18 / 22
晩餐会
しおりを挟む晩餐の場へと行くともうすでに皆が先に着いていた。
嘘の時間を告げられたようでした。
「ミシェル遅かったのね、皆さんお待ちかねよ」
公爵家が家族でいらして四名、別の公爵夫妻に、ジュール殿下とプリシア王女の友人である侯爵家の子息令嬢が二名ずつ。
ジュール殿下に王女殿下合わせて十名が私達を待っていらしたと言う事です。
「お待たせしてしまって申し訳ございませんでした。慣れぬ場所での準備に戸惑ってしまいました。お詫び申し上げます」
深々と頭を下げた。高位貴族の皆さんは頭を下げられるのが大好きですもの。
「すまないね。時間を間違えたようだ。私は慣れないのだが頭をそのように下げれば良いのかな?」
ウェズリー様がおっしゃると公爵様たちは一斉に立ち上がり焦って席に座るようにと勧めてきた。
ウェズリー様に頭を下げさせるなんてできないでしょうしね。
男女別れて席が用意されていました。公爵たちがウェズリー様を接待するようです。ジュール殿下もいらっしゃるので嫌な予感? です。
晩餐が始まり談笑が始まるともちろん私に集中砲火です。
「ミシェル様はこちらははじめてですか?」
公爵夫人の一言から始まった。
「えぇ。素晴らしい場所ですわね」
「わたくしたちは毎年お呼ばれされていますのよ。どうやって忍び込めたか、あらいやだ。ウェズリー殿下の婚約者でしたわね。ほほほ」
「陛下からお誘いいただけてお邪魔いたしましたの。お部屋のバルコニーからは見晴らしも素晴らしいですわね。とても広く天井も高くてさすが貴賓室と言った感じでした」
「まぁ! そのような場所を陛下が伯爵家のご令嬢に使わせるとは……驚きですわ。あらいやだ忘れてましたわ。ウェズリー殿下の婚約者という事を、おほほほほ」
まるで虫けらを見るような目ですわね。
「その不思議なドレスはどうされましたの? 我が国の誇りを忘れられたのかしら? 南の国でその汚れたようなピンクは流行りの色なのかしらぁ?」
公爵令嬢が言いましたわ。
「こちらのドレスは南の国特有の生地を使っております。軽くて柔らかくて動きやすいので気に入っております」
「まぁ! 動きやすいだなんて……何をなさるおつもりかしら、給仕でもされるとか?」
おほほほほ……何が面白いのやら周りの人たちが笑いましたわ。
「南の国の王妃様からプレゼントされましたのよ。まさか給仕服と間違われるなんて……王妃様に申し訳がたちませんわ。わたくしが着こなせていませんのね」
さぁーっと顔を青褪める令嬢
「汚れたようなピンクとおっしゃいましたか? 王妃様のお名前が付いたバラの色ですの。南の国では王妃様から賜われた物によく使われる色なのです。ご存知ないのも当然だと思いますけれど」
さらに顔色を変え青から白に……
「少しばかり緩やかなドレスですよね? 腕をそんなに出されていますし」
胸元を強調し身体を締め付けたドレスを着た方に言われても……腕が出ている程度なのに。侯爵令嬢の胸元を見る
「とても涼しいですのよ。体を締め付けていないので、晩餐を美味しくいただけますし」
コルセットをつけていないと言いたいのでしょう。
南の国のコルセットは簡単なものが多くて腰回りを必要以上に締め付けないおかげで美味しく食事をいただけます。
「まぁ! たくさんお召し上がりになるのですわね」
この国のパーティーなどではコルセットで締め付けられているせいか、淑女の食事は極端に少ない。
「ウェズリー殿下は美食家ですので美味しいものを食べに連れて行ってくださるので、少しサイズが大きくなって困っていますの」
極端に少ない割に高位貴族の紳士淑女の体型は大きめと言った感じです。
こちらの侯爵令嬢も……。
美味しく食事をした後は、身体を動かします。馬術を習いウォーキングは常にしていますので、体型はキープです。
この国の令嬢はしない事だと思いますけれど。南の国では普通のこと。
「ミシェルの話はとても楽しいわね。王妃様から頂いたドレスの話に南の国のお話、どれも素敵な話ですわね」
王女殿下が周りを鎮めるように言った、もちろん周りは待ってました。と言わんばかり
「こちらは高位貴族しか入れない場所だと言うのに伯爵令嬢がいる事にまず驚きました。 いくらウェズリー殿下の婚約者とは言えまだ婚姻を結んでおりません。貴女はただの伯爵令嬢です、貴女が一番身分が低いのですよ、お分かり?」
「えぇ、勿論です王女殿下」
「この国の晩餐でそのドレスを着ているのは何故かしら? 失礼だとは思いませんか?」
「わたくしはこの国の人間ですが、ウェズリー殿下と婚約をした以上、心はすでに南の国へ嫁いでいます」
しーん。としているので、この受け答えは離れたテーブルのウェズリー様にも聞こえている事と思います。
「聞いたところによると貴女、とんだ浮気者らしいじゃない? 自国の王子から他国の王子へと乗り換えるなんて……ウェズリー殿下の愛もそれくらいのものでしょう? ウェズリー殿下もたかが伯爵令嬢を良く妃に迎えようとしたものだわ」
くすくすと周りが笑い出す。
「側室は無理でも愛人になら迎えてあげても良かったんですわよ。わたくしにはそれくらいの広い心はありますのよ」
あぁ……この方は王妃様の悪意を全面で受けてこられたんだわ。
この方もこの国に慣れる為に必死だったのかもしれない。そう思うと可哀想な方だと思った。王族を含め高位貴族には愛人がいることが多い。
