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106. 耳障りな秒針
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「俺も無力化されてしまいました……」
俺の重い声に絶句するレヴィア……。その沈黙が、部屋の空気を重くする。
神妙な面持ちでレヴィアの返事を待つ――――。
アバドンも、息を殺して状況を見守っている。救出には絶対にレヴィアの力がいるのだ。なんとしても彼女を味方にせねばならない。
部屋の静けさのせいか、やけに時間が長く感じる……。秒針の音さえ、耳障りなほど大きく聞こえた。
ためらいがちな声でレヴィアは言う。
『それは……、んー……、申し訳ないが、どうもならん』
管理者同士は相互不可侵。ヌチ・ギがやる事にレヴィアは干渉できないのだ。その言葉に、俺の心に一瞬暗い影が落ちる。だがそれは想定内。俺は深呼吸をして続けた。
「わかってます。ドロシーの救出は我々でやります。ただ、救出した後、かくまって欲しいんです」
俺は丁寧に紡ぐ言葉に最大限の想いを込める。
『いやいやいや、そんなのバレたら、我とヌチ・ギは戦争になるぞ! この世界火の海じゃぞ!』
レヴィアの声には、恐怖と躊躇いが滲んでいた。
管理者権限持っている者同士の戦争……それは確かに想像を絶する凄惨な事態になりそうだ。最悪この星が壊れかねない。その可能性を考えると、背筋に冷たいものが走る。しかし、引くわけにはいかない。ドロシーの笑顔を取り戻すためなら何だってやるのだ。
「そもそもドロシーはレヴィア様の知人じゃないですか、相互不可侵と言うなら非はレヴィア様の知人を攫ったヌチ・ギ側にありますよね?」
俺は必死にひねり出した屁理屈で押す。
『うーん、まぁそう言われれば……そうじゃが……』
レヴィアの声に、少しだけ迷いが混じる。
「バレなきゃいい話ですし、バレても筋は我々側にあります!」
俺は渾身の説得をする。言葉の一つ一つに全力の想いを込めた。
『むぅ……。それはそうなんじゃが……』
あと一歩である。俺の心臓が高鳴る。
「かくまってくれたら、なんでも言うこと聞きますから!」
もう、大盤振る舞いである。
『なんでも? 昨晩彼女にやってた、あのすごいこともか? キャハッ!』
レヴィアは悪戯っぽい響きでうれしそうに笑った。
「レ、レヴィア様! のぞいてたんですか!?」
真っ赤になってしまう俺。恥ずかしさで頭が真っ白になる。
『あれあれ、カマかけたら引っかかりおったわ。一体どんなことやったんじゃ? このスケベ。 キャハハハ!』
レヴィアの笑い声が、高らかに響く。
「……。」
引っかかった俺には返す言葉がなかった。顔が熱くなってうつむいてしまう。
『まぁええじゃろう。ただし、見つからずに連れ出された時だけじゃぞ!』
「や、やたっ! ありがとうございます!!」
俺はパン! と手を叩き、立ち上がって何度も宮崎に向かって頭を下げる。
『一つ貸しじゃからな! ふぅ……』
レヴィアはやれやれといった様子で、ため息を最後に消えていった。
これでドロシー奪還計画の懸案は解決した。そして、こんなバカ話ができることの幸せに改めてみんなに感謝する。俺の心に温かいものが広がっていった。
窓の外では、朝日が完全に昇り、新しい一日が始まっていた。その光は、これから始まる困難な挑戦への希望を照らし出しているようだった。俺とアバドンは顔を見合わせ、静かに頷き合う。
こうして愛しいドロシーを救出するための、無理筋の作戦が始まったのだった。
俺の重い声に絶句するレヴィア……。その沈黙が、部屋の空気を重くする。
神妙な面持ちでレヴィアの返事を待つ――――。
アバドンも、息を殺して状況を見守っている。救出には絶対にレヴィアの力がいるのだ。なんとしても彼女を味方にせねばならない。
部屋の静けさのせいか、やけに時間が長く感じる……。秒針の音さえ、耳障りなほど大きく聞こえた。
ためらいがちな声でレヴィアは言う。
『それは……、んー……、申し訳ないが、どうもならん』
管理者同士は相互不可侵。ヌチ・ギがやる事にレヴィアは干渉できないのだ。その言葉に、俺の心に一瞬暗い影が落ちる。だがそれは想定内。俺は深呼吸をして続けた。
「わかってます。ドロシーの救出は我々でやります。ただ、救出した後、かくまって欲しいんです」
俺は丁寧に紡ぐ言葉に最大限の想いを込める。
『いやいやいや、そんなのバレたら、我とヌチ・ギは戦争になるぞ! この世界火の海じゃぞ!』
レヴィアの声には、恐怖と躊躇いが滲んでいた。
管理者権限持っている者同士の戦争……それは確かに想像を絶する凄惨な事態になりそうだ。最悪この星が壊れかねない。その可能性を考えると、背筋に冷たいものが走る。しかし、引くわけにはいかない。ドロシーの笑顔を取り戻すためなら何だってやるのだ。
「そもそもドロシーはレヴィア様の知人じゃないですか、相互不可侵と言うなら非はレヴィア様の知人を攫ったヌチ・ギ側にありますよね?」
俺は必死にひねり出した屁理屈で押す。
『うーん、まぁそう言われれば……そうじゃが……』
レヴィアの声に、少しだけ迷いが混じる。
「バレなきゃいい話ですし、バレても筋は我々側にあります!」
俺は渾身の説得をする。言葉の一つ一つに全力の想いを込めた。
『むぅ……。それはそうなんじゃが……』
あと一歩である。俺の心臓が高鳴る。
「かくまってくれたら、なんでも言うこと聞きますから!」
もう、大盤振る舞いである。
『なんでも? 昨晩彼女にやってた、あのすごいこともか? キャハッ!』
レヴィアは悪戯っぽい響きでうれしそうに笑った。
「レ、レヴィア様! のぞいてたんですか!?」
真っ赤になってしまう俺。恥ずかしさで頭が真っ白になる。
『あれあれ、カマかけたら引っかかりおったわ。一体どんなことやったんじゃ? このスケベ。 キャハハハ!』
レヴィアの笑い声が、高らかに響く。
「……。」
引っかかった俺には返す言葉がなかった。顔が熱くなってうつむいてしまう。
『まぁええじゃろう。ただし、見つからずに連れ出された時だけじゃぞ!』
「や、やたっ! ありがとうございます!!」
俺はパン! と手を叩き、立ち上がって何度も宮崎に向かって頭を下げる。
『一つ貸しじゃからな! ふぅ……』
レヴィアはやれやれといった様子で、ため息を最後に消えていった。
これでドロシー奪還計画の懸案は解決した。そして、こんなバカ話ができることの幸せに改めてみんなに感謝する。俺の心に温かいものが広がっていった。
窓の外では、朝日が完全に昇り、新しい一日が始まっていた。その光は、これから始まる困難な挑戦への希望を照らし出しているようだった。俺とアバドンは顔を見合わせ、静かに頷き合う。
こうして愛しいドロシーを救出するための、無理筋の作戦が始まったのだった。
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