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リディアーヌと兄
しおりを挟む取り敢えず教室から抜け出せた。ディータが追いかけてこなくて良かった!
あ! ディータって先程の迷惑男、元婚約者の名前。
ディータと婚約したのが一年ほど前! 急に決まったのよねぇ……。入学する少し前に我が家に来て初めてあったのよ。
あちらの家からの申し出だったらしいのだけどね。初めて会った時からいけすかない男だったわ。偉そうで、ナルシストで、会話も自慢話ばかり!
今我が国では婚約破棄が流行っている。普通なら婚約破棄された側に悪いところがあって、傷物になりそれ以降相手は中々決まらなかったりするものだけど、流行りだからと婚約破棄する輩がいるものだから、破棄された側も傷物にはならないのよ。
あの子ディータという男は、流行が大好き! いえ、大好物なのよね。
よく女の子は流行りが好き! とか流行りについていかないと! という気持ちがあるものでしょう?
流行の先端を知っていないとお茶会の話題についていけないもの。
○○店がチョコレートの新作を出した!
△△店のデザインのドレスが素敵である。
□□の本が新刊で出た! 等……全てを網羅して居ないと真の令嬢とは言えないの!
私は流行りには正直言って疎い方だ。昔馴染みの店が好きだというのもあるけれど、行列に並んでまで物を買う。と言う面倒な事ができない。
昔から愛用しているお店の方が安心できるし、信頼できるんだもの。
……でも流行りのスイーツを貰ったら嬉しいですのよ。普通の女の子ですもの。
ディータときたら、流行りのスイーツに、流行りのスーツ、流行りの髪型に、流行りのコロンを振り掛ける。
そうなったら見分けが付かないの! それくらいの存在。
『リディアーヌ、もっと流行りのものを身につけろ、みっともない……。なんだ? これも知らないのか? 恥ずかしい奴め!』
流行り流行りに流されて、なんかダサい! もちろん私だって流行りのものを持つことも有れば、身につけることもあるわよ! でもスタンダードの中に少し取り入れるくらい! 流行り物なんて来年使えないかもしれないのに……勿体ないもの!
それを言うと……貧乏くさい奴め! と言われたわねぇ……。
そもそも価値観が違ったもの。流行りに乗って婚約破棄をしてくるような男、こっちからゴメンだわ!
伯爵家の迎えは学園が終わった頃にやってくる。なので、急用や急病の際に使える学園の馬車を使わせてもらうことにした。
体調が悪くて……。と熱のこもった演技をすると一番いい馬車を貸してくれた。
体調がすぐれないのだから、揺れが少ないものが良いと言われた。ラッキー!
早速お家に帰って、両親に報告することにした。
お父様は一昨日領地から帰ってきたばかりなので、家にいるはず……お兄様も、いるわね、きっと。
学園の馬車で送ってもらったので、お礼を言い家に入ろうとすると、メイド達が驚いていた。帰る時刻には早いもの。
「お嬢さま、どうかなされたのですか!」
「お嬢さま、お早いお帰りで……」
「お父様にお話があるの、いらっしゃる?」
「執務室においでます。言付けて参ります」
「ありがとう。先に着替えてくるわね」
私の侍女にも声をかけに行ってもらった。
着替えようと部屋に向かっていると
「リディ、学園はどうした?」
「お兄様、少しトラブルがあって帰ってきたの。いまから着替えてお父様にお話に行くところよ」
お兄様は、私に甘い。お父様やお母様よりもうんと甘い。激甘なの。
「それはもちろん私も聞いていい話だよね?」
「……えぇ、お兄様にも聞いてもらいたいわ!」
もしお父様に、婚約破棄を反対された時は、お兄様を味方にするしかない。お兄様は私に結婚なんてしなくていい! と昔から言っていたもの。
「リディ、目が赤いどうしたんだ?」
まだ泣いた事を引きずっているのね……慣れないことをしたから。
「お兄様しか味方はいないの。リディのわがまま聞いてくれる?」
「もちろんだ! 世界を敵に回してもお兄様だけはリディの味方だ!」
よし、言質は取った!
「着替えてくるからお兄様は先にお父様のと所で待っていてね」
「あぁ! 待っているよ」
******
「お父様、リディアーナです。失礼します」
「入りなさい」
部屋に入ると、お兄様はすでにソファに座っていらしたわ。
お兄様のお隣に座りました。お兄様は満面の笑みを浮かべています。
味方になる人の近くにいる方が、後々の為ですわ。
「話とはなんだ? それに学園はどうした?」
「はい、実は……ディータ様から婚約破棄を言い渡されましたの。しかも教室でみんなの見ている前で……わたくし、わたくしは……」
ここでも同情してもらわないと、婚約破棄は無効になりそう……
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