチパチと瞬きをして、合図を送ります。すると分かっていただけた様で、うん。と頷きましたわ。
「だってユリシーズ様のおかけですもの。ユリシーズ様がエイラ様と運命の出会いしなかったら、私がシリル様と婚約することもなかったでしょう? ユリシーズ様とエイラ様の真実の愛があってこそですもの! さすがユリシーズ様だと感謝していますのよ」
「ん? まぁ、そうなるのか……私のおかげ、か?」
「お互いに幸せになりましょうね。ありがとうございますユリシーズ様! 何もかもユリシーズ様のおかげです! さすがユリシーズ様ですわね」
「まぁ、そうだな、そうなるな、うん」
チェルシーとシリルはウィンクをした
「僕は兄上の子供が生まれるのを実は楽しみにしているんです。尊敬する兄上の子供ですから、きっと子爵家の優秀な跡取りになる事だと思います。その前に兄上が、子爵家を今よりもっと繁栄出来ると信じています。兄上は僕なんかより優秀ですから」
「あぁ、そうだな! 見ておくがいい、私は元侯爵家嫡男、ユリシーズ・ウォルターだ。はっはっはっ!!」
本当はユリシーズ・ベッカーだけど、この際細かいことは気にしないでおきましょう。
ユリシーズ様がここまで単純な方だったとは思いませんでした。結婚をする前で本当によかったと心から思いました。
この方法は侯爵様から習ったもの。もしユリシーズ様とエイラ様に絡まれる事があったら、褒めて褒めて調子に乗らせるという作戦です。
シリル様と結婚して後継が生まれるまでは、褒めて褒めて調子に乗らせる作戦で行きたいと思います。
侯爵家の後継が生まれたら、侯爵様は夫人と領地でのんびり暮らすとの事でしたので、当主がシリル様になるまでの間の作戦ですわね。
当主がシリル様になったらきっと、自由にこの屋敷に出入りすることは不可能になりますものね。
してやったり顔で、シリル様と微笑み合いました。
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次回【最終】となります。
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