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グレイソン
初恋拗らせ系?
しおりを挟むリュシエンヌがエリック殿下と踊っている姿を見ている。何やら親しそうに見えるのは気のせいだろうか。そうあって欲しくないと思えば思うほど、そう見えてしまう。
「閣下の奥様は可憐な方ね。エリック殿下は奥様が初恋の人なんですって。知っていた?」
「いえ。存じ上げません」
好きだったのは知っていたが、初恋拗らせ系だったんだな。
「あら。そうだったの? 親戚同士で奥様を好きになっちゃったのね」
「結果そうなんですかね……エリック殿下はリル王国での評判はどうですか?」
話を変えよう。エリック殿下はうまくやっていると言っていた。女王の評価はどうなんだろうか?
「エリック殿下はイケメンですもの。国民からの人気も高いわよ。執務においても励んでいるわ」
「そうですか」
元々真面目な性格だし、女王もさっぱりした性格だ、上手くやっているのだろう。
「少し遠慮してくるところはあるから、その件については困っているわ。後継の問題もあるし国民も望んでいますもの」
「それは授かりものですから……」
言葉に詰まるな。
「女性から迫るのは閣下としてはアリ? ナシ?」
アリだろ。好きな女性から(ましてや妻)迫られて嬉しくないわけない!
「エリック殿下も、迫って良いのかどうかと悩んでいるのかもしれません。妻から誘われて断るようなら、離縁して国に返せば良いのです。その時殿下の居場所はないでしょうがね」
「ふふっ。それは困るわね。閣下のアドバイス通りに誘ってみようかしらね」
「良いと思います」
「やはり血は争えないわね、そういうところって似るのかしら」
ぼそっと女王が言った。
「何か言いました?」
「いいえ? この国に新婚旅行に来たのは陛下と王妃様にお礼とご挨拶に。エリック殿下は、急いでリル王国に来る事になったでしょう? だから一度帰国させてあげたくて来たのよ」
「優しいですね。女王陛下」
「エリック殿下の事を調べさせたら忘れられない女性がいたようで、ちゃんとお別れはしたけれどその後が気になっていたようだから、結婚して子供もいて幸せな姿を見ることが出来て良かったんだと思うわ。心のつかえもとれたでしょうね」
「女王にはそういう方はいなかったのですか?」
これだけ心が広くて美しい女王だ。浮いた話もあっただろう。
「いなかったわ。身も心も捧げるのは夫になった人だけ。と言われ育ってきたわ。女だからと馬鹿にされたくもなかったし、恋愛にうつつを抜かす暇があれば、国のことを考えていたわ」
「それでは現在エリック殿下の事は、」
「夫があの人で良かったと思っているわよ。失恋した事とか、少し甘いところとかも育て甲斐があるし文句も言わずについて来てくれる。一緒にいて心地が良いのよ」
「そうですか。それを聞いて安心しました。エリック殿下は甘やかされて育ってきましたが、久しぶりに殿下を見て成長したな。と差し出がましいようですが思っていました」
「そう? それはエリック殿下の努力の証ね」
女王はこうして夫を立てるのか。エリック殿下は素晴らしい女性と結婚したな。
「そうですね。失礼しました」
胸に手を当て頭を下げた。
「閣下と話をしているとついペラペラと話をしてしまうわ。ふふっ。少し酔ったのかも」
「お水をお持ちしますか?」
「いいえ。気分よく酔っているから気にしないで。閣下とは友達になりたいわね。お話しやすくて真面目で浮気の心配もないから、安心よね」
突然何を……
「それは……私なんかには勿体無いお言葉です」
女王と友達……恐れ多いな。
「グレイソン様、お待たせしました」
リュシエンヌが戻ってきた。エリック殿下とのダンスは優雅で美しかった。
「お待たせ。グレイソン殿と何を話していたの? やけに楽しそうだったね」
「あら? ヤキモチかしら。それなら嬉しいわね」
「ん? 飲みすぎたのか? 王宮へ戻る? 挨拶はすんだし」
「そうね。予定より少し早いけど戻りましょうか?」
それでは私も。と言おうとした。
「本日閣下はここで任務を終わらせる事。今日はもう疲れたから閣下の顔を見たくないのよねぇ」
「いやいや、私はあなた方の護衛ですよ!」
勝手なことを言われても困る。
「護衛は他にもいるわよ? そこの貴方、閣下の上司がいたわよね? 連れてきて」
女王が上司と話をしている。
「閣下は私達が訪問する前から今日まで力をつくしてしてくれましたし、ここ数日は睡眠を削っています。今日はここで解散としてまた明日からお願いしますわ。よろしいですわよね?」
「女王陛下がそう仰るのなら」
「ということで、閣下今日はここで解散ね。夫人それではまた」
リュシエンヌが女王とエリック殿下に挨拶をした。
「いや、まずいですよね!」
上司に言う。
「護衛は他にもいるし、女王陛下がそう言ってくださるのなら、言葉に甘えなさい。グレイはここ数日まともに寝てないだろ。寝るのも仕事だ。夫人と久しぶりにゆっくりしなさい」
ポンと肩を叩かれた。
「夫人、グレイをしっかり休ませてやってください」
上司が言って、リュシエンヌと共にこのまま実家に泊まることになったからパーティーを抜けてニコラの顔を見に行った。数日ぶりに見るニコラはなんだか成長したような気がした。子の成長というのはなんと早いものか……
女王陛下に感謝だ。
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