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第二章:出会編
013:策謀(某権力者視点)
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「……これは、事実か」
手に持った書類を見下ろし、感情を押し殺した低い声で尋ねる。
広く、豪奢な空間。大理石で造られた見上げるほど高い円形の部屋は、いくつもの芸術品で飾られている。
部屋の奥には巨大な国旗が、その下には玉座が置かれ、灰色の髭をたくわえた初老の男が腰を下ろし、項垂れていた。
「は、当組合の職員が実際にしでかした失態でございます」
彼の前に跪くのは、鍛え上げられた肉体を見せつける禿頭の男ーーー冒険者組合組合長ガゼフ。
深々と頭を垂れた彼は、うつむいたまま何も喋らない初老の男……国王の前で内心戦々恐々としながら次の反応を待つ。
渡した報告書が、王の手でぐしゃぐしゃに潰されていく様を覗き見て、ぶるりと背筋を震わせていた。
「何故、そのような事態になった」
「本来担当するはずの受付嬢が不在で、別に任せていた者も急な腹痛を起こしたとかで、その穴を埋めていた者が……大変申し訳ありません」
「馬鹿者めが!!!」
ばさっ!とガゼフの顔に報告書が叩きつけられ、床に飛び散る。
玉座から立ち上がり、苛立ちをぶつける代わりに書類の束を投げつけた王は、肩で息をしながらガゼフを睨みつけ、声を荒げる。
「あの男の扱いに関しては何よりも慎重になれと言ったはずだ!! 何故そんな馬鹿に任せた!?」
「返す言葉もございません! ですが当組合は常に人手不足で、他の職員も手を離せない重要な案件を取り扱っており……!」
「それをどうにかするのがお前の役目だろうが!! 何を腑抜けた事を言っている!! 馬鹿者め!!」
だんだんと子供がするような地団駄を踏み、ガゼフの不甲斐なさを詰る。
言い訳をすればするほど王の機嫌を損ねると悟り、ガゼフはぶつけられる罵倒の言葉に歯を食いしばりつつ、嵐が過ぎる時をじっと待った。
やがて、王は吠え続ける事に疲れた様子でどっかりと玉座に座り込み、天井を仰いで顔を手で覆った。
「あの男の存在に気づいて数十年…! 多くの犠牲を払いながらなんとか囲い込めた! それをあの糞餓鬼が台無しにしたのはもうどうでもいい……だが国の組織である組合が追い出した事だけは許されん!!」
どんっ、と玉座の肘掛を殴りつけ、唸り声を漏らす王。
行われてしまった愚行をなかった事にはできず、今後の行いで挽回するしかない。だがどうすれば汚名を返上できるのか、相手が相手だけに何も思いつかない
悩み、嘆く王に、ガゼフは深くため息をこぼしながら口を開いた。
「我々は……あの男の扱いを間違えたのやもしれません。あの男の〝天職〟の詳細をを明らかにしなかった事がそもそも……」
「…! そうかもしれん……だが、そうしなければならなかった! 奴を我が国で独占するためには!!」
王は立ち上がると、玉座から離れて窓辺へと向かう。
見える城下の街並み。建国から数百年で数万人にもなった大国の風景を眺め、王は顔を険しくさせる。
ーーーたった一人の馬鹿が犯した失敗一つで、これら全てが無に帰す未来もありえるのだ。
「なんとしても、最低でも、この国からあの男が出ぬようにせねばならん……行方はわかったのか?」
「既に。奴隷商人のギルバートの元にいるようです」
「以前の労働先の一つか……居場所がわかっただけでもいい。ましな状況だ」
はぁ、と安堵の息を吐き、王は肩を落とす。
しかしすぐに振り向き、ぎろりと鋭い目をガゼフに向けて声を張り上げた。
「何を対価にしてもいい! あの男をこの国に留めさせろ! 何としてもだ!!」
「御意に……!」
ばたん、と閉じられた大扉を背に、ガゼフは大きく息を吸い込み、肩を落としながら息を吐く。
終わった王への報告、というよりも王の愚痴を気が済むまで聞かされる時間が終わり、ようやく肩の力を抜く事ができた。
だがその事に安堵するよりも、これから対面する問題に対する悩みの方が大きく心を占めていた。
「あいつ、何を差し出したら頷いてくれるんだ…? ……はぁ、とてつもなく憂鬱だ、なんで俺がいる時代にこんな事が起こっちまうのかねぇ」
がしがしと頭をかきながら、ガゼフは前へと進み出す。
心が重く、足が鈍くなるのを強く感じつつ、問題を起こした組織の長としての責任を果たすべく、厄介な需要人物の元へと向かうのだった。
「あんな不死身の化け物に接待するとか……死にに行くようなもんじゃねぇか」
手に持った書類を見下ろし、感情を押し殺した低い声で尋ねる。
広く、豪奢な空間。大理石で造られた見上げるほど高い円形の部屋は、いくつもの芸術品で飾られている。
部屋の奥には巨大な国旗が、その下には玉座が置かれ、灰色の髭をたくわえた初老の男が腰を下ろし、項垂れていた。
「は、当組合の職員が実際にしでかした失態でございます」
彼の前に跪くのは、鍛え上げられた肉体を見せつける禿頭の男ーーー冒険者組合組合長ガゼフ。
深々と頭を垂れた彼は、うつむいたまま何も喋らない初老の男……国王の前で内心戦々恐々としながら次の反応を待つ。
渡した報告書が、王の手でぐしゃぐしゃに潰されていく様を覗き見て、ぶるりと背筋を震わせていた。
「何故、そのような事態になった」
「本来担当するはずの受付嬢が不在で、別に任せていた者も急な腹痛を起こしたとかで、その穴を埋めていた者が……大変申し訳ありません」
「馬鹿者めが!!!」
ばさっ!とガゼフの顔に報告書が叩きつけられ、床に飛び散る。
玉座から立ち上がり、苛立ちをぶつける代わりに書類の束を投げつけた王は、肩で息をしながらガゼフを睨みつけ、声を荒げる。
「あの男の扱いに関しては何よりも慎重になれと言ったはずだ!! 何故そんな馬鹿に任せた!?」
「返す言葉もございません! ですが当組合は常に人手不足で、他の職員も手を離せない重要な案件を取り扱っており……!」
「それをどうにかするのがお前の役目だろうが!! 何を腑抜けた事を言っている!! 馬鹿者め!!」
だんだんと子供がするような地団駄を踏み、ガゼフの不甲斐なさを詰る。
言い訳をすればするほど王の機嫌を損ねると悟り、ガゼフはぶつけられる罵倒の言葉に歯を食いしばりつつ、嵐が過ぎる時をじっと待った。
やがて、王は吠え続ける事に疲れた様子でどっかりと玉座に座り込み、天井を仰いで顔を手で覆った。
「あの男の存在に気づいて数十年…! 多くの犠牲を払いながらなんとか囲い込めた! それをあの糞餓鬼が台無しにしたのはもうどうでもいい……だが国の組織である組合が追い出した事だけは許されん!!」
どんっ、と玉座の肘掛を殴りつけ、唸り声を漏らす王。
行われてしまった愚行をなかった事にはできず、今後の行いで挽回するしかない。だがどうすれば汚名を返上できるのか、相手が相手だけに何も思いつかない
悩み、嘆く王に、ガゼフは深くため息をこぼしながら口を開いた。
「我々は……あの男の扱いを間違えたのやもしれません。あの男の〝天職〟の詳細をを明らかにしなかった事がそもそも……」
「…! そうかもしれん……だが、そうしなければならなかった! 奴を我が国で独占するためには!!」
王は立ち上がると、玉座から離れて窓辺へと向かう。
見える城下の街並み。建国から数百年で数万人にもなった大国の風景を眺め、王は顔を険しくさせる。
ーーーたった一人の馬鹿が犯した失敗一つで、これら全てが無に帰す未来もありえるのだ。
「なんとしても、最低でも、この国からあの男が出ぬようにせねばならん……行方はわかったのか?」
「既に。奴隷商人のギルバートの元にいるようです」
「以前の労働先の一つか……居場所がわかっただけでもいい。ましな状況だ」
はぁ、と安堵の息を吐き、王は肩を落とす。
しかしすぐに振り向き、ぎろりと鋭い目をガゼフに向けて声を張り上げた。
「何を対価にしてもいい! あの男をこの国に留めさせろ! 何としてもだ!!」
「御意に……!」
ばたん、と閉じられた大扉を背に、ガゼフは大きく息を吸い込み、肩を落としながら息を吐く。
終わった王への報告、というよりも王の愚痴を気が済むまで聞かされる時間が終わり、ようやく肩の力を抜く事ができた。
だがその事に安堵するよりも、これから対面する問題に対する悩みの方が大きく心を占めていた。
「あいつ、何を差し出したら頷いてくれるんだ…? ……はぁ、とてつもなく憂鬱だ、なんで俺がいる時代にこんな事が起こっちまうのかねぇ」
がしがしと頭をかきながら、ガゼフは前へと進み出す。
心が重く、足が鈍くなるのを強く感じつつ、問題を起こした組織の長としての責任を果たすべく、厄介な需要人物の元へと向かうのだった。
「あんな不死身の化け物に接待するとか……死にに行くようなもんじゃねぇか」
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