恋を歌う機械人形《アンドロイド》の感情

まつのこ

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 今まで待ち伏せするまでの迷惑行為はなかった。ロイドはあまりの嫌悪感と恐怖で、立っているのが精一杯になってしまった。

 その間にも男の手が近付いてくる。

「っ……」

 このまま男の家に連れていかれるのだろうか。

 ロイドが思わず目を閉じたそのときであった。

「おい」

 すぐ横から男のものとは違う、低い声がした。新たな存在に恐怖が増し、目を開けられなかった。だが、いつまで経っても男が触れてこないことに気付く。

 そっと目を開けてみると、そこには金髪の男がいた。彼は男の手首を掴みながら、男を鋭く睨んでいた。長身のせいかとても迫力がある。

「くっ……何だよ。てめぇには関係ねーだろ」

「確かに関係ないな。だが、嫌がってるように見えて手が勝手に動いちまったもんでな」

 違ったらすまない、と言いつつも、男には微塵も間違っていないと主張する気配が感じられる。

 男の表情は徐々に歪んでいき、金髪の男の手を思い切り振り払った。

「チッ……邪魔しやがって」

 男は舌打ちして逃げるように去っていった。

 ロイドは呆然と目の前を眺めていた。男という危機が去ったとようやく実感したときには、自らが震えていたことに気付いた。

 もし目の前の彼がいなかったら。考えるのを止めるべきだとは思いつつも止められない。

 すると、彼はロイドの方を向いた。
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