【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻

文字の大きさ
112 / 123

112. 蒼き獅子騎士団

しおりを挟む
 心臓が激しく脈打つ。これは、自分が知るアウグスト公爵の言葉ではない。断じて違う。あの方は厳格ではあったが、誰よりも家族を愛していた。

 シエル様が生まれた日、涙を流して喜んでいたあの方が。

 幼いシエル様を膝に乗せ、絵本を読み聞かせていたあの方が。

 こんな非情な命令を、下すはずがない。

 数ヶ月前から、公爵の様子がおかしかった。

 時折見せる、人間味のない判断。感情の欠けた瞳。そして微かに漂う、禍々しい魔力の気配。長年仕えてきたギルバートだからこそ、その変化に気づいていた。

 けれど、何もできなかった。

 アステリア家への絶対的な忠誠を誓った自分に、主君を疑うという選択肢はなかった。それは自らの魂を裏切るに等しい行為だったから。騎士として、それだけはできなかった。

 拳を握りしめる。

 その拳が、小刻みに震えている。

 脳裏に、幼いシエルの姿が蘇った。

 あれは、十年前のことだった。まだ六歳だったシエル様が、訓練場に現れた。銀色の髪を二つに結び、小さな手に木剣を握りしめて。

『ギルバート! 私にも剣を教えて!』

 キラキラと輝く碧眼。その瞳には、純粋な憧れが宿っていた。

『姫様、剣術は女子のたしなみではございませんぞ』

『いいの! 私、強くなりたいの! ギルバートみたいに、誰かを守れるくらい強く!』

 その言葉に、ギルバートは胸を打たれた。

 以来、毎日のように訓練場に通ってきた小さな姫。汗だくになりながらも、決して弱音を吐かない。何度転んでも、何度打ち据えられても、すぐに立ち上がる。その瞳から、光が消えることはなかった。

『すごい! ギルバートは、どうしてそんなに強いの?』

 ある日、訓練を終えた後、シエルが目を輝かせながら尋ねてきた。

 ギルバートは膝をつき、小さな姫の頭を優しく撫でた。銀色の髪が、指の間をさらさらと流れていく。

『姫様をお守りするため、です』

 その言葉に、シエルは花のように微笑んだ。

『じゃあ私も! 私も誰かを守れるくらい、強くなる!』

 あの日の誓い。あの日の約束。

 けれど今、下された命令は――彼女を傷つけてでも、連れ戻せという命令。

 それは彼女の心を殺すことに等しかった。

 許せ、姫様……。

 ギルバートは、奥歯を強く噛みしめた。

 どうしようもない無力感が、全身を苛む。主君への忠誠と、姫への想い。その二つが、彼の魂を引き裂いていた。目頭が熱くなる。けれど、涙を見せるわけにはいかない。騎士として、それだけは許されない。

「……御意に」

 深く頭を垂れた。

 その声には、隠しきれない葛藤が滲んでいた。

「行け」

 公爵は、その一言だけを告げた。振り返りもしない。

 ギルバートは立ち上がり、部屋を後にした。

 重い扉が閉まる。

 廊下に出たギルバートは、しばらくその場に立ち尽くしていた。

 窓から差し込む夕陽が、彼の横顔を赤く染めている。握りしめた拳から、爪が食い込んで、血が滲んでいた。けれど、その痛みすら感じない。

 主君への忠誠。
 姫への想い。
 騎士としての誇り。
 人としての良心。

 それらすべてが、彼の中で渦を巻いている。答えの出ない問いが、頭の中で何度も繰り返される。

 俺は、どうすればいい。
 何が、正しい。
 姫様を……シエル様を……。

 けれど、彼は騎士だった。

 迷いながらも、命令に従うしかない。それが、彼に課せられた宿命だった。それが、騎士という生き方だった。

 ギルバートは、重い足取りで廊下を歩き始めた。

 その背中は、いつもより小さく見えた。


       ◇


 翌日――。

 朝日が、アステリア公爵家の門を黄金色に染めていた。

 巨大な鉄門が、重々しい音を立てて開く。

 そこから現れたのは、一糸乱れぬ隊列を組んだ三十名の騎士団だった。

 パッカ、パッカ、パッカ……。

 蹄の音が石畳に響く。規則正しく、まるで死神の足音のように。

 軽鎧を纏った精悍な騎士たち。蒼き獅子の紋章が刻まれた盾。陽光を反射して煌めく、磨き上げられた剣。そのすべてが、王国最強という名に恥じない、絶対的な力を示していた。

 先頭を行くのは、ギルバート団長。

 その顔には、何の感情も浮かんでいない。鉄の仮面を被ったように、ただ前だけを見つめている。けれどその瞳の奥には、誰にも見せない苦悩が渦巻いていた。

 騎士団が放つ威圧感は、血と鉄の匂いを帯びていた。

 これは訓練ではない。行軍でもない。これは――狩りだ。

 道行く人々が、次々と足を止める。誰もが道を開け、壁に背をつけて騎士団を見送る。誰もが息を呑み、言葉を失う。

「あれは……蒼き獅子騎士団……」

 誰かが、掠れた声で呟いた。

「王国最強の……何があったんだ、あんな完全武装で……」

「ただの行軍じゃない。あの目を見ろ。あれは……戦争に向かう目だ」

 周囲の人々の顔が青ざめていく。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...