お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの

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曖昧な記憶

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「そうですか、記憶が曖昧に…」

フェリシアの父クリスタル伯爵がエクトルに目が覚めた後の事を説明する

「はい、階段から落ちた時に頭を打った事が原因でたまにあるそうです…記憶が戻るか戻らないかはなんとも言えません。フェリシアはしばらく休養させます、陛下にもそう伝えるつもりです」

「そうか…」
一言答えるのがやっとだった。
フェリシアと思いが通じてこれからだという時だった。
階段から落ちたと聞いて心臓が止まるかと思い執務もそこそこに伯爵家に行った時には頭に包帯を巻き、痛々しい姿で眠っているフェリシアがいた

「一部の記憶だけがないんだな?」
婚約者である自分を忘れられていたことにショックを隠せないエクトル

「はい…元々はアリシアがいなくなった事が原因です。エクトル殿下、申し訳ございませんがこのような状態の娘を嫁に出す事は出来ません…婚約を破棄してくださっても構いません」
指をギュッと握り頭を下げてくる伯爵

「婚約破棄はしない。それをいうならうちの兄がフェリシアにちょっかいをかけるから…兄の婚約者を追い詰めたんだ…うちにも原因がある、私がフェリシアを守れなかったんですよ。だから伯爵頭を上げてください」

「いえ、しかし」
「頭を上げてください。また明日フェリシアが目覚めたら会いに来ます。婚約破棄はしません」
扉を開けて帰ろうとしたらファビオがエクトルを待っていたようだ。

「どうした、何か用か?婚約破棄なら頼まれてもしないからな」
はぁっとため息を吐くエクトル

「いや…そうではない。妹の事をお願いします。記憶が戻るか分からないが、貴方に妹を頼みたい、この通りだ」

深々と頭を下げるファビオ。フェリシアの事を大事に思っている事がひしひしと伝わってきた。ぽんとファビオの肩に手を遣るエクトル
「顔を上げてくれ、明日またフェリシアに会いにくる」



王宮に戻り両親に、記憶が曖昧でアリシアの行方がわからない事と、婚約をした事を覚えていないという話を話した。
エクトルと初めて会った日からのエクトルの記憶がないそうだ。
婚約式や夜会に出席したことも覚えてないと言う。表向きには貧血と婚約して以来の緊張で倒れたという事になった。


階段から落ちたことも落とした相手も、もちろん内密となっている。
こんな事が世間に知れたら、処罰は王家、侯爵家、リリアナ軍団の家やいなくなったアリシア捜索にも至るだろう

そしてエミリオとエクトルも婚約は解消され、貴族からの反発もあるだろう
クリスタル伯爵は公にはしてほしくないと言い侯爵家はそれを飲んだ。
慰謝料を払うという侯爵家に対して、受け取りを拒否した伯爵家、リリアナは謹慎中でとても反省をしているとの事だった。


両陛下との話が終わり廊下を歩いているとエミリオに呼び止められた
「エクトル、フェリシアが目を覚ましたと聞いたが…」
見るからに顔色が悪い


「はい、私が行った時には、疲れたのかまた眠ってしまったので明日見舞いに行ってきます」
素っ気ない態度だとは思うが仕方がない。兄のエミリオのせいではないが、エミリオの顔を見たくない

「そうか…はやく元気になるといいな」

「えぇ、兄上はご自身の婚約者殿のケアをなさってください、それでは失礼します」
踵を返し足早にエミリオに背中を向けた

「エクトル!」
何か言いたそうだったが、今は落ち着いて話をできる自信がなかった

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