48 / 56
第4章 夢幻との決戦
破魔矢の計
しおりを挟む
破魔矢と風の壁がぶつかると、破魔矢が持つ底無しの霊力によって、風の壁は跡形もなく消し飛んでしまった。
風の壁が消し飛ぶ時に上げた、断末魔の衝撃波が街村宅とその周囲を激しく揺らした。それは、窓ガラスが所々でヒビ割れるほどだった。
「······さあ、南斗六星、邪魔は消えた。宿敵の元へ急ぐぞ」
破魔矢は首輪の仙宝に戻っていった。それと同時に、我輩を包んでいた7色の霊気も、吸い込まれるように仙宝の中へ消えた。
唸りをあげていた風の壁が消えたことで、辺りには夜の静寂が訪れた。まるで、何事もなかったかのように再びコオロギが鳴き出した。秋の夜風も葉を擦らせて、自然の音楽に彩りを添える。
我輩は興奮の余韻を引きずりながら、家の中へ入ろうと玄関に向かった。普段ならドアが閉まっていて、我輩の力では入ることが出来ないが、風の壁が放った断末魔の衝撃波によってドアが少し開いていた。
我輩はその隙間に前肢を挿し込んで、更に隙間を広げると、今度は頭も隙間にねじ込んで通り抜けできる程度の広さを確保した。
そこから玄関に入ると、2階の方からしきりに怒鳴る妲己ちゃんの声が聞こえてきた。時折、その合間に夢幻仙様の狼狽した声が混ざる。
なにやら言い合いをしているみたいだった。妲己ちゃんは大丈夫だろうか? 鳥肌がたつほど毛嫌いしている夢幻仙様に、弄ばれていないだろうか? そして、何よりも主の京香はどうなっているのか? 我輩は階段を駆け上がった。
「お~い、妲己ちゃん~!、大丈夫か~!」
我輩は妲己ちゃんらが言い合っていた部屋へ飛び込んだ。胸の前を少しはだけた妲己ちゃんが、瓢箪を持って夢幻仙様を睨んでいた。霊体の夢幻仙様は覚束なく宙を漂っている。
「妲己ちゃん!、よかった、無事だったか」
「あたいは大丈夫だよ。それよりもエロ、あんた、良くやったわね。すごかったわよ、このジジイなんて、肝っ玉冷やして腰抜かしてたんだから、フフフ」
妲己ちゃんの言葉に、夢幻仙様は激しく反応した。まるで、眼が飛び出んばかりの物凄い形相で、我輩の方を凝らしている。
「な、何じゃって、エロじゃと! 風の壁をエロが消したじゃと! あり得ん、そんなこと、絶対にあり得ん!」
「それが有るんだよ、馬~~鹿! 自分の使い犬を見損なうなんて、あんたも随分と間抜けだよね。飼い犬に手を噛まれるって、この事かしら? あんた、いったいエロの何を見てたの、このアホ仙人?」
「あ、あり得ん······エロがワシの術を破るなんて、し、信じられん······」
「······夢幻、久しいな。太上老君から力を授かり、何をしているのかと思いきや、こんなことか······憐れな愚か者め」
首輪の仙宝が7色に輝き出す。灼熱に滾る7色の霊気が我輩を包み込む。7色の霊気を見たときの、夢幻仙様の驚きようったらなかった。飛び出るのでは、と思うほど眼を見開き、顎が外れるのでは、と思うほど口を開けっ広げた。
「······なんて顔をしているのだ、夢幻。お主によって封印された我が仙宝は、娘娘たちによって解放された」
「······ク、クソッ! 天狼星の破魔矢か······娘娘の小娘どもめ! こ、これでは、ワシに勝ち目などないわい」
夢幻仙様は娘娘様たちを淫猥な言葉で呪ったり、京香と直くんを凌辱的な言葉で罵ったり、かと思えば、まるで挑発しているのかと思うような、友愛的なフレーズで妲己ちゃんを怒らせ、はたまた、我輩を抱き込もうとして、脅しと甘言をろうしては、効果がなく上滑ると言った有り様で、夢幻仙様は完全に度を失っていた。
「······落ち着け、夢幻。何もお主を取って喰うわけではない」
「あたいもあんたなんか食いたくないけど、切り刻んで犬のエサになら、してやってもいいかも」
「わ、我輩はいりません······」
「な、何をごちゃごちゃ言っとるんじゃ!ワシは腐っても仙人じゃ! そんな簡単にはくたばらんぞ!」
「む、夢幻仙様、落ち着いて下さい······」
「うるさい、エロ! この恩知らずのドブ犬め!」
「あ~~あ、切れちまってるよ、醜いジジイだね~。どおりでもてないわけだわ」
「う、うるさい、うるさい! この男を知らない女狐が。今に見ておれ、ワシの虜にして、ワシ無しでは生きていけないようにしてやる!」
「······な、なんですって! あんたみたいなミイラが、あたいのような若くて生き生きした美女の足元に及ぶと思ってんの? ふざけるなよ、この気違いミイラ!」
「······まあ、落ち着けお主たち。それよりも、なあ夢幻?」
「なんじゃ!!······んっ?······お、おのれ、天狼星! ワシを嵌めおったな!! 」
夢幻仙様は妲己ちゃんが手にする瓢箪の中へ吸い込まれていった······
