恋を歌う機械人形《アンドロイド》の感情

6

　そんなロイドでも、どうしても充電に頼らなざるを得ない状況があった。それは、自身の再起動のときである。

　アンドロイドは、設計上どうしてもある程度の稼働時間が経過すると熱を溜め込んでしまいやすくなっている。その間は壊れやすくなってしまうため、ロイドは定期的に再起動をして稼働しない時間をある程度作っている。しかし、再起動中は食事ができない上にエネルギーを大量に使ってしまうため、充電以外の選択肢はなかった。

　明日は仕事が休みのため、ロイドはひっそりと再起動をする予定だ。今夜中に始めてしまおうと思い、急いで着替えを終えて店の外に出た。

　数歩進んだところで、何かがロイドの前を遮った。

「よぉ、ロイド」

　そこにいたのは、先ほど帰っていったはずの男であった。

　待ち伏せしていたのか。恐怖で脚が震えつつも、ロイドは少し後ずさった。

「あ、あの……どうして？」

　ロイドは恐る恐る問う。

　すると男は、ロイドが反応してくれたことが嬉しかったのか、笑みを浮かべて口を開いた。

「お前が終わるのを待ってたんだよ。なぁ、明日は休みだろ？　せっかくだから俺のところへ来いよ」

「こ、困ります……。あなたと僕は、お客様と店員です」

「少しくらいいいだろ？　せっかくだからさ……」