呪法師のススメ 〜呪に偏見を抱くのは勝手だが、俺をそこらの素人と一緒にされては困る〜

春風駘蕩

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第二章:出会編

014:賞賛

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「ふわぁ……すごい、元通りです」


 自分の胸元をぺたぺたと触り、乳でか……元乳でか女が感嘆の声を漏らしている。

 さっきまであった尋常じゃないでかさの乳は跡形もなくなり、それなり大きさになっている。
 身長も聞いていた年齢に相応しい程度のものになり、全体的に身体の均衡を整えておいたからな。大き過ぎず小さ過ぎず、適度な量ってところだ。


「わぁ、お姉ちゃん、おっぱいちっちゃくなったねぇ」
「……さっきまでがでか過ぎたのよ。あんたなんて全部ちっちゃくなってるし……まぁ、その方が違和感がないけど」


 中身が幼女だった女も、全体的に弄って縮めておいた。
 精神の方を弄る事もできたが、それをするには時間も手間もかかるし、面倒臭いからやめておいた。

 獣人もどきの餓鬼は、煩いのはそのまんまだが顔はあからさまにほっとしている。
 さっきまで泣いていたから目が赤いが、あれは放っておいてもいいだろう。俺が手を出すまでもない。


 ま、こんだけやれば文句はないだろう。
 こいつらの元の姿を知らねぇし、調べるのも面倒だから適当な調整だがな。


「お見事です。さすがラグナ様……〈呪法師〉は伊達ではございませんね」
「何回も見てんだろ。今更褒められたって嬉しくねぇよ」


 この職場、五十回くらい来てるし。
 お前が若造の頃から……ってか、お前の先々代の頃から世話してやってんだろうが。

 何なら、お前が赤ん坊でぎゃんぎゃん泣いてた時代の覚えてんだぞ、俺は。


「こちとら年齢だけなら爺だからな。褒められて喜んで、乗せられる年はとっくに過ぎてんだよ……舐めんじゃねぇ」
「これは失礼を。素晴らしい事には変わりありませんので」


 心にもない事を……お前の賞賛は次の商売を潤煥にする為の布石だろうに、わざわざ大袈裟に語りやがって。

 もう嬉しさなんて微塵も感じねぇんだよ。
 そういう純粋な気持ちは餓鬼の頃にとっくに失せちまってんだよ、くそったれめ。

 俺ぁ賞賛されるより、金が欲しいんだよ。


 ……とか思ってたら、ギルバートの奴急に顔をしかめて肩を竦め出した。何だ、唐突に?


「まったく、こんなにも優秀な方を追い出すとは、《暁の旅団》の皆様は目が節穴だったようですね」
「そのおかげで俺は自由になったんだ。そこだけは感謝してるよ」


 色々面倒臭い班だったからな……人間関係が特に。

 レッカは脳筋気味だし、ナナハは若干思考が危ないし、リリィは毒吐くし。
 実力は三人ともそれなりにあるんだが、全員単独行動スタンドプレーに走りがちで、死ぬほど連携が取りづらかった。

 一番厄介なのはアレスだったな。
 口は偉そうなのに雑魚だし、連携は無視するし、命令ばっかして後ろに逃げがちだし……阿呆だから自分の技量を超えた依頼を受けたがってばっかりだったし。


 昔のアレスはもう少しましだったんだがなぁ。
 俺を誘おうと土下座までしてた頃が懐かしい……なんでああなったんだか。


「我々としても嬉しい事には変わりありませんが、それでもラグナ様が不当な評価を得ている事に対しては、憤らずに入られませんな」
「そういうのはいらねぇ。を破棄した時点で俺の気は済んでる」
「……左様でございますか」


 レッカ達はともかく、アレスは俺に頼りまくりだったしな。
 俺が毎日どんだけ呪ってやってたかも知らずに、やれ役立たずやら不気味やら、人の気も知らずに好き勝手言いやがって。
 どうでもいいけど、俺に迷惑のかかる自滅はやめてもらいたいな。

 ……組合の方はちと気になるが。
 馬鹿一人の愚行に巻き込まれた点は同情するし、あとで様子見でもしてくるかねぇ。


「これで用事は終わりか? だったら俺は帰るけど……」
「いえいえ、これからが本番です」


 俺が帰ろうとすると、ギルバートは人の良さそうな笑みを浮かべて呼び止めてくる。

 ……こいつがこういう笑い方をする時は、人を使って儲ける事を考えてる時なんだよな。
 俺の〝力〟を使う事はもちろん、俺の存在自体を利用する事もあったし。


「……まぁ、聞くだけ聞こうか」


 内心ちょっと身構えながら、俺はギルバートに向き直る。
 こいつの事だ。俺の不利益になるような事は言うまい……多少の面倒事でも、あとできちんと恩を返してくる奴だしな。


 ……そう、思っていたんだがなぁ。



「簡単な話です。ーーーこの者達を買いませんか?」
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