でも血統を重んじるので、愛人が産んだ子は居ないものと見做される。
正妻に子供が産まれない場合のみ子供として認定される。
この国では普通の事なのだ。
848
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました
ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」
大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。
けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。
王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。
婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。
だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。
恋人でいる意味が分からないので幼馴染に戻ろうとしたら‥‥
矢野りと
恋愛
婚約者も恋人もいない私を憐れんで、なぜか幼馴染の騎士が恋人のふりをしてくれることになった。
でも恋人のふりをして貰ってから、私を取り巻く状況は悪くなった気がする…。
周りからは『釣り合っていない』と言われるし、彼は私を庇うこともしてくれない。
――あれっ?
私って恋人でいる意味あるかしら…。
*設定はゆるいです。
せめて、淑女らしく~お飾りの妻だと思っていました
藍田ひびき
恋愛
「最初に言っておく。俺の愛を求めるようなことはしないで欲しい」
リュシエンヌは婚約者のオーバン・ルヴェリエ伯爵からそう告げられる。不本意であっても傷物令嬢であるリュシエンヌには、もう後はない。
「お飾りの妻でも構わないわ。淑女らしく務めてみせましょう」
そうしてオーバンへ嫁いだリュシエンヌは正妻としての務めを精力的にこなし、徐々に夫の態度も軟化していく。しかしそこにオーバンと第三王女が恋仲であるという噂を聞かされて……?
※ なろうにも投稿しています。
幼馴染と夫の衝撃告白に号泣「僕たちは愛し合っている」王子兄弟の関係に私の入る隙間がない!
佐藤 美奈
恋愛
「僕たちは愛し合っているんだ!」
突然、夫に言われた。アメリアは第一子を出産したばかりなのに……。
アメリア公爵令嬢はレオナルド王太子と結婚して、アメリアは王太子妃になった。
アメリアの幼馴染のウィリアム。アメリアの夫はレオナルド。二人は兄弟王子。
二人は、仲が良い兄弟だと思っていたけど予想以上だった。二人の親密さに、私は入る隙間がなさそうだと思っていたら本当になかったなんて……。
【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます
衿乃 光希
恋愛
卒業パーティーの最中、婚約者から突然婚約破棄を告げられたシェリーヌ。
婚約者の心を留めておけないような娘はいらないと、養父からも不要と言われる。
シェリーヌは16年過ごした国を出る。
生まれた時からの側近アランと一緒に・・・。
第18回恋愛小説大賞エントリーしましたので、第2部を執筆中です。
第2部祖国から手紙が届き、養父の体調がすぐれないことを知らされる。迷いながらも一時戻ってきたシェリーヌ。見舞った翌日、養父は天に召された。葬儀後、貴族の死去が相次いでいるという不穏な噂を耳にする。恋愛小説大賞は51位で終了しました。皆さま、投票ありがとうございました。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?
3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。
相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。
あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。
それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。
だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。
その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。
その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。
だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。
私が家出をしたことを知って、旦那様は分かりやすく後悔し始めたようです
睡蓮
恋愛
リヒト侯爵様、婚約者である私がいなくなった後で、どうぞお好きなようになさってください。あなたがどれだけ焦ろうとも、もう私には関係のない話ですので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる