2 / 49
第一章:追放編
001:天職
しおりを挟む
俺達が住むこの世界には、〝天職〟と呼ばれる異能の力がある。
生まれ持つ者もいれば歳を経て発現する者もいるし、死ぬまで何も現れない者もいる。
そして発現する異能の種類は様々で、強力なものや特殊なもの、ありふれたものから大した事のないものまで、本人の運次第で望む望まないに関わらず与えられるのだ。
それらがいつ頃から発現するようになったのかは不明なままだが……1000年くらい前にはもう持っている者がいたらしいな。
昔は少なかったそうだが、今じゃ10人のうち9人には生きてりゃ勝手に現れるらしい。
例えば、農耕技術に補填がかかる〈農夫〉、狩猟能力が人より高くなる〈狩人〉、医術に関する能力が身につけ易くなる〈医師〉、料理の質が一段階上がるようになる〈料理人〉……などと言った具合だ。
さらに言えば、これらの〝天職〟には言ってはあれだが上位互換というものが存在する。
並の〈剣士〉よりも強くなる〈剣豪〉、一つの味を極めるのが主な〈料理人〉の上に座す〈匠〉や〈鉄人〉、他の〈医師〉を纏める〈名医〉ーーーといった具合に、明確な能力差が現れるのだ。
無論、これらの称号は努力もなしに与えられるものではない。
己の才能を自覚し、極限まで切磋琢磨する事でようやく〝天職〟は己の物になる。逆に才能を磨かない限り、〝天職〟は芽吹く事なくただ分不相応な名前が残るだけなのだ。
〈農夫〉や〈狩人〉も極めれば優れた才を身につけられ、一生を平凡に過ごすのならば十分な能力を手にできる。
人々は多少の夢を見つつも、それは自分以外の凄い人間に与えられるもので、自分には何も関係がない……そう自分を納得させて日々を生きている。
だが、稀に凄まじく強力で、他に二つと無い〝天職〟を手に入れる人間もいる。
それこそ世界中の人間の憧れの的である〈勇者〉や〈賢者〉、〈聖女〉や〈剣聖〉といった、英雄の名称を被った〝天職〟の持ち主質達である。
その手の〝天職〟持ちは運命的に波瀾万丈な人生を決定づけられるらしく、良くも悪くも歴史に名を刻まれる事になる。
俺が昔聞いたのは、その昔に悪逆非道の限りを尽くした国を単独で滅ぼした〈勇者〉とか、逆に人間に裏切られ続けて心を病んで世界を滅ぼそうとした〈賢者〉とか、はたまた神に遣える身でありながら淫蕩に耽り大勢の美男を侍らせた〈聖女〉とか。
英雄的な才能を持ったとしても、善人になるとは限らない。本人の性格次第で名前顔負けの人物になる事もある。
本人も望んだわけではないのだが、どう生きたとしても普通じゃない人生を送る事が約束されているんだとか……良いんだか悪いんだか全くわからん類の、天からの贈り物なわけだ。
それをある宗教の人間は『神の恩恵』だの『選ばれし者の導』と呼ぶ事もある……そして大抵、優れた〝天職〟を持つ者を囲って自分達の勢力に取り込んでいる。
自分達の手駒とする為に、旗印として利用する為に、理由は様々だ。
手元に置けば後は簡単だ。酒池肉林の極楽を用意してやりゃ、大抵の人間は忠実な犬に早変わりだ。
反対に大した事のない、または印象の良くない〝天職〟を持つ者には尋常じゃないくらい迫害をする。〝異能〟とか呼んで、『神に嫌われし悪人』とか『前世で悪徳を積んだ愚か者』無茶苦茶言い掛かりをつけてくるんんだわ。
そんでさらに、その宗教の教会の人間が抱いた悪印象はそのまま信者にも広がり、根も葉もない噂で踊らされた馬鹿によって、不遇な〝天職〟持ちは追いやられていくのだ。
大抵暴言だの嫌がらせだので済むが、中には過激な者もいて命を狙って来る場合もある……普通に犯罪者として捕まるけどな。
救いなのは国教じゃない宗派である事かねぇ。
宗教つっても創世神とか大それたものじゃなく、価値の高い〝天職〟を持った生きた人間を教祖に据えた、根本的に金儲けが目的の似非宗教だし。
国としても結構迷惑に思ってる奴が多いらしい。が、実質的な被害は受けてないし規模も結構でかいしで、現状は放置する形になってるんだとか。お上には同情するよ、本当に。
馬鹿が騒ぐだけで、さしたる問題は起こらない。国もまだ大事なっていないから手を出さず、みんなあんまり気にせずに日々を過ごしている。
……だがしかし、その一部の困った奴らの勘違いの所為で、一市民である俺は非常に困らされているのだ―――
生まれ持つ者もいれば歳を経て発現する者もいるし、死ぬまで何も現れない者もいる。
そして発現する異能の種類は様々で、強力なものや特殊なもの、ありふれたものから大した事のないものまで、本人の運次第で望む望まないに関わらず与えられるのだ。
それらがいつ頃から発現するようになったのかは不明なままだが……1000年くらい前にはもう持っている者がいたらしいな。
昔は少なかったそうだが、今じゃ10人のうち9人には生きてりゃ勝手に現れるらしい。
例えば、農耕技術に補填がかかる〈農夫〉、狩猟能力が人より高くなる〈狩人〉、医術に関する能力が身につけ易くなる〈医師〉、料理の質が一段階上がるようになる〈料理人〉……などと言った具合だ。
さらに言えば、これらの〝天職〟には言ってはあれだが上位互換というものが存在する。
並の〈剣士〉よりも強くなる〈剣豪〉、一つの味を極めるのが主な〈料理人〉の上に座す〈匠〉や〈鉄人〉、他の〈医師〉を纏める〈名医〉ーーーといった具合に、明確な能力差が現れるのだ。
無論、これらの称号は努力もなしに与えられるものではない。
己の才能を自覚し、極限まで切磋琢磨する事でようやく〝天職〟は己の物になる。逆に才能を磨かない限り、〝天職〟は芽吹く事なくただ分不相応な名前が残るだけなのだ。
〈農夫〉や〈狩人〉も極めれば優れた才を身につけられ、一生を平凡に過ごすのならば十分な能力を手にできる。
人々は多少の夢を見つつも、それは自分以外の凄い人間に与えられるもので、自分には何も関係がない……そう自分を納得させて日々を生きている。
だが、稀に凄まじく強力で、他に二つと無い〝天職〟を手に入れる人間もいる。
それこそ世界中の人間の憧れの的である〈勇者〉や〈賢者〉、〈聖女〉や〈剣聖〉といった、英雄の名称を被った〝天職〟の持ち主質達である。
その手の〝天職〟持ちは運命的に波瀾万丈な人生を決定づけられるらしく、良くも悪くも歴史に名を刻まれる事になる。
俺が昔聞いたのは、その昔に悪逆非道の限りを尽くした国を単独で滅ぼした〈勇者〉とか、逆に人間に裏切られ続けて心を病んで世界を滅ぼそうとした〈賢者〉とか、はたまた神に遣える身でありながら淫蕩に耽り大勢の美男を侍らせた〈聖女〉とか。
英雄的な才能を持ったとしても、善人になるとは限らない。本人の性格次第で名前顔負けの人物になる事もある。
本人も望んだわけではないのだが、どう生きたとしても普通じゃない人生を送る事が約束されているんだとか……良いんだか悪いんだか全くわからん類の、天からの贈り物なわけだ。
それをある宗教の人間は『神の恩恵』だの『選ばれし者の導』と呼ぶ事もある……そして大抵、優れた〝天職〟を持つ者を囲って自分達の勢力に取り込んでいる。
自分達の手駒とする為に、旗印として利用する為に、理由は様々だ。
手元に置けば後は簡単だ。酒池肉林の極楽を用意してやりゃ、大抵の人間は忠実な犬に早変わりだ。
反対に大した事のない、または印象の良くない〝天職〟を持つ者には尋常じゃないくらい迫害をする。〝異能〟とか呼んで、『神に嫌われし悪人』とか『前世で悪徳を積んだ愚か者』無茶苦茶言い掛かりをつけてくるんんだわ。
そんでさらに、その宗教の教会の人間が抱いた悪印象はそのまま信者にも広がり、根も葉もない噂で踊らされた馬鹿によって、不遇な〝天職〟持ちは追いやられていくのだ。
大抵暴言だの嫌がらせだので済むが、中には過激な者もいて命を狙って来る場合もある……普通に犯罪者として捕まるけどな。
救いなのは国教じゃない宗派である事かねぇ。
宗教つっても創世神とか大それたものじゃなく、価値の高い〝天職〟を持った生きた人間を教祖に据えた、根本的に金儲けが目的の似非宗教だし。
国としても結構迷惑に思ってる奴が多いらしい。が、実質的な被害は受けてないし規模も結構でかいしで、現状は放置する形になってるんだとか。お上には同情するよ、本当に。
馬鹿が騒ぐだけで、さしたる問題は起こらない。国もまだ大事なっていないから手を出さず、みんなあんまり気にせずに日々を過ごしている。
……だがしかし、その一部の困った奴らの勘違いの所為で、一市民である俺は非常に困らされているのだ―――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる