田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました

さこの

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その後

ルシア

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「ようやく見えてきたわね」

 ミランダ伯爵の領地から海を越えた国へ


「はい。追手も間に合わなかったようですね。こんなこともあろうかと、徐々に財産をこちらに移してきておいて良かったです」


 計画が上手くいっている事でミランダ伯爵がほくそ笑む


「今頃、あちらはどうなっているかしらねぇ? レオはバカね、お人好しというか、素直と言うか……私に騙されるように悪徳男爵の当主になったんだもの」


「ルシア様は、ご主人のことを好いていらしたのですか?」


「愛していたわよ。だから私のものにしたの。イケメンで優しくて、頼りないところが魅力的だわ」


 アイリをカジノに誘ったのは私。だけどその後は自ら賭け事にハマって身を滅ぼした。嬉しい誤算だった。
 どうやってアイリとレオを引き離そうかと思っていたんだもの。




「結局レオとの子供は出来なかったのが残念だけど、この国で新しい人生を始める事に、」


 急に静かになったので、あたりを見回した



「あれ? ミランダ伯爵?」


 今ほど近くにいて話をしていた筈なのに、返事がない。


「ねぇ、そこのあなた」


 ガタイが良いとは言えないが、鍛えられた体躯の男に声をかける。
 ミランダ伯爵が取引先の国から連れてきた男だった。




「はい、何か?」


「ミランダ伯爵は? 今までここにいたでしょう?」


「伯爵は船内にお戻りになられましたよ」



「あら、そうなの? もうっ! 一言くらい声をかけても良いのに! 私一人でしゃべっていたじゃないの……失礼しちゃうわね」


「お戻りになりますか? ご案内いたします」



「そうね。風が冷たいわ」


 後ろを振り向いた瞬間に意識がなくなった……何か首元にチクリと痛みが走った?











「……んっ、」


 ここは? 


 薄暗くてじめじめとした場所で手足を縛られていた。




「起きたか?」



「だれ?」



 暗くて声の持ち主の姿が見えない



「名乗るつもりは無い」




「ここはどこ?」




「君たちが目指した国といえば理解できるだろう」



「……そう。私と一緒にいた男性はどこにいるの?」




「別室にいる。何か用でも?」




「彼の屋敷に行くつもりだったの。なぜ私はこんな所で縛られているのかしら?」


 身動きが取れない。手足の紐がどんどんキツくなってきている……



「君は交渉に使えそうなんだけれど、余計な事は言ってほしく無いからここで死んでもらおうと思う」



「私が? なぜ死ななくてはいけないの? この国に利益をもたらした功労者よ!?
 クスリを流通させたのはお父様。カジノで儲けたお金で、ミランダ伯爵と手を組み港まで整備したのよ!」


 苦労したんだからっ! そう口に出そうとした


「余計な事は言ってほしく無いんだよね。君の国では死刑がないだろ? でも君はこの国に逃げてきた。君の身柄はうちにあるからね、君を処理した方がこちらとしては都合が良いんだ。君の父親もこちらで処分させて貰った。罪は死んで償う、それがうちの国のルールだ」


「お父様はこの国に来ていないわ!」



「隣国に逃げたからね。その辺は抜かりなく処分したよ。君も君の父親も血縁関係のない人間を当主にして逃げてきた。
 君の夫は罪を償うべく大人しく捕まったそうだ。彼の身柄はあちらにあるのだから、こちらからは何もしない。
 もし彼と君の子がいるのなら、処分しようと思ったが、血の繋がりがないらしいから、」



「ルネは私の子ではないわ! 全くの無関係よ! 夫と平民の間に産まれた子だもの! 手を出しても意味はないわ!」



「そうみたいだね。手は出さないと約束しよう。と言っても、二度と会うこともないだろうがね、今日が君の最後の日だ」



「何か最後に言いたい事はあるか?」



 唇を噛み締めた、血が滲んできた。レオとルネを連れてこなくて良かった。
 人が落ちていく姿を見ているのが楽しいだなんて、バカだったわ。



 私が此処で死んでも誰も悲しまない。私の死を知って喜ぶ者は居ても……



 そして破産していく男たちにクスリで病んでいく貴族達……私は何様になったつもりだったのだろう

 ふふっ、バカみたい。結局は欲しい物は手に入らなかったのに。

 何度も身体を重ねても、心は手に入らなかった。


 ただレオに愛されたかった、やり方を間違えていたけれど、結婚すれば手に入ると思っていたのに。


 評判の悪い私に、他の人と態度を変えずに接してくれたのがレオだった。




 優しいけれど、優しくない、だってその優しさはあの子セイラを傷つけた


 婚約者がいたって知らなかった、知った時は婚約破棄後。
 愚かな男、あの子の事好きだったくせに、バカみたい



 子供に恵まれなかったけど、レオに似たルネは可愛いと思っていた。
 
 


 此処で私の命が終わりなら、それで良い。こんな薄汚い場所で終わるは癪だけど。



 最後にレオの顔を思い出した。





「……ないわ」



「ふーん。泣いて命乞いをすると思ったのにな、ざんねん」


 暗くてこの男の顔は見えないけれど、思いっきり睨んだ。





「やれ」


「はっ」
 

 近くに居た大男が切れ味の良さそうな刃を向けて来た。








  



「これで君たちと、この国は関係ない」



 転がった頭を見下ろしながら



「処分して」




「はっ、陛下」




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