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学園にて

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~ヘルミーナ~

ロングバケーションも終わり、学園へ復帰することとなった。
 婚約者の顔を見るのは気がひけるけど、クラスは違うから、顔を見ないようにしなくちゃ
 何かにつけて文句を言われたことを思い出した…


 国に戻ってきたことが王家に報告され、王宮へ呼び出され、恐れ多いことですが陛下と王妃様から謝罪を受けました。

 全面的にフランク婚約者が悪いのだから、堂々と過ごして欲しいと言われました。

 学園へ通うのは憂鬱だけど、今日はティーナも留学初日ですもの。休むわけには行けません。ランチの約束もしました

 ティーナから貰ったペンケースはとても繊細な刺繍が施してあり、ケース自体も縫い目が均等で本当に素晴らしい出来で、ティーナが作ったと言うだけで大金を払うくらいの付加価値はありそう…そしてこの万年筆。

 絶対高価な物だわ。

 クオーツで花を作り、良く見るとキャップの上部に宝石が付いてるじゃない…わたくしのイニシャルも彫ってあるし。公爵家では普通なのかしら…?お礼としてプレゼントする品物ではないわよねぇ…絶対に失くせない


 学園についてからティーナを案内しようと、学園の馬車止めで待ち合わせをしました
公爵家の紋章の付いた見るからに質のいい馬車が止まった…白い馬はとても目立つ…おそらく公爵様がティーナの為に用意したっぽい

 馬車の扉が開きティーナが降りてくると思ったら、ニコラウス様が先に降りてティーナの手を取りエスコートした

「やぁオーバリ侯爵令嬢、良い朝だね」
「ミーナ、おはようお待たせしたかしら?」
 二人とも大変さわやかな笑顔で挨拶をしてきた…


「おはようございます、時間通りよ。ところでニコラウス様はどうされたんですか?」

「初日だから送りに来たに決まっているだろう?学園長に挨拶へ行く」

「は、はぁ…わたくしも用事がありますので、お供します…」


 ティーナも大変ね…実のお兄様方もティーナに、甘かったけどニコラウス様と公爵様はそれを遥かに超える…過保護。
 こんなに甘やかされて育っているのに、驕らずに素直で優しくて可愛いって奇跡ね、こんなに甘やかされて育っていたら傲慢になりそうなのに…


『ミーナごめんね、またお兄様が来ちゃった。今日だけだから』
 ひそひそと話をするティーナを学生達が興味津々で見ていた

『良いのよ、これから毎日学園でティーナと会えると思うと嬉しいわ』

 ティーナは目立つ、美しさだけではなくピンクの髪の毛は、ルアン王国では女神の祝福と呼ばれているのよね…しかも紫色の瞳は、高貴な出じゃないとあり得ない、血統の良さ
 

 学園長にティーナを頼むと話をして、ニコラウス様が渋々帰って行った。学園長はわたくしの顔を見て

「大変だったね、悪く言うものも中には居るかもしれないが、堂々と過ごして欲しい」

 両陛下と同じ事を仰られました
学園長は王立学園というだけあって、王家の親戚から、選ばれているので仰ることも似るのかしらね

 でも、そう言うなら、ティーナと同じクラスにしてよ!心の中で毒を吐きました

 よりによってティーナのクラスは忌々しいフランク第二王子殿下と同じクラス
 あぁ、嫌な予感しかしない



 ランチを取る為に待ち合わせ場所で待っていると、ティーナが急足でやってきた
「ごめんね、待った?」
「ううん今来たところ、どう?クラスの様子は?」
 ランチルームに向かって歩き出した

「…転校してきたばかりだから、学園を案内してくれるらしいの」
「そうね、転校生が来たら誰かが世話人になるわね。ティーナにはそれなりの人が付くわよね?」


 学園では皆んな平等というけどれど、実際は身分差がある。
 平等と言って全てを真に受けて捉える者は愚か者だわ

「…それが、」
「アルベルティーナ嬢ここに居たのか」

「…うわっ」
 つい心の声が漏れた、なんで第二王子フランクがティーナを呼び止めるのよ!

「…ヘルミーナ、嬢。久しぶりだ、ね」
 戸惑う様子のフランク様に気まずい雰囲気が流れた。あっ…後退りした…


「お久しぶりです」
スカートの裾を摘み他人行儀に挨拶をした

「アルベルティーナ嬢、知り合いなのか?」
 フランク様はこちらを見ないようにしてティーナに声をかけた

「はい、こちらでの初めてのお友達ですの」
 ティーナがはっきりと答えた事により複雑な顔をするフランク様


「そうか、君の世話役としてランチに誘おうと思っていたが、またにするよそれでは後ほど」

「えぇ、お気遣いありがとう存じます」
 ティーナと共に頭を下げた


「フランク様が世話人なのね…」

「そうなのよ…お断りできないでしょう…」

 困った顔をするティーナを見て、少しだけ申し訳ないと思った
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