風の壁が消し飛ぶ時に上げた、断末魔の衝撃波が街村宅とその周囲を激しく揺らした。それは、窓ガラスが所々でヒビ割れるほどだった。
「······さあ、南斗六星、邪魔は消えた。宿敵の元へ急ぐぞ」
破魔矢は首輪の仙宝に戻っていった。それと同時に、我輩を包んでいた7色の霊気も、吸い込まれるように仙宝の中へ消えた。
唸りをあげていた風の壁が消えたことで、辺りには夜の静寂が訪れた。まるで、何事もなかったかのように再びコオロギが鳴き出した。秋の夜風も葉を擦らせて、自然の音楽に彩りを添える。
我輩は興奮の余韻を引きずりながら、家の中へ入ろうと玄関に向かった。普段ならドアが閉まっていて、我輩の力では入ることが出来ないが、風の壁が放った断末魔の衝撃波によってドアが少し開いていた。
我輩はその隙間に前肢を挿し込んで、更に隙間を広げると、今度は頭も隙間にねじ込んで通り抜けできる程度の広さを確保した。
そこから玄関に入ると、2階の方からしきりに怒鳴る妲己ちゃんの声が聞こえてきた。時折、その合間に夢幻仙様の狼狽した声が混ざる。
なにやら言い合いをしているみたいだった。妲己ちゃんは大丈夫だろうか? 鳥肌がたつほど毛嫌いしている夢幻仙様に、弄ばれていないだろうか? そして、何よりも主の京香はどうなっているのか? 我輩は階段を駆け上がった。
「お~い、妲己ちゃん~!、大丈夫か~!」
我輩は妲己ちゃんらが言い合っていた部屋へ飛び込んだ。胸の前を少しはだけた妲己ちゃんが、瓢箪を持って夢幻仙様を睨んでいた。霊体の夢幻仙様は覚束なく宙を漂っている。
「妲己ちゃん!、よかった、無事だったか」
「あたいは大丈夫だよ。それよりもエロ、あんた、良くやったわね。すごかったわよ、このジジイなんて、肝っ玉冷やして腰抜かしてたんだから、フフフ」
妲己ちゃんの言葉に、夢幻仙様は激しく反応した。まるで、眼が飛び出んばかりの物凄い形相で、我輩の方を凝らしている。
「な、何じゃって、エロじゃと! 風の壁をエロが消したじゃと! あり得ん、そんなこと、絶対にあり得ん!」
「それが有るんだよ、馬~~鹿! 自分の使い犬を見損なうなんて、あんたも随分と間抜けだよね。飼い犬に手を噛まれるって、この事かしら? あんた、いったいエロの何を見てたの、このアホ仙人?」
「あ、あり得ん······エロがワシの術を破るなんて、し、信じられん······」
「······夢幻、久しいな。太上老君から力を授かり、何をしているのかと思いきや、こんなことか······憐れな愚か者め」
首輪の仙宝が7色に輝き出す。灼熱に滾る7色の霊気が我輩を包み込む。7色の霊気を見たときの、夢幻仙様の驚きようったらなかった。飛び出るのでは、と思うほど眼を見開き、顎が外れるのでは、と思うほど口を開けっ広げた。
「······なんて顔をしているのだ、夢幻。お主によって封印された我が仙宝は、娘娘たちによって解放された」
「······ク、クソッ! 天狼星の破魔矢か······娘娘の小娘どもめ! こ、これでは、ワシに勝ち目などないわい」
夢幻仙様は娘娘様たちを淫猥な言葉で呪ったり、京香と直くんを凌辱的な言葉で罵ったり、かと思えば、まるで挑発しているのかと思うような、友愛的なフレーズで妲己ちゃんを怒らせ、はたまた、我輩を抱き込もうとして、脅しと甘言をろうしては、効果がなく上滑ると言った有り様で、夢幻仙様は完全に度を失っていた。
「······落ち着け、夢幻。何もお主を取って喰うわけではない」
「あたいもあんたなんか食いたくないけど、切り刻んで犬のエサになら、してやってもいいかも」
「わ、我輩はいりません······」
「な、何をごちゃごちゃ言っとるんじゃ!ワシは腐っても仙人じゃ! そんな簡単にはくたばらんぞ!」
「む、夢幻仙様、落ち着いて下さい······」
「うるさい、エロ! この恩知らずのドブ犬め!」
「あ~~あ、切れちまってるよ、醜いジジイだね~。どおりでもてないわけだわ」
「う、うるさい、うるさい! この男を知らない女狐が。今に見ておれ、ワシの虜にして、ワシ無しでは生きていけないようにしてやる!」
「······な、なんですって! あんたみたいなミイラが、あたいのような若くて生き生きした美女の足元に及ぶと思ってんの? ふざけるなよ、この気違いミイラ!」
「······まあ、落ち着けお主たち。それよりも、なあ夢幻?」
「なんじゃ!!······んっ?······お、おのれ、天狼星! ワシを嵌めおったな!! 」
夢幻仙様は妲己ちゃんが手にする瓢箪の中へ吸い込まれていった······
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる