真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの

文字の大きさ
4 / 22

王宮でパーティーがあります(サロモン)

しおりを挟む
 なぜなんだ……
 婚約が白紙になってからは彼女の事ばかり考えてしまう。

 私と一緒に過ごしていた時にはそんな笑顔を見たことがない……
 そのような屈託のない笑顔を私に向けられた事がない……
 なんなんだっ、そのはにかんだ笑顔は……
 イライラする……


「サロモン様ー!サロモン様ー」
 アニエスに呼ばれる
 

 ……大きな声を出すんじゃない

 ……廊下を走るな

心の中の葛藤がますます大きくなる……


「なんだ?」
「どうされたの? お顔が怖いですよ?」
「いや、なんでも、ない」
「そうですか? 来週のパーティーはサロモン様が私と一緒に行ってくださるんですよね?」

「はっ? なぜ?」
「えっ? だって婚約を破棄されたんでしょ? 私のために……ドレスも用意して下さったし」

 ……そうだった、いつもの通り彼女と行くつもりでいてしまった……

「そうだな、迎えに行くよドレスは完成したのか?」

「はいっ!私がデザインしたんですよ!」
「そうか、それは楽しみだな……」

 茶色の瞳がワクワクとしていてまるで、小さな犬のような可愛さだ、同じ色のふわふわとした髪も犬っぽい。


 彼女とは大違いだな…
 艶やかなピンクゴールドの美しい髪の毛に、透き通るようなヘーゼルの瞳、真っ白な肌……まるで高貴な猫の様だ……


「サロモン様!」
「なんだ?」
「最近考え事してる事多くないですか?」
「そうか?ここは人の目が多すぎるな、少し離れてくれるか?」

「……どうして?私と一緒にいる為に婚約を破棄してくれたんでしょ?」

 ぷくっと頬を膨らませるアニエスの顔が子供っぽくて目を逸らす。


「そうだよ、すぐに相手が変わったと思われるのは私たちの為に良くないだろう? だから学園では今まで通り、忍んで会おう」

「いつか堂々としても良いんですよね?」
「……あぁ」

 この場はアニエスと別れる
 なぜか非常に疲れてしまう……
 真実の愛とは何だろうか……



王宮に戻ると陛下に呼ばれた
「失礼します」
部屋へ入ると彼女の父親が控えていた
「サロモン、婚約破棄の書類が提出されてしまったぞ…王妃が嘆いておる」

「えっ!こんなに早く?二日も経ってないのに…」
納得できないと言う顔をするサロモン
「サインをしたのはお前であろうに…」
信じられないと言う顔をするサロモン
「サインをした後もゆっくり考えさせてくれるとセレスティーヌは言っていたのに…」

「バカなことを!セレスティーヌはもう我が娘だと思っていたんだ…」
がくりと肩を落とす陛下

「我が娘は殿下を応援したいと申して身を引いたのです。陛下…殿下と真実の愛のお相手を認めて差し上て下さい…そうすれば娘も報われるでしょう」

「宰相!待ってくれ、セレスティーヌは」
「殿下、娘とはもう関係がなくなりましたので名前を呼ぶのは控えていただきましょうか…お相手の方に申し訳がない」

「私にセレスティーヌを…バイエ侯爵令嬢と呼べというのか?」
「そうなりますな…」
「十年間も共に過ごしたのにかっ!」
「それは真実の愛の前では秤にかけてはなりません」
「…くそっ!気の迷いだ!セレスの事を嫌いになったわけではないんだ!むしろ、」
「聞きたくありませんでしたね、そんな戯れ言は!貴方の言う真実の愛とはその程度だったとは…」
キッとサロモンを睨む宰相 

「…サロモン、会いたくはないがパーティーでエスコートをするんだろう?その時に子爵令嬢を見させてもらう」
「………は、い」










しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

あなたの明日に寄り添いたくて

豆狸
恋愛
「リューグナ? おい、リューグナ、どうした?……リューグナーっ!」 ──私の持っていた赤葡萄酒を浴びて、男爵令嬢は死んだ。

愛は、これから

豆狸
恋愛
呪いだよ、とクリサフィスは呟くように言った。 「カシア嬢は呪われていたんだ」 「莫迦な。ヴァトラフォス大神官が違うと言っていたんだぞ? わかった。呪いは呪いでもあの女がフィズィを呪って返された呪いなんだろう?」

婚約破棄の翌日に復縁を迫られても困ります。

豆狸
恋愛
「婚約破棄の翌日では遅過ぎたのです」

初恋を奪われたなら

豆狸
恋愛
「帝国との関係を重視する父上と母上でも、さすがに三度目となっては庇うまい。死神令嬢を未来の王妃にするわけにはいかない。私は、君との婚約を破棄するッ!」

今夜で忘れる。

豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」 そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。 黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。 今はお互いに別の方と婚約しています。 「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」 なろう様でも公開中です。

傲慢令嬢にはなにも出来ませんわ!

豆狸
恋愛
「ガルシア侯爵令嬢サンドラ! 私、王太子フラカソは君との婚約を破棄する! たとえ王太子妃になったとしても君のような傲慢令嬢にはなにも出来ないだろうからなっ!」 私は殿下にお辞儀をして、卒業パーティの会場から立ち去りました。 人生に一度の機会なのにもったいない? いえいえ。実は私、三度目の人生なんですの。死ぬたびに時間を撒き戻しているのですわ。

この世で彼女ひとり

豆狸
恋愛
──殿下。これを最後のお手紙にしたいと思っています。 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

処理中です...