38 / 100
急変する天気
「なんで急に雨に降られてしまったのかしら……あんなに天気が良かったのに」
今日はハリスと王立の図書館へ来ていました。図書館の近くにある裁縫専門店で買い物をして、図書館で合流する予定です。図書館までは目と鼻の先にあるので一人で大丈夫よ。なんて言ったのが間違いでしたわ……
はぁ。っと肩を落とす……またハリスに呆れられちゃうわ。
「止まないわね……」
雨音は嫌いではないけれど、少し肌寒くなってきました。
「はぁっ……」
……待ち合わせの時間までもう少し。どうせ濡れるのなら走って馬車まで行こうかしら? 馬車の中にタオルは用意されているわよね……
雨の中、走る事を決意して王立図書館を見る。
「うん。距離的には近い……はず!」
走り出そうと思った矢先に声をかけられる。
「失礼。お嬢さんもしかしてこの雨の中、傘も差さずに出て行こうなんて思っていませんよね?」
騎士服を着た大きな男性に声をかけられた。
「……はい、急いでますので」
素直に答えたました。すると驚いた顔をされてしまいましたわ。
「それは感心しませんね。季節の変わり目は体調を崩しやすい。お嬢さんのような細身の体では家に帰る頃には雨に濡れて異変が出るかもしれない。お転婆もほどほどにしないとご両親が心配されますよ」
バリトンボイスのハスキーな心地の良い声の方だわ……
「弟と待ち合わせをしているんですの」
「急いでいるのも理解しますが、弟君も濡れ鼠のような姉を見たら驚くだろうね」
くっくっくっ……と笑われてしまいました。少しむすっとした顔をしてしまいましたわ。レディを笑うなんて! それに濡れ鼠だなんて!
「あぁ、すまない。不快な気持ちにさせてしまったかな? この傘を持っていきなさい」
男性が差していた傘を渡される。
「それはいけませんわ! 貴方様が体調を崩してしまいますわ」
「崩れるようなやわな身体ではないんだよ。君よりも随分と鍛えている」
服の上からも鍛えているのが分かる体躯でしたけれど。
「いえ、でも」
「こんな無骨な傘は嫌かな? 時間があるのならお嬢さんに似合いのフリルの傘を買ってプレゼントしたいところなのだが生憎、仕事中の身なのでそれは叶わないな」
「お仕事中でしたら、尚更お借りすることは出来ませんわ」
「困っている人を助けるのが私の仕事だよ。君は今確実に困っている。ほら」
そう言って傘を渡された。女性物より大きくて重い傘だった。
「よし、これで任務完了だ」
「あ、待ってください。お名前を……」
言いかけたところで、走り去ってしまった。歩幅が大きいのであっという間に遠ざかって行く後ろ姿……
「優しい方……」
お借りした大きな傘を差して図書館へ向かいました。
「急に雨が降ってきたからどうやって姉様を迎えに行こうかと考えていたんだよ……どうしたの、この傘?」
図書館へ無事着きますとハリスが心配していました。
「騎士様にお借りしたの」
「……何が一人で大丈夫なんだか。姉様はしっかりしていそうで抜けているよね」
ハリスがどんどん成長していますわね。抜けている姉をサポートしてくださいな。
「それでその騎士様の名前は? 借りたものはちゃんと返さなきゃ」
「それがね、お名前をお伺いする前に、行ってしまわれて聞けなかったの……どうしようかしら」
抜けている姉でまた呆れられるわね。
「……借りたままというわけにはいかないけど、そろそろ迎えもくるからとりあえず帰ろうか」
「そうね。そうしましょう」
今度また街に来て、先程の騎士様を探してみようかな。
******
「今帰ったのか、急な雨で驚いたね。ようやく止んだか」
お父様とエントランスで会いました。
「お父様、どこかにお出かけですか?」
「あぁ、そのつもりだったんだが急ぎではないから、またの機会にしようと思ってたんだよ。君たちがまだ帰らないから雨で足止めになったのかと心配していた所だよ」
道がぬかるむと馬車は使えなくなりますものね。雨は嫌いではないけれど、それと同時に怖くもなりますわ。
「そうだ、父上に聞いてみたら?」
ハリスがお借りした傘を指さしていました。実は馬車の中でよく見てみると家紋が刺繍されていたのです。黒い傘に黒の刺繍でしたので目を凝らさないと分からない程でしたわ。
「お父様、今日──」
お話をすると傘を預かって調べてくださるそうです。良かったですわ……大きな傘はきっと高価なものだと思いました。お顔を拝見しようと思ったのですが、帽子をかぶっていて、しかも雨で暗くて良く見えなかったのです。
「せめて何かヒントとかないのかな、もう少し情報が欲しい所だ」
……お父様も呆れていますわね。
「あ! とても身長が高くて鍛えられた体躯でしたわ! ハスキーな声も覚えています」
「……そうかい。なんとか探してみるよ」
なんだかごめんなさい。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)
婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません
黒木 楓
恋愛
子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。
激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。
婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。
婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。
翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。
悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした
みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。
会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。
そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。
【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」
婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。
ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。
表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723)
【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19
【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+
2021/12 異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過
2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
性格が嫌いだと言われ婚約破棄をしました
クロユキ
恋愛
エリック・フィゼリ子息子爵とキャロル・ラシリア令嬢子爵は親同士で決めた婚約で、エリックは不満があった。
十五歳になって突然婚約者を決められエリックは不満だった。婚約者のキャロルは大人しい性格で目立たない彼女がイヤだった。十六歳になったエリックには付き合っている彼女が出来た。
我慢の限界に来たエリックはキャロルと婚約破棄をする事に決めた。
誤字脱字があります不定期ですがよろしくお願いします。