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ラウロ

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~ラウロ視点~


「早く起きなさいよ!この役立たず!」
 朝から妻になったカミラから叩き起こされた。少々顔は整っている方かも知れないが優雅さのかけらも無い、人を労る気持ちもないガサツな女だ

「ベッドが硬くて中々寝付けないんだ。ようやく眠りについたばかりだったのに」
 今は朝の五時を過ぎたばかり、まだ外は薄暗い

「今日からあんたには市場に行ってもらうから、用意して!」
 市場といえばあの人でごった返す騒がしいところか…商人とはあんな仕事をするのか?

「なぁ、ベック商会は知っているか?同じ商人の」
 
「ベック商会の事だったらうちと同じ並びにならないわよっ!とても手広く商売をされていて、この仕事を出来るのもベック商会のおかげなんだからっ!商売の神様と呼ばれている方よ」

 カミラから聞く話によると、先代の伯爵の時代は闇市場が開かれていて、無秩序な場所だったらしい。 
 そこを買い上げ庶民が安心して買い物を出来るように私財を投げ打って新たに整備したようだ。
 その場所の近くに、造船業で儲けた金で輸入品を取り扱う店を更に整備したと言う。

 現在の王都の発展に一役買ったのがベック家であり、国の信頼も厚いのだと聞いた


「伯爵様はよく視察に来られていて悪い点はすぐに正して下さるの。意見が採用された者には褒賞まで与える、あんな貴族もいるのね…最近は伯爵の代わりに息子さんと婚約者さんも視察に来られていて、あんたみたいな態度だけデカイ貴族とは大違いよ」

「私を愚弄するのか!このっ」

「ふんっ!あんたは読み書きは出来るんだから、代筆の仕事もしてもらうから、働かない夫なんてうちには要らないの、出ていってもらっても良いのよ!」
 腰に手を当て恐ろしい顔をする、朝から頭痛がする


「離婚するとなるとお前に傷がつくだろう、良いのか?」

「傷ですって?バカ言ってるんじゃないわよ!隣の奥さんだって離婚しているし向かいの奥さんもしているの!あんたが居た貴族社会じゃどうか分からないけど、の事なのっ!働かないなら出て行ってもらうから覚えておいて!」

「お前の親父がうちの高貴な血を望んだんだろうが!」

「家名も名乗れないような元貴族でしょうが!妻一人満足に出来ない夫なんて要らない!バカにするんじゃないわよ。不良債権じゃない!時間がもったいないから早く起きなさいよ!」

 信じられない女だ…平民の暮らしとはこんなものだったのか…商人の娘とバカにしていたが、これが本当の商人の暮らしだったとは……
 

「ラウロさんおはよう、卵を取ってきてくれ、ついでにトマトやきゅうりもね!」


 カミラの母だ。朝から大きな声を出すなよ。私をこき使うとは…
 カゴを渡され家に隣接した畑に野菜を取りに行く。

「ひゃあ!」

 虫がいっぱいいるじゃないか!!気持ち悪ぅこんなものを庶民は食うのか…無理だ

 卵を取りに行くと鶏につつかれ、酷い思いをした…こんな思いをするのはライラのせいだ!あいつらが我が家に来てからロクなことがないっ!

 今頃のほほんと修道院で過ごしているんだろ!



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